任天堂に聞いてみた!Nintendo Switch 2 『Drag x Drive』のアレコレ。マウス操作で車いすのような乗り物を操る新感覚スポーツゲームはどのようにして生まれた?
「Nintendo Switch 2」の完全新作ソフトとして2025年8月14日に発売された『Drag x Drive』(ドラッグ アンド ドライブ)。Nintendo Switch 2 から実装された新機能「マウス操作」を楽しめるゲームだ。
Nintendo Switch 2 といえば、発売当初行われていた抽選販売の結果に一喜一憂する人々の声で「Switch2当落」がSNSのトレンドに上がるなど、大人気のゲーム機。そんなNintendo Switch 2 の新機能を活用した車いすバスケットボールのようなゲームソフトが登場したということで、『Drag x Drive』も注目を集めてきた。
これまでにない、マウス操作で直感的に遊べる新感覚スポーツゲーム『Drag x Drive』は、どのように開発されたのだろうか。ゲームが誕生するまでの経緯、背景にある意図や思いについて、任天堂株式会社に聞いた。
競技の勝ち負けにとどまらない、コートを沸かせる楽しさ
――『Drag x Drive』はどのようなゲームなのか、概要と特徴を教えてください。
任天堂:『Drag x Drive』は、2本のJoy-Con 2 をマウスのように動かして直感的にプレイする、新感覚のスポーツゲームです。 車いすバスケットボール、車いすラグビー、それから車いすモトクロス、BMXやスケートボードなどのスポーツにインスピレーションを受けていて、車いすのような乗り物を操作しながら最大3対3で遊ぶゲームになっています。 Nintendo Switch 2 に標準装備されているコントローラーであるJoy-Con 2 には、左右それぞれにマウス機能が搭載されています。2つの手にJoy-Con 2 を1つずつ持って、マウスのようにスライドさせると、ちょうど車いすの2つの車輪を操作するような格好になります。

また、Joy-Con 2 にはモーションセンサーが搭載されているので、ボールを投げるように手を振ることで、ゲームの中でもシュートを打つことができます。
このように、直感的な操作で3×3バスケをプレイできることが、『Drag x Drive』の特徴です。
さらに、コートの端にあるハーフパイプから勢いよく飛び出し、スケートボードのようなトリックやダンクシュートなど、ゲームならではのアクションを楽しむこともできます。

Joy-Con 2 を持ち上げて振ると、ゲームの中のキャラクターも連動して腕を振るので、仲間と手を振りあったり、ハイタッチしたりと、言葉を交わさなくてもコミュニケーションが取れるところも、このゲームの大きな特徴のひとつだと考えています。
インターネット通信にも対応していますので、オンラインで出会った世界中のプレイヤーと、バスケ対戦や、公園のような遊び場「パーク」にある様々なアクティビティで、いろんなコミュニケーションを取りながら一緒に遊んでみてください。

――『Drag x Drive』で楽しめるのは新しい形の競技だと思いますが、競技としての魅力はどんなところにあると思いますか?
任天堂:まずはJoy-Con 2 のマウス操作を使って体を大きく動かす新しい遊びなので、Joy-Con 2 をもつ手の動きがダイレクトにゲーム画面に反映される直感的操作を楽しんでいただきたいと思います。また単に競技の勝ち負けではなく、いろんなトリック(技)を披露してコートを沸かせる楽しさもある、というのもこのゲームのユニークな点だと考えています。
――『Drag x Drive』という名前の由来を教えてください。
任天堂:マウス操作の「Drag」と、車輪を駆動させる「Drive」に由来しています。また、バスケットボールでは、ボール保持者がディフェンスを突破する動きを「Drive」、「Drive」した選手が元いた場所に味方が入る動きを「Drag」と呼ぶので、2つの意味がかかっています。
初心者でもとっつきやすく遊びやすいように
――チュートリアル※では、タイヤの操作方法→バスケットボールの練習→デモ試合→トリックの説明とわかりやすい順番にすることで、初心者でも無理なくゲームに慣れていくことができる流れになっているように感じました。チュートリアルの流れを決めた時のお話を教えてください。
任天堂:「車いすを操作してバスケの試合をする」ことが、多くの方にとっては初めての経験だと思いますので、じっくり時間をかけて習得していただけるよう心がけました。
車いすの基本的な操作を覚えてから、シュートのコツや試合を学んでいく流れは、開発スタッフが実際に参加した車いすバスケ体験会の流れも参考にしています。
※プレイヤーがゲームの基本的なルールや操作方法を学ぶための導入部分

――タイヤの操作説明が非常にわかりやすく、すぐに習得しやすい流れになっているように感じました。説明を考える際に行った工夫はありますか?
任天堂:最初に「マウスで車輪を回す」という操作を直感的に理解してもらうため、あえて車いすをスタンドで持ち上げ、タイヤを空転させる演出を入れました。これにより「マウスを動かした側の車輪が回る」という仕組みが一目でわかり、その後の「右の車輪が回ると車体が左に旋回する」という動きも自然に理解できるよう、工夫しています。
――タックルをすることで相手がボールを落としてボールを奪うことができる仕様になっていると思います。パスカットだけではなく、タックルでもボールの主導権を奪い返せるようにした理由を教えてください。
任天堂:車いすの車輪の操作でどんな遊びをつくると面白いのかいろいろと検証をしていたなかに三角コーンをコース上に置いてレースをする遊びがありました。コーンを「避ける」よりも、コーンにガンガン「ぶつける」方が爽快感があって楽しいという意見が開発チーム内で出ました。
その後、ドリブルの検証をしていて、車輪をこぎながらドリブルをするのはゲームの操作としては遊びづらく、ドリブルを省くことになりました。しかし、相手からボールをスティールする手段は必要なので、「ぶつける」ほうが楽しいという考えも踏まえて、タックルで相手を狙ってボールを奪うという遊びにしました。
このゲームで一番楽しんでほしいのは2つのマウスで車いすを操作することなので、初心者のとっつきやすさと遊びやすさを考えた結果、このような仕様になっています。
――プレイする際の「スタンス」を選べるようにした理由を教えてください。
任天堂:公園のように、たまたま集まったメンバーや、その時の気分で遊び方が変わる面白さを、オンラインでも再現できればと考えていました。
「今日は人数が集まったからバスケより鬼ごっこをしよう」とか、「さっきの試合のシュートがうまくいかなかったから、いったん試合から外れてシュート練習をしよう」ということもできます。
試合、観戦、練習など、自分のスタンスを自由に変えられる「ゆるい集まり」を目指しています。

――ドライバーのデザインや性能を検討する時に参考にしたものはありますか?
任天堂:本ゲームでは「センター」、「フォワード」、「ガード」の3タイプのキャラクターを用意しています。身体が大きくてフィジカルの強い「センター」には、車いすラグビーの要素を加えて、前面に金属のシールドを付けました。
バランスのいい「フォワード」には車いすバスケ、俊敏な動きをする「ガード」には車いすモトクロス仕様の車いすなど、いろんなところから要素を抽出して、遠くから見てもわかりやすいよう差別化してデザインしています。

車いすや車いすバスケを研究して開発!
――『Drag x Drive』はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?
任天堂:新しいものをつくるための試作チームでさまざまな検証をおこなっているなか、Nintendo Switch 2 のマウス機能を使って車輪を動かす遊びが生まれたことがきっかけです。
――企画発案時、インスピレーションを得たものはありますか?
任天堂:操作の発案者が、両手に持ったJoy-Con 2 のマウスを前後に動かし、それに合わせて振動をつけてみたところ、学生時代に研究で実際の車いすを操作した時の感覚を思い出し、車いすをモチーフとすることにしました。
――競技やフィールド、ルール等の開発を進める中で参考にしたものを教えてください。
任天堂:車いすの図鑑や車いす競技の選手の動画・エッセイ、バスケットボールや車いすを題材にした漫画などの資料を集めて車いすバスケに関する知識を学んだり、車いすバスケットボールの体験会やストリートバスケットボールの試合に足を運んだりして研究を重ねました。また、実際に日常用の車いすと競技用の車いすを購入し、実際に車いすを操作する感覚を確かめながら開発していました。
パークに集まって、入れ代わり立ち代わりチームを組み替えながらプレイするスタイルは、ストリートバスケからインスピレーションを得ています。
――開発する中で特に重要視していた軸はありますか?
任天堂:遊びの没入感を高めるために、操作の「アナログ感」を大事にしました。
マウスで車輪を回す操作をはじめ、プレイヤーの物理的な動きと、ゲームの中のキャラクターの挙動を直接的に結び付けることで、リアルな操作感を作っています。
ティルティングやバニーホップといった技もマウス操作と連動させ、ダンクシュートはハーフパイプからちょうどいい角度と勢いで飛び出し、リングに近づいてからJoy-Con 2 を振ることで成功するようにして、本当に自分がダンクシュートしているような感覚に近づけるようにしました。
こうした工夫を積み重ねて、練習して上達する過程が楽しさにつながる、深い没入感のあるゲームを目指しました。

――開発する中で苦労した点を教えてください。
任天堂:開発チームには車いすバスケの競技経験者がいなかったので、自分たちで体験会に出向くなど、情報収集や研究は重ねていましたが、実際に車いすバスケの競技経験者がどのような感想を持たれるかは不安を持っていました。
そこで、社外の競技経験者にご協力をいただき、開発中のものを遊んでいただいたところ、とても良い反応をいただけたので、その後の開発に向けて大きな自信になりました。
――スケートボードの要素を入れた経緯を教えてください。
任天堂:スケートボード要素であるハーフパイプは、そもそもは車輪の操作に慣れていないとすぐにコートから飛び出してしまうのを防ぐために、自然とコートの中に戻れる仕掛けとして追加したのですが、結果としてハーフパイプを使ってスケートボードや車いすモトクロスのようなトリックで遊べるようになりました。
――ズボンの上からでもコントローラーの操作を可能にしたことで、タイヤの操作をより直感的に行うことが可能になっているように感じます。ズボンの上でもコントローラーの操作を可能にした理由を教えてください。
任天堂:ゲームを遊ぶ環境にいつもテーブルがあるとは限りませんので、Nintendo Switch 2 自体、ズボンの上でマウスを操作することも想定して設計されているのですが、この操作が『Drag x Drive』と相性が良いため、テーブルを使った操作と併せて推奨しています。マウスを前後にスムーズに動かすには、手の位置を肘より低くすることがポイントなのですが、ズボンの上で操作すると自然とその姿勢を取りやすくなることも推奨する理由の一つです。

ゲームやスポーツが苦手でも楽しめる可能性を秘めている『Drag x Drive』
――『Drag x Drive』をどういうユーザーに楽しんでほしいですか?
任天堂:ゲームが好きな方、スポーツが好きな方に楽しんでいただきたいのはもちろんですが、ゲームやスポーツが苦手な方にも楽しんでいただきたいです。直感的で今までにない新しい操作なので、誰もが同じスタートラインから遊ぶことができると思います。
――『Drag x Drive』をプレイする中でユーザーに感じてほしいことはありますか?
任天堂:練習してうまくなっていく楽しさを感じていただきたいです。
最初は慣れが必要なのですが、それこそスポーツのように、日ごとに上達していく感覚を味わっていただけると思います。
――ソフトをプレイしたユーザーからの声で意外に感じた声があれば教えてください。
任天堂: Nintendo Switch 2 と対応ソフトの体験会があり、そこで『Drag x Drive』をお客さまに遊んでいただく機会がありました。そこであまりにも上手なお二人組がいました。インタビューしてみたところ、おひとりは「アクションゲームが得意だ」と答え、もうひとりは「アクションゲームが苦手だ」と回答されたんです。でもすごくお上手だったので理由を聞いてみたところ「マウスは毎日会社で使っているからかなあ」とおっしゃっていました。それを聞いて、『Drag x Drive』はゲームが苦手な方やスポーツが苦手な方にも楽しく遊んでいただける可能性があると感じました。
また、本作の体験会ではご案内の都合上、初対面の3人でチームを組んで試合をしていただくこともありましたが、試合後にはお互いに「ありがとうございました」と言い合うお客様の姿も印象的でした。
そして、この光景は体験会だけではなく、オンライン対戦でも、初めて一緒に戦った味方とハイタッチで喜び合ったり、敵チームと称え合ったりする場面が見られます。相手の姿は見えませんが、画面の向こうで実際に手を振っている姿を想像すると、嬉しくなりますし、開発冥利に尽きます。
勝負の中でもフレンドリーな体験を楽しめるのは、『Drag x Drive』ならではかと思います。ぜひいろんな方に手に取って遊んでみていただきたいです。
12月14日(日)にオンラインで参加できるゲーム内イベント「Park King Challenge」の開催も決まり、さらに盛り上がりを見せる『Drag x Drive』。今回は車いすバスケや車いすラグビー等の要素が含まれたゲームとなっているが、他の車いすスポーツやパラスポーツのゲームが登場する日も来るかもしれない。ゲームは楽しさをもたらしてくれるだけでなく、題材となったものと出会うきっかけにもなる。『Drag x Drive』のようなゲームが、今後パラスポーツとの出会いのきっかけのひとつになっていくのではないだろうか。
『Drag x Drive』公式サイト
https://www.nintendo.com/jp/games/switch2/aaaqa/
edited by TEAM P
写真提供:任天堂株式会社
ⓒ Nintendo






