視覚障がいの方は点字ブロックが無い場所はどう歩く? いますぐできるサステナブルな行動【応用編】

2020.12.14.MON 公開

今すぐ私たちができるサステナブルな行動って?
2015年に国連で持続可能な開発目標(SDGs)が採択されてから、昨今ますます注目を浴びているサステナブル(持続可能)への取り組み。企業はもちろん個人レベルでも、環境へ配慮した暮らしなど意識が高まっている人が多いですよね。
でも実は、環境への取り組み以外にもまだまだできることがあるんです!
そこで本シリーズでは、SDGsの大原則である「誰一人取り残さない」サステナブルな暮らしを作る一歩として、誰でもできる簡単なアクションをご紹介していきます。

最終回では、視覚に障がいがある人が普段どんなシーンで困ることが多いのか?をご紹介していきます。教えてくれるのは、【導入編】【実践編】に引き続きパラサポの「あすチャレ!Academy」講師であり、ご自身も視覚に障がいのある原口淳さん。皆さんの何気ない配慮がトラブル回避につながることがあるようです。

▼今回の『サステナビリティアクション』【応用編】
視覚障がいがある方へのスマートな対応シチュエーション
1.電車の乗り込むとき
2.街中の横断歩道や点字ブロックがないところ
3.トイレや買い物のとき

視覚障がいの方は電車に乗り込むタイミングが、実はよくわからない!

声をかけてもらえると嬉しいのはこんなシーン・・・
 ①周囲の音が聞き取りづらいとき
 ②気づかずに危険な場所を歩いているとき
 ③電車に乗り込むとき

ライター 街中で視覚障がいのある方を見かけた時に、明らかに道に迷っていたり場所を探していたりする場合は声をかけやすいですが、他にはどんな時にサポートがあると良いでしょうか?

原口さん 特に全盲の人は、足音や車、音響信号など、周囲の音を頼りに歩いているので、風が強い日や雨が降っている日、他にも工事現場の近くなどは、音が聞き取りづらくて困ります。

ライター そういう状況のときは声をかけたほうがいいですか?

原口さん ただ歩きづらいだけでなく危険なので、声をかけてもらえると嬉しいですね。特に、風が強いと真っ直ぐ歩いているつもりでも風にあおられて方向感覚が鈍ったりもするので、通い慣れた道でもサポートをお願いすることがあります。

ライター 駅のホームなどはいかがでしょうか?

原口さん 全盲である僕個人の意見ですが、慣れている駅であってもラッシュ時は避けるようにしています。歩きにくくて危険ということもありますけど、人混みや満員電車は、かなり神経を使うので正直しんどいという理由が大きいですね。

ライター 原口さんも、駅のホームに設置されている点字ブロックを使って歩きますか?

原口さん 一人のときは、できるだけホーム内では移動しないようにしていますが、どうしても歩かなければならないときは、点字ブロックの内側を歩きます。点字ブロックって、ホームの端(線路側)にあるから結構危険なんですよ。でも、真っ直ぐ歩く際の指標にはなる……。便利だけどリスクもあるのが、駅の点字ブロックですね。

ライター よく考えてみると、たしかに危険ですね。

原口さん もし、ホームから落ちそうだったり、危険な状況でしたら、命最優先ですぐに手や腕を引いていただけると助かります。

ライター 他に電車を使うときにあるとうれしいサポートはありますか?

原口さん ほとんどのことは白杖で把握できているのですが、電車から降りる人がいる場合は、どのタイミングで乗り込んだらいいかよくわからなかったりするので、そういう時にタイミングを教えてもらえると嬉しいですね。それと、ホームと電車のあいだが極端に離れていたりする場合も、ちょっと声をかけてもらえると安心できます。

ライター 車内では席へ誘導したほうがいいですか?

原口さん それぞれに安心できる乗車スタイルがあると思うので「座りますか?」と聞いていただけるといいと思います。

危険! 視覚障がいの方がつられて道路に出てしまうので、信号無視は絶対にやめよう

ちょっと不安を感じるのは、こんな場所・・・
 ①横断歩道
 ②点字ブロックがない場所
 ③初めて訪れる場所

ライター ちょっと気になったのですが、そもそも信号に音響装置がついていない横断歩道を渡る時は、何で状況を判断しているのですか?

原口さん 基本的に、他の人の足音や車の音など周囲の音で判断します。なので、信号無視する人がいると、その人につられて僕らも渡ってしまう可能性がありますね。

ライター それはすごく危険ですね!

原口さん 自分も誰かの指標になっているということをちょっと意識してもらえると嬉しいですね。

ライター 逆に周囲に人がまったくいないときは?

原口さん 目の前を横切る車や、自分と同じ向きで走る車などの音を確認して渡ります。『車の音がしない=渡れる』と判断するほかないので……。

ライター 最近の電気自動車は音がほとんどしないので怖くないですか?

原口さん そうなんですよ! 最近は、そう簡単に判断できなくなってきて。だからこそ、声をかけてもらえるとすごくありがたいですね。「今、渡れますよ」とかそれだけでも十分なので。

ライター 情報を伝えることが大切なんですね! ぜひ実践してみます。それから、街中には点字ブロックがないところもたくさんあると思うのですが、そんなときは何を指標にしていますか?

原口さん 道と並行してあるものをひとつの指標にしていますね。例えば、道路やホームは水捌けをよくするために少しだけ傾いているんですけど、その傾斜で方向を判断することもありますし、車道と歩道の段差や塀などを伝いながら歩くこともあります。

ライター 初めて行く場所は事前に下調べもされますか?

原口さん はい。下調べをしていても結構時間がかかってしまいますね。本当は、予定が決まった段階でガイドヘルパーを依頼するのが良いのですが、申し込みから利用まで時間がかかるので、無計画派の僕は迷うことを前提に一人で出かけます(笑)。

ライター 原口さんと同じように気軽に出かけたい方もきっと多いと思うので、これからは私ももっと周囲を意識してみたいと思います。

コツさえ分かればかんたん! 視覚障がいの方へのトイレや買い物時のサポート

トイレや買い物時のサポートのコツ
 ①トイレは同性に介助してもらうのが基本
 ②多目的トイレが必ずしも必須ではない
 ③お金のやりとりは慎重に

ライター 生活の中でサポートがほしいシーンについて、もう少しお聞ききしたいのですが、たとえば外出中のトイレはどうされていますか?

原口さん 一応、街中でトイレに行きたくならないように気をつけてはいるのですが、やはり必要となった場合は、誘導してもらうことも多いですね。ただ、デリケートなことなので同性介助が基本になります。

ライター その際の注意点はありますか?

原口さん まずはどうしてもらいたいか聞いて、同性ならトイレの中まで連れて行ってもらえれば大丈夫です。どうしても異性しかいない場合は多目的トイレへ案内してください。多目的トイレなら入り口まで案内できますし、中の配置も大体決まっているので説明がなくても迷いにくいと思います。

ライター ちなみに視覚障がいのある方にとっては、普通のトイレと多目的トイレ、どちらが使いやすいですか?

原口さん 荷物があるときは多目的トイレのほうが使いやすかったりするのですが、視覚に障がいがある人にとっては逆に広すぎていやだという人も結構いるので、どちらがいいか本人に確認してから誘導してあげてください。ちなみに、盲導犬が一緒のときは、犬のトイレを済ませたりちょっと水をあげたりもできるので、僕は積極的に多目的トイレを使っていました。

ライター なるほど。また、買い物などはどうされているのでしょうか?

原口さん そもそも全盲の場合は、一人で買い物ができないんですよ。慣れている店でも、細かい陳列などが変わったりするので、誰かと一緒に行くか、店員さんにサポートしてもらわないと難しいですね。弱視の方は、一人でも大丈夫かどうかをある程度自分で判断して店に入ると思います。

ライター とはいえ弱視の方も、店が暗いと値札が見えづらい場合もありそうですよね。

原口さん そうですね。もし見えなくて困っているようなら、声をかけて店員さんのところへ誘導していただけると助かると思います。

ライター では、お店での支払いの時はいかがですか?

原口さん おつりを渡すなどお金のやり取りをする時は、お札と小銭を分けて渡してもらえると分かりやすいのですごく助かりますね。ちなみに、こちらでもある程度把握しているので、財布からお金を取り出したりはサポートしなくて大丈夫ですよ。

ライター お財布に触れるとトラブルの元にもなりやすいので、気をつけたいですね!


真面目でシャイな人が多い日本人にとって、見ず知らずの人に声をかけたり手を貸したりするのはまだまだ勇気が必要かもしれません。それでも行動を起こす人が一人、二人と増えれば、いずれそれが当たり前の光景になるはずです。なかなか踏み出せないという人も、まずは相手を理解し、見守ることから始めてみてはいかがでしょうか。それがSDGsの掲げる「誰一人取り残さない」サステナブルな暮らしへの大切な一歩になるはずです。


<アクションシリーズ>記事はこちら↓
■視覚障がい者編

【導入編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/29465
【実践編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/29547
【応用編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/29557
■車いすユーザー編
【導入編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/28798
【実践編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/28895
【心がけ編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/28916

text by Uiko Kurihara(Parasapo Lab)
illustration by KOH BODY

『視覚障がいの方は点字ブロックが無い場所はどう歩く? いますぐできるサステナブルな行動【応用編】』