ブラインドサッカーワールドグランプリ2019、日本もメダル争いに参戦!

日本もメダル争い!ブラインドサッカーワールドグランプリ2019
2019.04.08.MON 公開

ブラインドサッカー日本代表が3月24日まで6日間にわたって品川区立天王洲公園で行われた国際大会「IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2019」に出場し、4位で大会を終えた。

前回は“6チーム中5位”と苦杯をなめた日本だったが、今回は予選で世界ランキング4位のスペインに勝利、世界選手権4位のロシアにも引き分けるなど強豪と渡り合った。東京2020パラリンピックに向けて、攻撃的なサッカーをキーワードにビルドアップしてきたチームが手にしたものとは――。

準決勝は体格に勝るイングランド選手をロベルト、加藤、田中の3人で守った

東京の“リハーサル”で決勝トーナメント進出

昨年より始まった本大会は、2020年まで3年連続で開催されることが決まっている。世界トップのブラジルや中国、イランは参加していないが、ヨーロッパや南米の強豪国が参加しており、代表チームの試合数が少ない日本にとっては貴重な国際経験の場となっている。

さらに今回は参加8ヵ国で、出場チームが2グループに分かれて総当たりの予選リーグを戦うパラリンピックと同じ大会形式。そんななかで、日本は予選3戦を2勝1分けで1位通過し、メダルゲームである準決勝に勝ち進んだ。ここからは、日本にとって“未知のステージ”だった。準決勝では前回、大会で勝利したイングランドに敗れたものの、翌日、再びメダルのかかる3位決定戦に向けて奮い立つ。最後は敗れてメダルは逃したものの、この経験が東京に向ける大きな財産になったことは間違いないだろう。

4位という成績に悔しさをあらわにした選手たちからは、次のステップに向かう日本のエネルギーが感じられた。

キャプテンとしてチームを鼓舞しつつ、自らもエースとして日本の総得点3点を記録した川村

強敵スペインに勝利

「相手のサッカーに合わせるのが日本のスタイル」
大会初日に高田監督がこう話した通り、選手たちは毎試合の戦略に応じて献身的に走った。

初戦のロシア戦は0-0で引き分けた。序盤からエース黒田智成、キャプテン川村怜が前線に侵入し、シュートを撃ちはするのだが、その合図と判断がワンテンポ遅いのかボールは体格に勝るロシア選手の壁にことごとく阻まれてしまう。「海外選手は足が長い。11月から対外試合を行っていないせいで感覚が鈍っていて、どうしても前にスペースがあるとボールを運んでしまうんです」とは、高田監督の弁。

試合後、手ごたえと収穫を語った日本代表の高田監督

すると、翌日のコロンビア戦では、強いフィジカルで当たってくる相手に体を寄せて対応し、攻撃では前半17分、左サイドから川村が右トーキックで落ち着いてゴール。渾身のガッツポーズを見せた。後半も川村は緩急を使ったドリブルで相手を交わして追加点。川村が個人技で客席を沸かせた一方で、他の選手たちにとっても、前半と比べて強度の上がる中、ファール覚悟の激しいプレーで勝利をもぎ取ったことは大きな自信になっただろう。

そんななかで3戦目は、「引き分けても予選突破」という状況でグループ最強のスペインとの勝負を迎えた。苦手意識のあった南米のチームを破った後も、チームの切り替えは早く、コロンビアに比べて、ワイドにボールを展開するスペインの中央突破を阻止しようと結束した。出番のなかったムードメーカーの寺西一もベンチから声を張る。そして後半9分、ゴールをねじ開けたのは、またもや川村だった。右サイドをドリブルで突破し「狙い通り」の決勝点を決めた。前回大会、引き分けで決勝進出が決まるトルコに対し、後半に2失点し得失点と総得点でグループ3位に終わった経験から、日本は決して守りに入らない攻めの姿勢を貫いた。

欧州屈指の実力国イングランドは決定力で日本を上回った

ターゲットとしていたスペイン戦で見事な勝利を収めた日本。だが、多くの時間帯を川村、黒田、佐々木ロベルト泉、田中章仁というレギュラーメンバーで戦うチームには、大会を勝ち抜くスタミナは残っていなかった。

1日の休息日を挟んで迎えた準決勝。相手のイングランドは昨年勝利した相手だ。しかし、日本は後半に2得点を許し、0-2で敗退。試合後、高田監督は「油断があったのかもしれない」と立ち上がりの悪さを嘆き、相手のマークにあった川村も「ゴールでチームに貢献できなかったのが悔しい。守備でもこれまでやってきたポジショニングがうまくいかなかった」と力なく話した。

日本を破り、最終順位は3位だったスペイン

イングランドのジョナタン・ピュー監督は、勝因を聞かれて「日本対策がうまくいった。イングランドの精神的な強さが出せた」と胸を張った。

2得点したダニエル・イングリッシュは「決勝に行こうと皆で話していた」と言い、気持ちの強さが勝利につながったことを示唆した。

翌日の3位決定戦は、スペインとの再戦だった。スペインも日本に2度続けて負けるわけにはいかない。対する日本も田中を中心に好守でリズムを作ったが、後半に隙を突かれて得点を許し0-1で敗れた。

3位決定戦では後半17分にスペインに失点を許した

決勝は、2-0でアルゼンチンがイングランドを下し、2年連続2度目の優勝を果たした。

MVPを獲得したアルゼンチンのマキシミリアーノ・エスピニージョ

日本の収穫と課題

日本は選手層の薄さが露呈したものの、大会を通して好セーブが目立ったGKの佐藤大介がベストゴールキーパー賞を受賞する明るいニュースもあった。コロンビア戦で第2PK(前後半それぞれ、チームファールが6つを超えた場合、相手チームにゴールから8m地点からのPKが与えられる)のピンチを迎えた際なども、ボールを目で追う余裕を見せていた。高田監督も「スタッフからの分析データも入っているし、彼は大丈夫」と厚い信頼を寄せていた。

2015年アジア選手権以来の代表復帰となった43歳の佐々木康裕

また、今大会のもう一つの好材料はベテラン佐々木康裕の代表復帰だろう。若手育成も不可欠だが、空間認知に時間のかかるといわれるブラインドサッカーにおいて短期間で若手を代表レベルまで育成することが難しい。そんななか、長いキャリアを持ち、過去の代表歴もある佐々木の3年半ぶりの復帰はチームにとって明るい材料と言える。

「我々は常にチャレンジャー」とは高田監督の言葉。2020年東京大会でのメダル獲得に向ける挑戦は、正念場を迎えている。

【IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2019 リザルト】
優勝:アルゼンチン
準優勝:イングランド
3位:スペイン
4位:日本
5位:トルコ
6位:タイ
7位:コロンビア
8位:ロシア

アルゼンチンのフロイラン・パディージャが2年連続で優勝カップを掲げた

text by TEAM A
photo by Yoshio Kato

『ブラインドサッカーワールドグランプリ2019、日本もメダル争いに参戦!』