[第36回ジャパンオープンパラ卓球選手権大会] リオパラリンピック出場権を獲得した立位の新星・岩渕らが日本一

[第36回ジャパンオープンパラ卓球選手権大会] リオパラリンピック出場権を獲得した立位の新星・岩渕らが日本一
2016.03.09.WED 公開

「第36回ジャパンオープンパラ卓球選手権大会」が3月5日から2日間の日程で、大阪市舞洲障がい者スポーツセンターで開催された。この大会では障がいのクラスを分けずに、立位の部、車椅子の部、団体戦で頂点を争う。個人戦は、それぞれG1(上位グループ)・G2(下位グループ)の2つの階級に分けて試合が行われた。

“レジェンド”岡が吉田を破り、王座奪還!

冷静なプレーで決勝を制した岡
冷静なプレーで決勝を制した岡

「本当にうれしいです」

通算27度目の優勝を果たした“レジェンド”は、そう語ると穏やかな笑顔を見せた。

激戦の車椅子男子の部G1を制したのは、一昨年の覇者で、過去には25連覇の偉業を成し遂げている岡紀彦(岡山)。昨年は準々決勝で敗れ、頂点に君臨し続けることの難しさを感じさせたが、今大会は冷静な試合運びで決勝まで駒を進めた。その決勝では、リオパラリンピック代表に内定している吉田信一(東京)をフルゲームで破って勝利。王者に返り咲き、喜びをかみしめた。

一方の吉田は、第5ゲームのチェンジエンド後の巻き返しを狙ったが、逆に連続失点を許した。「焦りからミスが出た」と反省を口にし、悔しさをにじませた。大会のビデオを見て修正し、リオに向けて得意のバックハンドの精度を高めていくつもりだ。

女王の貫禄を見せた別所

車椅子女子の部G1では、アテネ、北京、ロンドンパラリンピック日本代表で68歳の別所キミヱ(香川)が女王の貫録を見せて5連覇を達成。「これからの伸びしろに、自分でも期待している」と笑顔で語り、リオパラリンピックでの活躍を誓う。また、車椅子男子の部G2は石川隆二(茨城)が、車椅子女子の部G2は森ふさ(京都)がそれぞれ優勝した。

リオ期待の新星・岩渕が立位男子を制す!

立位男子の部G1決勝は、岩渕幸洋(東京)が昨年優勝の永下尚也(福井)にストレート勝ち。2年ぶり4度目のチャンピオンの座をつかんだ。「サーブで崩して3球目をフォアで押せたのは収穫」と、納得の表情だ。

中学3年で初めてパラ卓球の試合に出場し、高校時代に頭角を現した岩渕。現在は早稲田大学の3年で、卓球部に所属する。障がいごとに異なる相手のプレースタイルや動きの特徴を把握するため、出場した大会で撮影した海外のライバルの映像を部員に見せ、動きを再現してもらうなどして練習を重ねてきた。技術とスピードを磨き、昨年はスペインオープンやチェコオープン(男子クラス9)などで優勝。世界ランキングを自己最高の11位まで上げて(3月1日現在は12位)、リオの出場資格を獲得した。「リオではメダル獲得を目標に頑張りたい」。仲間たちの応援を力に、表彰台へと駆け上がる。

立位女子の部G1は、竹内望(千葉)が高校生の青木佑季(北海道)を破って初優勝を果たした。“理想の選手”に同じサウスポーの石川佳純の名を挙げる竹内は、「石川選手のようにここ一本で決められる選手になりたい」と話し、4年後の東京パラリンピック出場をめざす。また、立位男子の部G2は金子和也(埼玉)が、立位女子の部G2は益田晴美(山口)が制した。

団体戦は、立位男子は九州障卓連(福岡・熊本)、立位女子は北海道(北海道・徳島)、車椅子混成はディスタンス(東京)がそれぞれ頂点に立った。

車椅子男子G1で、惜しくも準優勝だった吉田(右から2人目)
車椅子男子G1で、惜しくも準優勝だった吉田(右から2人目)

photo by Miharu Araki

立位女子G1で優勝した竹内望(左から2人目)
立位女子G1で優勝した竹内望(左から2人目)

photo by Miharu Araki

本大会に出場した選手のうち、リオパラリンピックの出場資格を獲得しているのは、男子車椅子クラス3の吉田信一、男子立位クラス9の岩渕幸洋、女子車椅子クラス5の別所キミヱの3選手。日本肢体不自由者卓球協会によると、リオの選考大会はすべて終了しているが、日本は他にワイルドカード(推薦枠)で出場資格を得る可能性があるという。

各国の強化が進み、世界の競技力が年々向上しているパラ卓球界。日本は2000年シドニーパラリンピックで藤原佐登子(女子車椅子クラス3)が銀メダル、工藤恭子(女子立位クラス7)が銅メダルを獲得したのを最後に、表彰台から遠ざかっており、リオでの飛躍が期待される。

text by Miharu Araki
photo by AFLO SPORT

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