スポーツ用義足の肖像

STILL LIFE

アートディレクション=上西祐理 写真=瀧本幹也

挑戦を続けるメーカーと
進化するデザイン
漆黒の輝きを放つ炭素繊維強化プラスチック(CFPR)のテクスチャーと、最先端のスポーツ科学研究によって導き出された板バネの曲線。進化を続けるスポーツ用義足の意匠は、パラアスリートたちの持つ身体能力を最大限に引き出す。より速く、より遠くへ。明日の「世界新」を生み出すスポーツ用義足の、しなやかさと美しさに光を当てる。
スポーツ用義足は複数のパーツから成る。欠損した断端部分に装着する「ソケット」と、人工膝とも呼ばれる「膝継手」、そして最も特徴的な形状をした「板バネ」の3点だ。それらはコネクタや吸着バルブ、スポーツアダプタなどの細かな部品によって精密に組み合わされて、アスリートを支える強靭な「脚」となる。
IMASEN×MIZUNO
Model_KATANA-β

岐阜県に本社を置く福祉機器メーカーの〈今仙技術研究所〉と、スポーツ用品メーカーの〈ミズノ〉が共同開発した「KATANA-β(カタナベータ)」は、ビギナーからトップ選手までに対応した短距離走用の板バネ。〈今仙〉の高い義肢装具設計技術と〈ミズノ〉の最先端スポーツ科学を融合させた、「世界で戦う」アスリートのためのスポーツ用義足だ。
Ottobock
Model_1E90 Sprinter

1919年にドイツで創業した〈オットーボック・ヘルスケア〉は、30年以上にわたってパラリンピックの公式パートナーを務めてきたメーカーとして世界的にも有名だ。代表モデルの「1E90スプリンター」は優れた耐久性と軽量性を併せ持ち、世界大会でも多くのトップアスリートが着用していることからも、その性能に対する信頼の高さがうかがえる。
Xiborg
Model_Xiborg Genesis

マサチューセッツ工科大学にてバイオメカニクス・ロボット義足の研究開発などに従事した遠藤謙が代表を務める、日本のベンチャー企業〈サイボーグ〉。同社が2016年3月に発表したフラッグシップモデル「Xiborg Genesis」は、先のリオパラリンピックで佐藤圭太選手(陸上男子短距離)が着用したことでも話題を呼んだ。競技用義足だけでなく、ロボット義足、発展途上国用義足の研究開発も行う。
Össur
Model_Cheetah Xtend

スポーツ用義足で世界トップシェアを誇るのは、アイスランドの首都・レイキャビックに本社を構えるメーカー〈オズール〉。中でも1996年の開発開始以来、世界中のトップアスリートたちに支持されてきた「チーター」シリーズは、義足アスリートとして初めてオリンピックに出場したオスカー・ピストリウス(南アフリカ)が着用したことでも有名となった。