サッカー元日本代表と一緒に!サッカーしながら防災・減災を学べるディフェンス・アクション

2023.01.17.TUE 公開

地震や台風、大雨による水害など災害の多い日本では、防災訓練や災害への備えは欠かせない。とはいえ「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ではないが、備蓄していた食料の消費期限がいつの間にか切れていたり、地域の防災訓練は人が集まらなかったり、といった話をよく耳にする。そんな中、楽しく防災・減災を学ぶことができる『ディフェンス・アクション』というワークショップを企画運営しているHITOTOWA INC.の原田稜さんにお話を伺った。

サッカーを指導するのは、元日本代表など一流アスリート

HITOTOWA INC.シニアプランナーの原田稜さん

『ディフェンス・アクション』とは、サッカーやフットサルを通して、防災・減災を楽しく学ぶことができるワークショップ。これを開発、運営しているHITOTOWA INC.では、「スポーツ×社会課題解決」を手掛けるソーシャルフットボール事業を行っていて、原田さんはそこで『ディフェンス・アクション』を担当している。

「HITOTOWAは、都市の社会環境問題を解決することをミッションに掲げ、『防災・減災』をはじめとする様々な社会問題にチャレンジをしています。その中でもソーシャルフットボール事業は、スポーツの力を通して、社会課題解決に貢献したいという思いで、ディフェンス・アクションを推進しています」

『ディフェンス・アクション』は1回あたり約90分のワークショップの中で

■サッカーの学び
■コミュニケーション(=共助)の学び
■防災の学び

と、3つの学びを体験できる。具体的には以下のようなプログラムが行われている。

【ファースト・アクション】災害時の初期行動を覚えるプログラム

会場となるグラウンドや体育館などを参加者が自由にジョギングをする中、災害の種類を書いたボードが提示される。参加者はボードに書かれた内容に応じて、最適な行動をとる。たとえば、「地震」と書かれていたら、頭と目を守りながらその場にしゃがむ。「津波」と書かれていたら、高い場所へと避難する。

【パス・ストック】パス練習を通じ、災害時に必要な備蓄品を確認できるプログラム

事前に配られた災害時に必要な備蓄品リストを暗記。その後、パスを1回するたびに、暗記した備蓄品の名前を言う。備蓄品の名前をきちんと言えて、なおかつパスができればポイントが加点され、合計ポイントを競うチーム戦。

【トラップ・スリー】ボールを止める基礎技術「トラップ」の練習と、地域の防災ルールを学べるプログラム

災害に関する問題が出題される。答えは、配られた防災ハンドブック(その地域や会社などで使用しているもので毎回異なる)の中にあり、それを制限時間内にチームで協力して見つけ出す。答えが見つかったら、スタッフのところへ行って3択の中から正解だと思うカードを貰って、もとの場所へ戻ってくるのだが、その往復が面白い。
行きは3人で手を繋いで輪になりドリブルでボールを運ぶ。その後スタッフが投げたボールを一人ずつトラップし、カードを持ったまま、帰りは3人背中合わせで腕を組み3人の中心にボールを乗せて落ちないように戻る。全チームが元の場所に戻ったところで答え合わせをする。
※3人がトラップをすることから、トラップ・スリーと名付けられた。

子どもたちにサッカーを教える元日本代表の播戸竜二氏

「いずれもパスやトラップを教えてくれるのは、先程も言ったとおり、元日本代表やJリーグのOBたちなどですから、防災や減災に全く興味がなく、サッカーができるということで参加してくれる人もたくさんいます。今までの防災訓練ですと、義務でやっている、仕方なく参加しているという人も多く、自由参加の場合は人が集まらない。集まったとしてもなかなか学びや自分ごとにすることができないといった課題がありました。そうした課題を解決するためにスポーツの力を活用しようというわけです」

東日本大震災で目にしたスポーツの力がきっかけに

東日本大震災で津波の被害があった陸前高田市。そこにある多世代の憩いの場として人が集まるグラウンドでディフェンス・アクションを行った際の様子

『ディフェンス・アクション』が始まったきっかけは2011年の東日本大震災。前年の12月にHITOTOWAを設立した代表の荒氏が、復興ボランティアとして東北に通う中で、地元の子どもや地域の方々とサッカーをする機会があり、被災中ではあるものの、サッカーをしている時のみんなの笑顔にスポーツの力を感じた。そこで防災・減災を会社の軸のひとつとしてやっていこうと考えると同時に、スポーツの力を防災に役立てることができないかと、『ディフェンス・アクション』を開発したのだそうだ。その後、震災復興のチャリティイベントや企業の社員研修として実施されたり、行政のイベント、防災フェス、まちの防災訓練などでも活用されたりするようになった。

「最近では、品川区の戸越銀座商店街さんと、商店街が実施している『防災街づくりフェア』の一環として『ディフェンス・アクション』を実施しました。この体験をきっかけに、自宅の防災グッズを見直したとか、こんな物も用意しておいた方がいいなんて知らなかったので、帰りに買って帰りますなどという声をいただくと嬉しいですね。社会課題って『解決したほうがいい』とは思っているのに、なかなか取り組むことができないという人が大半だと思います。そういう人たちをどうやる気にさせていくかを考えたときに、スポーツを掛け合わせることによって社会課題に対するハードルを下げることができるというのが、『ディフェンス・アクション』の一番の価値なんじゃないかなと思ってます」

戸越銀座商店街主催のイベントで、子どもたちにサッカーを教える元日本代表の石川直宏氏

過去に行ったディフェンス・アクションの動画や画像を見せてもらったが、子どもも大人も時に笑顔で、時に悔しそうにと、さまざまな表情を見せていた。通常の防災訓練では決して見られない光景だ。

「以前、神奈川県のあるマンションのプロジェクトの中で、防災サークルをつくる動きがあり、マンションの住民の方々を対象に『ディフェンス・アクション』を実施しました。『防災サークルをつくりたい住民と、他の住民のみなさんをどう巻き込んでいけるかが大事なポイントですね』という話があがり、これまで防災に興味がない方にもお声がけさせていただきました。実施後は、防災は大事だ、防災に取り組もうという話になり、今ではマンションの防災訓練を住民の方々が自ら進んで企画をするなどの動きが生まれているようです」

災害時には、隣近所で助け合う共助が大事だと言われているが、都心では隣近所との交流がほとんどないのが現状だ。しかし、『ディフェンス・アクション』で楽しみながら防災や減災に触れることで、人々に繫がりが生まれ、共助の芽が芽生えているのだ。

「最近はリピーターじゃないですけど、来年もぜひと声をかけてくださる自治体なども増えています。僕としては1回きりで終わりではなく、その地域の方達と、5年、10年とかけてしっかりと防災に取り組み『このエリアやここの住む人たちは防災にちゃんと取り組んでいるよね』と全国に知れ渡るような地域をつくりたいと思っています」


防災訓練というと、笑ってはいけない、真剣に、真面目に、というのが当たり前だった。しかし、防災や減災をもっと身近なものにできるなら、笑顔や楽しさという要素があってもいいのかもしれない。休日に家族揃ってディフェンス・アクションに参加するのが楽しみ、そんな新しい時代の本当に役立つ防災訓練があってもいいのではないだろうか。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:HITOTOWA INC.

HITOTOWA https://hitotowa.jp
social football COLO https://colojapan.asia

『サッカー元日本代表と一緒に!サッカーしながら防災・減災を学べるディフェンス・アクション』