[第17回日本ボッチャ選手権大会本大会]ワールドクラスの選手たちがハイレベルな試合を展開! BC2はライバル対決を杉村が制す

[第17回日本ボッチャ選手権大会本大会]ワールドクラスの選手たちがハイレベルな試合を展開! BC2はライバル対決を杉村が制す
2016.01.05.TUE 公開

12月26日、27日の2日間に渡って開催された第17回日本ボッチャ選手権大会本大会。4つの国際クラス(*)とオープンクラス(立位・座位)に分かれて行い、それぞれの日本一を決する。本大会は、7月に行われた予選会を勝ち抜いた選手とシード選手のみ参加でき、4人ずつに分けられた4つの予選リーグ(BC1・BC4クラスは2つの予選リーグ)の上位選手が、最終日に行われる決勝トーナメントに進出する。リオパラリンピック出場を目指すトップ選手も出場し、白熱した試合が展開された。

*障がい程度により、車いすの固定やボールを渡してもらうなどの介助を要するBC1、上肢での車いす操作が可能なBC2、アシスタントによるサポートで勾配具を使用して投球するBC3、頸髄損傷など比較的障がいの軽いBC4に分けられる。

ライバル対決の行方は?

そんな中で、最も注目を集めたのが、日本代表の二人がいるBC 2クラスである。

落ち着いた試合運びで決勝を戦う杉村
落ち着いた試合運びで決勝を戦う杉村

前回優勝したのは、過去2度パラリンピックに出場している廣瀬隆喜。2015年ボッチャ・ワールドオープンの個人戦で準優勝した日本のエースだ。だが、その前年は、ロンドンパラリンピック日本代表で、現在ナショナルチームのキャプテンを務める杉村英孝が制している。近年どちらかが優勝するという2強時代が続いており、二人の対戦となった今回も決勝に注目が集まった。

ともにこの大会に懸ける思いは強い。「前回、杉村君から優勝を奪還したので、今年は連覇するつもりで練習に取り組んできた」と廣瀬が言えば、「3連覇がかかった前回大会で廣瀬君に敗れた。負けてからリベンジを目標に準備をしてきた」と杉村は話した。

リードを守った杉村が王座返り咲き

杉村は、決して調子がいいとは言えない状態で大会を迎えたという。「決勝で廣瀬君と当たるまでには調子を上げたい」。予選リーグを終えると、コーチの指示を仰ぎ、一投目の精度などを修正した。迎えた決勝トーナメントでは、インチョン2014アジアパラ競技大会日本代表の梅村祐紀にリードを許しながらも勝利を収めて決勝に進出。決勝には、ここまで着用してきた縦縞のシャツから、「気分を変えて」ピンクのシャツに着替えて臨んだ。

一方の廣瀬も、苦しみながら決勝まで勝ち上がった。準々決勝で急成長中の近藤智宏に、大量得点を許してピンチを迎えた。だが、持ち前のパワーボールで取り返すと、タイブレークを制して逆転勝利。試合後、「粘り強く戦えた。これからにつながる勝ち方ができた」と語り、ほっとした表情を見せていた。

 杉村(写真右)が激戦を制した
杉村(写真右)が激戦を制した

そして、決勝戦。先行の杉村がミスのない正確なショットでジャックボールに寄せれば、第2エンドは廣瀬が相手の苦手なロングボールで返し、第3エンドは杉村が取り返す。両者の咆哮が響く、激しい展開になった。だが「うまく気持ちを切り替えることができ、すごく集中できていた」と話す杉村が、第4エンドで廣瀬のジャックボール手前にピタリと寄せる、技ありのショット。対する廣瀬もジャックボールや周りのボールを押し出そうと、パワーボールで攻めたが決めきれない。杉村の一球が得点となり、リードを冷静に守った杉村が3対1で勝利を収めた。

「前回負けた悔しさを晴らせて嬉しいです。決勝の相手が、他の選手ではなく廣瀬君だから、優勝の嬉しさは何倍にもなります。やっぱり日本で一番うまい選手ですから。廣瀬君は相手の嫌なところをついて勝負を仕掛けてくる。今回のように僕の苦手なロングボールで勝負する展開がここ何大会か続いていたので、手前に相手のボールを置いて投球する想定練習を重ねてきました。第4エンドで(ジャックボールに)うまく寄せられたのが勝利につながったと思います」

リオパラリンピックを目指すボッチャ日本チームのキャプテンは、そう言って満面の笑みを見せた。

2020年東京以降を見据える選手も

BC4クラスは24歳の藤井金太朗が連覇達成。予選では不調だったものの、準決勝では冷静に試合を組み立て、接戦をものにした。「疲れが出ると(投球時に)腕が曲がってしまうが、決勝トーナメントでは意識して修正できた」と振り返った。

今大会は若い選手や競技を始めたばかりの選手の姿も目立った。初出場の北澤和寿(BC3)は、「負けはしたが、攻めの投球ができ、接戦を演じられた」と手応えを語る。また、BC3クラスで優勝した高橋和樹は、東京パラリンピックの開催決定を受けてこの競技を始めたと言い、「これから勝ち続けていきたい」と力強くコメントした。

オープンクラス(座位)に出場した安井達哉は、21歳のホープ。連覇は逃したものの、「ボールを寄せる技術を安定させ、(ジャックボールに直接当てる)ロビングボールを磨きたい」と話すなど課題が見つかり、収穫を得たようだ。今後、国際大会でBC5クラスが新設される予定で、世界選手権を見据えてさらなるレベルアップに努める。

12コートで同時に試合が行われた本大会。パラリンピック独自のマイナー競技ながら、じわりじわりとメディアや観客を増やしている。日本選手権では初めて電光掲示を含むスコアボードが全てのコートに設置されるなど、運営側も観客を意識し始めた。

東京パラリンピックまであと4年。白熱した勝負が魅力のボッチャは、どれほど広がるか。

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BC2クラスで優勝した杉村、2位の廣瀬(写真右)、3位の梅村(写真左)
BC2クラスで優勝した杉村、2位の廣瀬(写真右)、3位の梅村(写真左)
12コートで試合が行われた
12コートで試合が行われた

text by Asuka Senaga
photo by AFLO SPORT,X-1

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