2017.04.04

【パラスポーツ】パラリンピック競技初の種目最適型選手発掘プログラムで、パワーリフティングなど6人が合格。科学的な検証は今後のベンチマークになるか

2020年の東京パラリンピック開催などを受けて、特にここ数年、パラアスリート発掘イベントが盛んに行われている。競技体験型イベントが一般的というなかで、日本スポーツ振興センター(JSC)が実施し、3月6日に合格者6人(男子4、女子2)が発表された「ナショナルタレント発掘・育成(NTID)パラリンピック検証プログラム」は、これまでにない新たな形態で行われ、注目されていた。

NTIDは元々、2012年に出されたスポーツ基本計画に基づいて、その翌年からオリンピック競技を対象にスタートしたJSCの事業だ。全国規模で有能なタレントを集め、体力・運動能力測定といった科学的なデータなどから世界で活躍できる将来性の豊かなタレントを見い出す。そして、最適な競技団体へとつなぎ、トップアスリートへと引き上げる「種目最適(種目転向)型プログラム」であり、同時期に行われていたオリンピック競技としては今回が12回目だった。

このノウハウをパラリンピック競技にも応用し、2020年以降の活躍が期待できる有望なパラアスリート発掘を目的として初めて行われたのが今回だった。

心身両面から審査された、受験者たち

JSCによれば、NTIDは、JSCが担う「発掘」「検証」と、その後、競技団体が担う「育成」の3つのプロセスで構成されるという。今回はまず、全55人の応募者が書類選考され、障がいやスポーツ歴などから中学3年生から39歳までの48人が選抜された。

うち40人が昨年11月に行われた「発掘」プロセスの審査に臨んだ。陸上競技、ボッチャ、パワーリフティング、水泳、盲人マラソンの5団体が参加し、受験者のパフォーマンスを見守った。また、クラス分け委員や義肢装具士などの専門家らもオブザーバーとして参加したほか、オリンピック競技団体も視察に訪れていた。


競技への思いを語るテストも実施された

「発掘」プロセスでは、身体測定のほか、30m走やボール投げ、持久走などの一般的運動能力テストに加え、障がいに応じて跳躍や車いす操作といった動作テストも行われた。さらに、競技者としての意志や覚悟も審査された。これは、プログラムへの参加理由や目標について、カメラの前で30秒間スピーチするもので、「自分の能力を知りたい」「可能性を見つけたい」という人から、「新たな競技で、新たな挑戦をするため」「自分をさらに発展させたい」など競技転向も見据えた人まで、それぞれの思いを語っていた。



こうして心身両面からの素質を科学的分析と競技団体の眼で審査された結果、29人が選抜され、1月中旬に行われた「検証」プロセスに進んだ。ここから受験者は、「発掘」プロセスの結果により最適と思われる競技ごとに分けられ、競技により特化したテストに臨む。一人で複数の競技の審査を受けた受験者も何人かいた。

検証プログラムは、潜在能力を「発掘」での1回の審査では測りきれないため、数週間から数ヵ月のインターバルをおいて行われることもあるといい、今回は第1次審査の約3週間後に第2次審査が行われた。

1次審査では、競技特性を考慮した運動能力テストが行われた。さらに、競技団体との面接があり、そこで参加者それぞれに専門トレーニングなどの課題が与えられた。2次審査では1次と同じテストを受け、向上度が審査された。その競技や種目が身体的にフィットしているかや伸びしろに加え、指示したトレーニングを継続できる意思の強さなども評価ポイントだったという。

合格者の今後を見守り、プログラム継続にも期待

こうして初めての発掘、検証プログラムを経て選ばれた6人(平均約25歳)の合格者たち。ここから先の育成プロセスは、基本的に各競技団体が担うことになる。

今回、最多4人の合格者を出した、日本パラ・パワーリフティング連盟の吉田進理事長は、今回のプログラムについて、「いい選手も見つかり、満足している」と評価する。潜在能力を短期間で見極めるのは難しいとしながらも、パワーリフティングは究極の瞬発力を必要とする競技であるため、この検証プログラムで行われた車いすでの30m走は目安になり、実際にバーベルを上げるベンチプレスも行い筋肉の素質やセンスはある程度分かったという。

パワーリフティングで合格した4人は今後、2017年度の育成選手に指定され、合宿への招集や遠征費の補助など練習環境が整備される予定だ。「(合格者には)かなり期待しているし、我々としてもぜひ強くしてあげたい」と吉田理事長は話した。


盲人マラソンで合格した松本光代選手

NTIDで見い出されたタレントが2020年東京大会に向けてどんな成長を遂げ、結果を出すのか見届けることが重要だ。一方で、どんな審査項目が有効なのかなどパラアスリートのデータはまだ少ない。障がいの特性やクラス分けがある分、オリンピック選手とは異なる部分もあるだろう。今回の発掘、検証プロセスを振り返り、継続することで貴重なデータがさらに得られ、発掘プログラムとしてのベンチマークができるかもしれない。



近年、パラリンピックを開催した中国(2008年北京)やイギリス(2012年ロンドン)などは地元大会開催後も強豪国であり続けている。JSCでは今回を「トライアル」と位置づけていたが、このプログラムが2020年以降も見据えて継続され、プログラムとして成熟していくことを期待したい。

text by Kyoko Hoshino
photo by JAPAN SPORT COUNCIL
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