車いすバスケットボール男子日本代表、グループ2位突破を支えた鳥海連志の献身

2021.09.01.WED 公開

「攻守の切り替えが速いトランジション・バスケット」
「ディフェンスで世界に勝つ」
「ベリーハードワーク」


京谷和幸ヘッドコーチをはじめ選手たちが事あるごとに口にしてきた、車いすバスケットボール男子日本代表の合言葉であり、コンセプトだ。

※東京2020パラリンピック・男子車いすバスケットボール日本代表選手名鑑はこちら

17歳で出場したリオから5年

それがどのようなものであるかを、選手たちは東京2020パラリンピックの予選リーグで存分に見せてくれた。そして、そのコンセプトを最もプレーで体現していたのが、背番号2、鳥海連志(2.5)だろう。

日本は予選リーグを4勝1敗のグループ2位で準々決勝に駒を進めたが、鳥海はそのほとんどの試合に出場し、攻守にわたる活躍を見せた。グループ2位をかけた最終戦は、メンバー中唯一、交代なしで40分間コートの中を走り続けた。

鳥海はクラス2.5(1.0~4.5まであり低いほど障がいが重い)のミドルポインターだ。ミドルポインターは座高が低い背もたれ付きの競技用車いす、いわゆる「バスケ車」に乗ることが多い。しかし鳥海の場合、四肢に障がいはあるが体幹が効くため、ダイナミックな動きが可能で、バスケ車もハイポインター仕様。しかも、チーム最年少の17歳で出場したリオ大会の後、タイヤのサイズを大きくし、座高も高くしたという。

「バスケ車を大きくすると、その分重くなるため、チェアワークのスキルが落ちるのではないかとずいぶん言われました。でも、サイズアップしてもできることを証明したかった。そのため、チェアスキルを磨き、筋トレに取り組んで体も大きくしました」(鳥海)

その過程では苦しい時間もあったと明かす。しかし、それが無駄ではなかったことは、試合中の軽やか、かつ機敏なチェアワークを見ても明らかだ。鳥海が自身にレベルアップを課したのには、理由がある。

「チームのテーマとしてディフェンスを掲げているからには、僕が一番その体現者でありたいと思いました」

リバウンドは全部自分が取る!

鳥海は決勝の舞台でも躍動した

鳥海のプレーの中で、目を引いたものの一つが、リバウンドではなかっただろうか。守りから攻撃に転じるうえで欠かせないリバウンドを真っ先に取ることを、鳥海は誰の指示でもなく、自らに課しているのだという。

「リバウンドは、次への切り替えに不可欠なプレー。誰かがやらなくてはいけないなら、僕がやろうと。リバウンドを取った後、ドリブルやパスでボールをさばくところまで、こだわってやっています」

鳥海のリバウンドが攻撃の起点となっているのは明らか。予選リーグではまさに「ディフェンスから勝ちにつながる試合」(鳥海)ばかりだった。

「ディフェンスで、代表チーム内でのキャラクターを確立してきたと自負しています。泥臭いプレーでチームに貢献するのが僕の役割」

その意識はプレーの選択にも見て取れる。バスケットボールの醍醐味といえば、やはりシュートだ。もちろん、鳥海はシュート力もあり、実際、初戦のコロンビア戦では、15得点、16リバウンド、10アシストと3つのプレーで2けたとなる「トリプルダブル」を記録している。

仲間を生かす視野の広い連携プレー

だからといって自分がシュートを打つことを最優先しているわけではなさそうだ。

例えば、5月の有明特別強化試合で、チームメイトの古澤拓也(3.0)との連携について尋ねられた際は、

「拓ちゃんはシュートレンジが広い。拓ちゃんが動きやすいようにとか、ゲームをコントロールしてもらいやすいよう、常にコミュニケーションを取ることを意識している」

と語っていた。これは今回、古澤のみならず、ほかの選手たちとの間でも見て取れた。鳥海がシュートを打ってもおかしくないタイミングでも、今回絶好調で、得点を重ねている香西宏昭(3.5)や秋田敬(3.5)らがいい位置にいれば、パスを回す。ハイポインター陣がシュートを打ちやすいよう、相手選手をブロックするシーンもたびたび。ディフェンスをしながら、あまたあるプレーの中から最適解を見つけ出し、コントロールしていた。

スタミナ強化で「走れるチーム」に

スタミナも驚異的だった。「どの試合も、最後までこだわってディフェンスできた」との言葉通り、連戦で疲労がたまっているはずの予選リーグ最終戦でも運動量は落ちなかった。京谷ヘッドコーチも自信をのぞかせる。

「鳥海には、運動量を求めてきた。また、鳥海をはじめ選手たちには、40分間8試合フルで出場できるスタミナをつけろといってきた。どこよりも走れるチームになっている」

これからいよいよメダルへ向けた戦いが始まる。鳥海はきっとマークされる。それでも鳥海なら、ディフェンスからいい流れを作れるはず。勝負は最後の1秒まで分からない。これまで以上に目が離せない。

edited by TEAM A
text by Masae Iwata
photo by AFLO SPORT

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