パラリンピックとどう違う? 「きこえない・きこえにくい人のためのオリンピック」デフリンピックの基礎知識

最近、ニュースなどで見聞きする「デフリンピック」。夏季、冬季それぞれ4年に一度行われる「きこえない・きこえにくい人のためのオリンピック」だ。
どんなアスリートが出場できる?
身体障がい(視覚障がいを含む)のある選手と知的障がいのある選手がそれぞれのカテゴリーで競い合う「パラリンピック」、知的障がいのある人たちが参加する「スペシャルオリンピックス」とは、出場する選手の障がいの種類が異なり、「デフリンピック」は聴覚障がいのある選手が出場する。
デフリンピック(Deaflympics)のデフ(Deaf)は、英語で「耳がきこえない」という意味。デフとオリンピック(Olympics)を合わせるとデフリンピックになるというわけだ。
パラリンピックと同じように、全員が公平にプレーするための参加条件もある。
デフリンピックは、きこえる一番小さな音が55デシベル*(ふつうの話し声がきこえないレベル)以上の人が参加できる。
*デシベル(dB)は音の大きさの単位。数字が大きいほど音が大きい。
競技におけるルールは、オリンピックとほぼ同じだが、競技場で補聴器などの使用は禁止。たとえば日常で補聴器を使用している選手は補聴器を外し、選手全員が公平にきこえない立場になって競技を行うのだ。
目でわかる工夫も
耳のきこえない人のために、目でわかるさまざまな工夫がされているのも、他の国際スポーツ大会とは異なる特徴だ。
国際手話による競技運営のほか、「スタートランプ」でスタートを知らせたり、旗を使って合図を送ったりする情報保障はデフリンピックならでは。
音のない世界で、選手たちはどう情報を得て、仲間に必要な情報をどう伝えるのか。聴覚障がいのあるトップアスリートによる、研ぎ澄まされたプレーの数々は、デフリンピックの最大の見どころかもしれない。
なお、東京2025デフリンピックでは、選手や観客の案内時に多言語翻訳タブレットが使用されるほか、観客席などにも手話CGやテキスト表示されるディスプレイが設置されるという。
大会は、東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシーを引き継ぎ、スポーツの力ですべての人が輝くインクルーシブな街・東京の実現に貢献することを目指している。
東京2025デフリンピックって?
国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)が主催するデフリンピック。実は、第二次世界大戦(1939~1945年)後に始まったパラリンピックよりも歴史が長い。
第1回は、1924年にパリ(フランス)で開催。東京2025デフリンピックはデフリンピックが開催されてから、100周年の記念すべき大会になる。
東京2025デフリンピックの正式名称は「第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025」。2025年11月15日(土)から26日(水)まで12日間にわたり、70~80の国と地域から、約3000人の選手が参加予定だ。
陸上、バドミントン、バスケットボール、ビーチバレーボール、ボウリング、自転車(ロード・マウンテンバイク)、サッカー、ゴルフ、ハンドボール、柔道、空手、オリエンテーリング、射撃、水泳、卓球、テコンドー、テニス、バレーボール、レスリング(フリースタイル・グレコローマン)の21競技が行われる。
日本代表は前回のカシアスドスル(ブラジル)デフリンピックでは、水泳などで金メダル12個を含む30個のメダルを獲得した(編集注:選手団は新型コロナウイルス感染拡大の影響により大会途中で出場辞退)。
前々回のサムスン(トルコ)デフリンピックでは、陸上の男子4×100mリレーやバレーボール(女子)が金メダルに輝いており、東京2025デフリンピックでも金メダル獲得が期待される。
入場は無料。東京体育館、東京アクアティクスセンター、有明テニスの森など東京2020オリンピック・パラリンピックと同じ会場で行われる競技もあり、コロナ禍でパラリンピックの観戦機会が失われてしまった人が、国際スポーツ大会の雰囲気を感じられる機会になるはずだ。
日本初開催のデフリンピック。日本代表選手団のメダルラッシュとともに注目を集めそうだ。
text by Asuka Senaga
photo by X-1