2017.09.05

【水泳】競い合いが好タイムにつながる。池、富田らが新記録をマークした「2017ジャパンパラ水泳競技大会」

パラ水泳の国内最高峰の大会「2017ジャパンパラ水泳競技大会」が9月2日から3日にかけて東京辰巳国際水泳場で開催された。27回目を数える今大会には全国から300人を超える選手がエントリーしたほか、初めて海外選手を招待。日本選手にとって、国内で海外のトップスイマーと直接競い合い、ハイレベルの泳ぎを目の当たりにできる貴重な機会にもなった。

出場選手には、30日にメキシコで開幕する「世界パラ水泳選手権大会」日本代表の24人も。今大会は、リオパラリンピックのメダリストから次代を担うホープたちが約1ヵ月後に迫った大舞台に向け、自身の現状を測る場でもあった。

世界記録保持者と泳ぎ新記録を樹立した池


パスコー(左)を追う池

大会では数々の記録が更新された。リオパラリンピック日本代表の池愛里(S10/上肢機能障がいなど)は日本記録を更新した。女子100mバタフライの予選で1分09秒51をマークし、これまでの記録を0.57秒縮める日本新記録を樹立し、決勝でも1分08秒99までタイム伸ばした。

「リオでは、世界と全く戦えないと身に染みたので、苦しい道を自ら選んだ」という池は今春、日本体育大学に進学し、「日本一厳しい」といわれる水泳部の門を叩いた。この半年間、オリンピアンなど健常のハイレベルの選手たちと同じメニューに取り組んできたことが、「いい結果につながった」と話す。



さらに、海外招待選手の一人で、1分02秒60の世界記録を持つソフィー・パスコー(ニュージーランド)と競えたこともプラスになった。決勝では隣のレーンで先行するパスコーに食らいつき、約2秒遅れでフィニッシュ。国内では無敵の池は、「国内大会で、ここまで緊張して泳げたのは初めて。目標となる選手が横を泳いでくれて、『少しでも離されないように』と思って泳いだ」ことがタイムアップにつながったと感謝した。

木村と富田。似て非なるふたりのライバル関係

今大会、注目を集めた一人は昨年のリオパラリンピックで銀メダル2個と銅メダル2個を獲得した日本のエース、S11(視覚障がい/全盲)クラスの木村敬一だ。リオで金メダルを逃した悔しさをバネに、今季は世界選手権に照準を合わせ、練習環境やメニューも見直し、自身の泳ぎを再構築すべく取り組んでいる。その途上での今大会は2種目に出場し、悲喜こもごもの結果だった。

大会1日目の50m自由形では大会新記録となる26秒56をマークして優勝し、「リオとほぼ同じタイム。やれやれ」と安堵の表情を見せた。一方、2日目の100mバタフライは1分02秒69の大会新で優勝するも、「スタートもターンも、いいところなし。全部が少しずつずれていた。体のキレがなく、とくにキックがもう少ししっかりできれば……」と反省しきり。「世界選手権に向けて、今から少しずつ調子を上げたい」と改めて目標を見据えていた。


普段は仲がいいという木村(右)と富田

そんな木村に、国内で好敵手が現れた。昨年まで練習パートナーでもあった富田宇宙だ。3歳で水泳を始めた富田は進行性の目の病を発症。高校時代から視力が低下し、水泳から離れていた時期もあったが、2012年からパラ水泳の大会に出るようになると、S13クラス(視覚障がい/軽度の弱視)の記録を次々と塗り替えてきた。

今春から日体大大学院に進学し、池と同じ水泳部で、「以前の3倍」という1日16kmを泳ぎ込む充実の毎日を過ごしていた富田に転機が訪れる。今年7月に出場した「IDMベルリン2017」で国際クラス分けを受けたところ、障がいクラスが木村と同じS11に変更になったのだ。



富田は胸の内を明かす。
「進行性の視覚障がいなので、いつかは(より重度の)S11になると覚悟していた。障がいが重くなったことは、日常生活ではつらい面があるが、選手としてはパラリンピックでメダルを期待され、プラスにとらえている」

今大会では400m自由形決勝で4分39秒71をマークし、「狙っていた」というアジア記録を更新。好調さをうかがわせたものの、木村との直接対決となった100mバタフライでは、予選で自己記録を3秒更新し、木村に先着したが、決勝では逆に2秒以上離され2位。コースロープと接触してコントロールを失い、タイムをロスしたことが敗因だった。

視覚障がい選手にとって、「真っすぐ泳ぐこと」は至難の業だ。とくにS11クラスは、(目隠しの役割をする)ブラックゴーグル着用の義務があり視覚が完全に遮断されるため、不慣れな富田にはかなりの負担となる。「コースロープと接触しながら、いかにスムーズに泳ぎ、スピードを上げられるかが課題。そのために筋力や持久力をあげ、体づくりに取り組みたい」と富田は話す。
木村との関係性については、「もともと仲がいいので、レースではやりにくい部分もある。でも、いい仲間として協力し、意見交換しながら、切磋琢磨していきたい」と話す。

一方の木村も、最近まで弱視者だった富田に対し、自身は2歳で失明し、ほぼ見えない世界だけで生活し、泳いできた。「見えない中で生きてきた僕のノウハウと、富田選手の見えていた経験から得られる発見。互いに異なる経験や情報を分け合いながら一緒に強くなりたい。お互いを使っていければいいと思う」と、似て非なるふたりだからこその強みを口にした。

ライバルという面では、「国内でライバル登場は嬉しくもあり、怖くもある。でも、緊張感をもって競い合いながら、S11のレベルを上げていきたい」と木村がさらなる高みを目指せば、富田は「木村くんのタイムは関係なく、もっと速く、もっと上に行きたい。最終目標は東京パラリンピックの金メダル。(コースロープとの接触のような)トラブルがあっても金が獲れるような、圧倒的な実力を身につけることが第一」と意気込む。次の直接対決も楽しみだ。


text by Kyoko Hoshino
photo by X-1
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