2017.12.22

【車いすバスケットボール】[第17回HIGH8選手権大会]高さをいかしたNO EXCUSEが初の栄冠に輝く

12月16、17日の2日間、横浜ラポールで「第17回HIGH8選手権大会」が行われ、決勝で神奈川を52-35で破ったNO EXCUSE(東京)が初優勝を果たした。第1クォーターでダブルスコアとし、第2クォーターを終えた時点でリードしていたのは神奈川だった。しかし、第3クォーターの序盤でNO EXCUSEが逆転に成功すると、そのままリードを広げていく展開に。果たして、両者の明暗を分けたものとは――。

決勝は「高さのNO EXCUSE」vs「スピードの神奈川」

毎年、国内の車いすバスケットボールシーズンの最後を飾る「HIGH8選手権大会」。国内車いすバスケの強化の一環として、ローポインターの育成を目的に始まった同大会は、持ち点が2.5点以下のローポインターと女子選手に出場資格が与えられ、コート上の5人の合計が8点以内というルールで行われる。

今年は、各ブロック予選を勝ち抜いた12チームが集結し、2017年シーズンの有終の美を飾るべく、全国の頂点を目指して激突した。

大会4連覇を目指す宮城MAX、メンバーの半数以上が日本代表やU23の2017年強化指定選手が並ぶ埼玉ライオンズ、選手層が厚く安定感の光る千葉ホークス……下馬評で優勝候補がいくつも挙げられていた今大会は、予想通り、各チームにとって厳しい戦いが待ち受けていた。そんななか、決勝に進出したのが、NO EXCUSEと神奈川の2チームだ。

昨シーズンまで2年間ドイツ・ブンデスリーガでプレーしていた千脇貢が加入し、佐藤大輔、菊池隆朗という高さを武器とする3人のプレーヤーを有したNO EXCUSEは、攻守ともにゴール下を支配し、2回戦で千葉ホークスを52-49、準決勝では埼玉ライオンズを58-53と競り勝って決勝に上がってきた。

一方、2016年のリオパラリンピックに最年少の17歳で出場し、今年6月に行われたU23世界選手権ではチームをベスト4に導く活躍でオールスター5にも輝いた鳥海連志擁する神奈川は、スピードを武器としたチーム。準決勝では宮城MAXを48-46で破り、前覇者の牙城を崩してファイナリストの権利を奪い取った。

「高さvsスピード」。
両チームの決勝は、予想通り、真逆とも言えるスタイルのバスケが展開された。

チームを勢いづけた田仲幸生の2ゴール


持ち点1.5の田仲

最初に試合の主導権を握ったのは、神奈川だった。第1クォーター、ゴール下のシュートを決めきれずに苦戦するNO EXCUSEをしり目に、神奈川は鳥海がミドルシュートで最初の得点を決めると、相手のファウルを誘うレイアップシュートを決めてバスケットカウントとし、フリースローも入れてみせた。さらに矢守睦のミドルシュートも決まり、試合開始4分で、神奈川は7-0とリードを奪った。



スピードで勝る神奈川は、クイックネスを武器とする鳥海がNO EXCUSEのディフェンスをかいくぐり積極的にインサイドに攻め込んだ。その鳥海の動きに連動するようにして、素早いパスワークを展開。さらにアウトサイドからのシュートも有効的に決まり、リズムの良さを生み出していた。

一方、NO EXCUSEは高いラインからプレスをかけてくる神奈川のディフェンスに対し、ボール運びに苦戦。ようやくゴール下に到達しても、シュートが決まらないという悪循環となっていた。

「18ー9」
第1クォーターの両チームのプレーには、スコア通りの差があった。

ところが第2クォーター以降、神奈川のシュートの確率が下がっていった。インサイドを手厚く守るために小さく守っていたNO EXCUSEが、アウトサイドからのシュートに対して厳しくプレッシャーをかけ始めたのだ。すると、オフェンスにもリズムが生まれ、NO EXCUSEは千脇が今大会2本目となるスリーポイントを決めると、その後は、佐藤とともにゴール下からの得点を量産した。しかし、神奈川も終盤には矢守が3連続でミドルシュートを決めて見せ、26-22となんとか神奈川がリードを守るかたちで、試合を折り返した。

第3クォーター、NO EXCUSEは8秒、24秒のバイオレーションを繰り返し、まさに攻めあぐねていた。さらに不運だったのは、序盤に千脇が4つめのファウルを取られたことにあった。ローポインターの中にあって、千脇には随一の高さとスピード、パワーがある。さらには今年磨いてきたというアウトサイドからのシュートも加わった千脇は、チーム一のポイントゲッターとなっていた。その千脇をベンチに下げざるを得なくなったことは、NO EXCUSEにとって相当な痛手となることは誰の目からも明らかだった。

そんななか、チームを救ったのは、千脇に代わってコートに入った田仲幸生だ。後半に入って約2分間、両チームともに得点が生まれず、停滞していたところで、田仲がシュートを決めると、最後は相手のターンオーバーからのカウンター攻撃でレイアップシュートをきっちりと決めてみせた。34-30。田仲の2本のシュートが決まったか否かでは、勝負の行方は違っていたに違いない。

集中力の違いが垣間見えたワンシーン

迎えた第4クォーター、勢いづくNO EXCUSEは神奈川のディフェンスに苦戦しながらも、それでも少ないチャンスを確実にモノにし、得点を積み重ねていった。そんななか、NO EXCUSEの勝利を早くも感じさせたシーンがあった。


今年のHIGH8を制したNO EXCUSE
text by Hisako Saito

残り約5分、神奈川は少しでも攻撃の時間を稼ごうとしたのだろう、ボールを転がしてスローインをした。すると、そこに詰めていた田仲が素早くボールを拾い上げ、難なくレイアップシュートを決めてしまったのだ。この数秒間の出来事に、両チームの集中力の高さに差が生まれているように感じられた。

実際、その後の4分間で4ゴールを挙げたNO EXCUSEに対し、神奈川は無得点に終わった。残り30秒でようやく得点を挙げた神奈川だったが、時すでに遅し。52-35で、NO EXCUSEが勝利を収め、初めて頂点に立った。



「チームとしてどうしても欲しかったタイトル。それをようやく手に入れることができて、本当に嬉しい」

試合後、中井健豪コーチはそう言って、初優勝の喜びをかみしめた。そして、この勝利がチームにもたらす影響は大きいと指揮官は見ている。

「NO EXCUSEというと、どうしても香西宏昭に頼ったチームという見方をされてしまうけれど、今大会でローポインターの選手たちがこれだけの仕事ができたという実績は、チームにとってすごく大きい。必ず来年の日本選手権につながるはずです」

日本選手権では、2年連続で王者・宮城MAXと大接戦を演じたNO EXCUSE。今大会での優勝が、チームの底上げとなることは間違いない。一方、現在日本選手権で9連覇中の宮城MAXは、昨年までHIGH8をも3連覇し、まさに「絶対的王者」としての存在感を示していた。しかし、その宮城MAXが今大会では3位決定戦で埼玉ライオンズに40-68と完敗を喫し、4位に転じた。だが、今大会の宮城MAXには国内随一のスピードと守備力を持つ豊島英が不在で、真の力ではないことは周知の事実だ。いずれにしても、国内の車いすバスケ界は、群雄割拠の時代となりつつある。今大会はそんなことを予期させるものとなった。


text by Hisako Saito
photo by X-1
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