2017.08.10

【ゴールボール】[2017ジャパンパラゴールボール競技大会]全勝優勝の女子日本代表、4年計画の1年目で得た収穫

2012年のロンドンパラリンピックで金メダルに輝くも、連覇を狙った昨年のリオ大会では5位に終わったゴールボール日本女子代表。ホスト国として迎える2020年東京大会での金奪還を期し、リオ後まもなく新チームとなって再スタートを切った。以来、定評のある守備力に磨きをかけるだけでなく、「勝利には得点も不可欠」と攻撃力の向上にもこだわり、強化してきた。

8月4日から6日にかけて千葉ポートアリーナで開催された「2017ジャパンパラゴールボール競技大会」は、そうした強化の成果を試す、かっこうの機会となった。

日本は3年ぶりの優勝

今年の世界ランキング5位のカナダ、同15位のギリシャ、同36位の韓国が招かれた。同6位の日本は総当り戦2回の予選リーグで1位となり、6日の決勝戦でカナダを7-4で下し、3年ぶり2回目の優勝を果たした。予選から負けなしの完勝だった。


ガッツポーズを見せる若杉

決勝は開始早々に欠端瑛子が先制点を奪いリードすると、欠端と交代で入った若杉遥も3点を追加、前半を7-1と大量リードで折り返す。後半は日本の守備の乱れや手痛い反則によるペナルティスローなどでカナダに得点を許し、7-4と追い上げられるが、最後は定評ある堅守で逃げ切った。

市川喬一ヘッドコーチ(HC)は大会を通しての成長点として、「今までになく得点を取れた。リオ後から1年近くかけて行ったオフェンス強化の成果が表れてきている。もうひとつは多くの選手を時間配分しながら出場させられ、経験値という意味で大きな収穫があった」と手応えを口にした。



今年4月から主将となった天摩由貴は、「個々の役割を果たしながら、チーム6人で点を獲り、守るのが日本の戦い方。チームの連携、連動性をもっと高めていきたい」とさらなる成長を誓っていた。

金メダル獲得に向けた第一歩


指揮を執る市川HC

市川HCは15年から女子代表の指揮を取る。リオまでの強化は1年余りしかなく、「短すぎた」という反省のもと、東京大会に向けては4年計画で強化を進めている。

その初年度として、リオ大会後から取り組んできたのが、新たな攻撃スタイルの習得だった。小柄な日本選手は、パワーでは海外勢に太刀打ちできない。そこで、堅守から素早い切り返しで速攻につなげ相手ディフェンスを崩すプレッシングや、敏捷性を活かした移動攻撃を取り入れ、その精度を高める練習を重ねてきたという。



今大会では攻撃力強化の成果が随所に見られたが、決勝戦の序盤はその象徴だった。開始1分半で飛び出した先制点は速攻の見本だった。カナダのライト、オーギャレスが放った強烈なストレートボールをセンターの浦田理恵が脚で抑え、左横の欠端に短いパス。ボールをつかんだ欠端は速い切り返しからストレートボールを投げ返したところ、オーギャレスは守備体勢をとるのが間に合わず、脚にボールを当てたものの後ろにこぼした。

さらに、畳み掛けるように奪った2点目は移動攻撃のお手本だった。先制されたカナダのレフト、レインキーが投げたストレートボールをライン際で受けたライト、小宮正江は、するするとレフトのライン際まで移動し、守備ミスを犯したばかりのオーギャレスを再び狙ったのだ。オーギャレスは身体に当てたが、守備姿勢が不十分な上向きだったため、身体に当たったボールは大きく跳ねてネットに吸い込まれた。

こうした多彩な攻撃スタイルで相手チームを翻弄し、7試合で51点という結果は、これまでの女子日本代表には見られなかった進化だ。実際、ギリシャや韓国のHCは、「日本チームのスピードに驚いた。ぜひお手本にしたい」などと話し、カナダのHCは印象的な選手として、パワフルな欠端と、天摩の移動攻撃を挙げた。

市川HCはまた、今大会の位置づけを、8月21日からタイで行なわれるアジア・パシフィック選手権大会に向けた最終調整の場としていた。今年度の最大の目標はアジア・パシフィック選手権で上位に入り、来年6月にスウェーデンで開かれる世界選手権への出場権を取ること。2020年東京大会で金メダル獲得するために、強豪国が一堂に会する世界選手権でのメダル獲得は大きな弾みになるからだ。

今年はすでに、5月から6月にかけての欧州遠征で結果を出している。まず、スウェーデンの「2017 マルモ・レディー&メン・インターカップ」で強豪12ヵ国中、ロシアについで準優勝。つづいて、4ヵ国5チーム(日本から2チーム出場)が参加したリトアニアでの大会(国際トラカイ・ゴールボール・トーナメント)では日本1がアメリカに次ぐ2位に入ったのだ。

よい流れをつなげる今大会での全勝優勝は、アジア・パシフィック選手権大会への自信となったはずだ。4年計画の1年目で、新生日本は着実に成長している。ただし、細かな連携ミスや守備の乱れなど課題も見えた。スローイングの精度や強度もまだ伸びしろは大きい。1年1年、長所を延ばして課題をクリアし、さらなる成長に期待したい。


リオ後主将になった天摩

決勝で先制した欠端


各国共通の課題は、世代交代

新チームとしてスタートした日本だが、メンバー構成をみると、5年前の金メダルチームから2選手が入れ替わっただけというのが実状だ。では、他国の状況はどうか。今回来日した各国に、チームづくりについて尋ねてみた。

準優勝のカナダは5位に終わったリオ大会後、数人の選手が引退し、残った若い選手で新チームを構築中で、今回来日したのは4選手だけだった。トレントHCによれば、以前は3校あった盲学校がオンタリオ州1校に統合された関係もあり、新メンバーを探すのは簡単ではない。ゴールボール選手は全国で20~25人ほどで、定期的に試合などを行い、選抜した10人ほどの強化選手から代表が編成されるという。「若者の吸収力と成長度の大きさに期待したい」と、トレントHCは話していた。

3位のギリシャはチームの高齢化が悩みで、来日した6人中、18歳が1人いたほかは、50歳のキャプテンと41歳、そして30代が3人だ。キサノポールHCは、「若い選手を探すのは難しいが、障がいのある若者にとってスポーツは豊かな人生を送るために大切なこと。代表チームづくりだけでなく、スポーツも広めていきたい」と力を込めた。

最下位に終わった韓国は、逆に5人中4人が10代と若さが目立った。全国に約10校ある盲学校から選抜しているが、育成には時間がかかるという。今回来日した競技歴30年のスンヨン主将はコーチも兼ね、ともにプレーしながらコート内でさまざまなアドバイスを与え、「母親のような気持ちで」若手を育てているという。また、リーHCは、「ジャパンパラ大会は試合数(7試合)が多く、若手育成のよい機会」と招待に感謝していたが、アジア・パシフィック選手権には別の代表チームが出場する予定だという。今回来日した若手が育ち、選手層に厚みが出ると怖い存在になりそうだ。

各国それぞれ背景は異なるが、世代交代という課題は似ていた。どのチームも、「2020年にまた、日本に戻ってきたい」と話していたが、3年後にゴールボール会場となる千葉市に集結するトップチームは、果たしてどんな顔ぶれだろうか。


リオパラリンピック5位のカナダ

若い選手が来日した韓国



text by Kyoko Hoshino
photo by X-1
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