[全国特別支援学校ボッチャ大会「ボッチャ甲子園」]パラスポーツの発展に向けた歴史的試み。各地から18チームが参戦!

[全国特別支援学校ボッチャ大会「ボッチャ甲子園」]パラスポーツの発展に向けた歴史的試み。各地から18チームが参戦!
2016.08.08.MON 公開

パラリンピック正式競技である“ボッチャ”の肢体不自由特別支援学校日本一決定戦「ボッチャ甲子園」が、8月2日、BumB東京スポーツ文化会館で開催された。熱戦を繰り広げたのは、東京、千葉、神奈川、福島、愛知、大阪、奈良、大分、熊本の特別支援学校22校、18チーム(複数校の合同チームもあり)。3人1組のチーム戦で戦われた予選リーグと決勝トーナメントは、「いい意味で、予想外だった」と河合俊次日本代表チーム総監督(日本ボッチャ協会競技局長)に言わしめたほど、競技性の高いものとなった。

筑波大学付属桐ヶ丘特別支援学校「ポローニア」が優勝

多くの特別支援学校において“ボッチャ”は、体育の授業で体験することはあっても、競技スポーツではない。それだけに戦前は、レクリエーション的な大会となることも予想されていたが──その予想はいい意味で裏切られた。

日本ボッチャ界、そして肢体不自由特別支援学校における競技スポーツにとって、歴史的な大会のファイナルステージへと進出したのは、東京都立城北特別支援学校チーム「城北コントロールパワーIII」と筑波大学付属桐ヶ丘特別支援学校チーム「ポローニア」。

眞神選手は勝利を決定づける見事な投球を決めた

試合の主導権を握ったのは、第1エンドに1点を奪取し、第2エンドも先に、目標球であるジャックボールに寄せたポローニアだったが、勝敗の行方はそう簡単には決まらなかった。城北コントロールパワーIIIの高橋アランアヴィラ(高3)の3球目がジャックボール横に寄り、形勢逆転。このまま城北が1点を奪えばタイブレーク、残りのボールを得点圏に入れれば逆転という展開に──。試合が決したのはポローニア最後の一球、眞神颯太(高2)の投球だった。力みなく投じられた一球は、ジャックの至近、まだ2球を残していた城北・久保ゆうた(高2)の投球ライン上にピタリ。自チームの得点権を奪取するとともに、相手チームの投球をブロックする見事な一投だった。

2対0で城北コントロールパワーIIIを破り、「ボッチャ甲子園」を制したのはポローニア。選手たちは話す。

「予選リーグのときから決勝トーナメントに行けるかハラハラだった。ミスもあったが、みんながフォローしてくれた。みんなで引き寄せて勝ち取った優勝です」(金子恭兵/高2)。

「予選リーグのときから一戦一戦ヒヤヒヤだった。こんなに長い時間ドキドキする経験は今までになかった。チームのみんなで勝ち取った優勝だと思う」(松本亮大/高2)。

「このようなスポーツの大会で優勝するのは初めて。うれしい。最初はドキドキだったが、緊張が解けてよくなった。自分の力を出し切れた」(大村直輝/高2)。

「率直にうれしい。決勝戦の第2エンドの終盤はタイブレークになるか、勝つか、緊迫した場面だったが、最後の一球で勝ててよかった。いい投球ができた」(眞神颯太/高2)。──4選手が自らの役割を果たし、同学年ならではの息の合ったチームワークで勝ち取った栄冠だった。

また、ポローニアに惜敗した城北コントロールパワーIIIが準優勝。3位決定戦に勝利した町田の丘SAIKYOが第3位、旋風Kid’sが4位、5・6位決定戦を制した福島県立郡山養護学校チーム「郡山オールスターズ」が5位、愛知県瀬戸市立特別支援学校(光陵校舎)が6位にそれぞれ入賞を果たした。

優勝はチーム力の高かったポローニア
真剣な表情で戦う選手たち

パラスポーツにとっても、支援学校にとっても歴史的大会

この大会が開催された8月2日、都内他所ではリオパラリンピック日本代表団の結団式も行われていた。「チームジャパン」の河合俊次総監督は、「2020年東京、そして、その先を考え、この大会に参加した」という。

日本ボッチャ協会の奥田邦晴理事長は、「支援学校の生徒たちが正式なルールに則ったボッチャをやる機会はほとんどない。だから『ボッチャなんてできない』と本人も、保護者たちも思っている。その気持ちを変えてほしかった。そして勝つ喜びを知るきっかけとしてほしかったし、自分もパラリンピックに行けるかもしれないと気づいてほしかった。目標ができれば、みんなチャレンジできるんです」と熱っぽく語った。

「こんなに環境の整った競技会に出場するのは子どもたちにとって初めての経験。パラリンピック競技の試合に出場したことに意義がある。今までパラリンピックは無縁のもので、自分たちとは関係のないものだった。でも、パラスポーツを自分でやって、パラリンピックと自分たちがつながっていることがわかってくると、パラスポーツやパラリンピックが身近なものになってくる。興味を持てるようになり、チャレンジしたくなってくる。この大会はその大きなきっかけになる」と話したのは、全国特別支援学校ボッチャ大会実行委員会の三浦浩文実行委員長。

パラスポーツの競技団体と肢体不自由特別支援学校が連携して競技会を開催したという例はほとんどない。また、都道府県管轄の肢体不自由特別支援学校において、地域の枠を越えて大会が開催されたり、全国の学校が集結したりするのも異例のことである。そういった点で、パラスポーツにとっても、支援学校にとっても「ボッチャ甲子園」は歴史的大会だった。

ほとんどの選手が正式ルール初体験だった
選手たちは自分たちで考え、協力し合って戦っていた

text&photos by BOCCIA FAN

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