性別混合、世代の壁ナシの次世代バレーボール! 選手年齢の合計220歳以上のルールがもたらす価値とは

2025.05.02.FRI 公開

競技スポーツと言えば、試合は男女別で、年齢が若いことが体力的にアドバンテージになるケースが多いというイメージがある。しかし、“男女混合”“コート上の6人の選手(男女各3名)の年齢の合計が220歳以上”を参加資格とするバレーボール競技があることをご存じだろうか。このユニークな競技「Total220」を生み出し、日本、そして世界へ広げようとしている日本混合バレーボール連盟に、その目指すところについて伺った。

男女混合バレーボールは日本発祥の競技スポーツ

2020年3月5日~8日に千葉県館山市で開催された第1回混合バレーボール世界大会

Total220は、“コート上の6人の選手(男女各3名)の年齢の合計が220歳以上”であることが参加条件。単純に220を6で割ると、36.666……歳となる。だからといって、36歳前後の選手ばかりになるとは限らない。50代の父親に、10代の娘が同じチームに加わって相手チームと戦うというケースも。そんなTotal220がユニークな競技であるのはもちろんなのだが、そもそも男女3人ずつのチームで行われる混合バレーボールに、あまり馴染みがないという読者も少なくないのではないか。実は日本発祥の競技なのだ。現在さまざまな大会を開催して活動を広げている日本混合バレーボール連盟の代表・大江芳弘氏こそ、この混合バレーボールの生みの親なのだ。

「私が高校生の時、都立高校に通いバレーボール部に所属していたんですが、当時の都立高校の先生方が頑張って、都立高校だけのバレーボール大会を開催してくれました。当時220ぐらいのチームが参加した中で、私のチームが優勝。しかも、私は最優秀選手賞をもらうことができたんです。とてもハッピーな気持ちになって、高校を卒業して大学に進学してからも母校のコーチを続け、その活動をもっと広げていきたいという気持ちが強くなりました」(大江氏、以下同)

それは、今から20年ほど前のこと。ちょうどインターネットの黎明期だった。大学生だった大江氏はインターネットを利用して参加者を募り、地域年齢に関係なく、誰もが参加できる6人制の男子バレーボール大会を開催したのだという。

「最初男子の大会を開催し、70チームほど集まりました。次に6人制女子の大会を開催したんですが、男子ほどチームが集まらないんです。だったら男女混合、ミックスの大会をやったら面白いのではないかと考えました。当時、レクリエーションとして男女混合でやっているケースはあったんですが、競技スポーツとしてルールをガッチリと決めてやってみたら、これがウケてたくさんの人たちに楽しんでいただけました」

チーム年齢を合計220歳以上にすることでメンバーが多様に

手前のチームは、右から母親、父親、息子の家族を含むチーム。家族の絆がチームワークに活かされる

大江氏は、混合バレーボールを日本全国に広めるためにNPO法人を設立し、活動を進めていった。

「当初から我々の混合バレーボールのテーマは、“男女同数”ということ。そして、混合スポーツは女性が活躍できるような仕組みを作って行かねばならないと思っています。男女は体格差があるので、スポーツではどうしても男子の方が女子よりも有利なのは当たり前ですが、その中でいかに女性が活躍しやすくなるか、ルールの決定も含めいろいろ工夫しながら今日に至っています」

オリンピックの競技化を夢として掲げ、混合バレーボール大会をさまざまな場所、さまざまな形で開催してきた大江氏は、年齢の制限を設けた大会を開催すると面白いのではないかと考えるようになる。

「最初にオーバー40やオーバー35という、年齢が40歳以上、35歳以上というルールの大会を開催したんですが、当事者は良くても、若い世代にとっては楽しくないよねと思いました。では、オーバーではなくトータル、チームの選手の年齢の合計にしたらどうかと考えたんです」

手始めに、チームの選手の年齢がトータルで200歳以上を参加資格とする大会を開催した。しかし、200歳だと平均が33歳となって一般的な大会とレベル的にはあまり変わりない。試行錯誤の上、220歳以上という条件に落ち着いた。

「スポーツをしようと思うと、年齢が高いとどうしても不利になりがちです。“やっぱり若い子には勝てないよね”と。私は、そこに一石を投じたい。年齢は武器になるという考え方が世界中に浸透して、バレーボールに限らず、さまざまな競技でTotal220、あるいはそれ以上の発想が生まれてくると、スポーツの裾野はもっともっと広がって行くのではないでしょうか」

年齢や性別が制約にならず、みんなが楽しめる

年齢・性別さまざまな混合チームでの勝利の喜びはひとしおか

大江氏の話を聞いていると、たびたび“楽しい”“楽しくない”という言葉が発せられる。それはいかにスポーツを楽しめる環境を整えるか、いかに楽しんでくれる人を増やすかということを、日々考えている証しではないのだろうか。

「年齢が上がってくると、“戦力になれないから試合は辞退するよ”とか“大会に出ても面白いと思えない”という声が少なからず出てきます。ですがTotal220のような大会があれば、“年齢を稼ぐためにチームに入ってよ”などと誘うことができますよね。Total220は、年齢関係なくみんなで楽しめる、そういう競技に近づいているなという手応えは感じています」

年齢が上がって体力が衰えても、その人自身の他の強みや良いところを活かしてチームに貢献できる。Total220で年齢が不利にならないのは、そうした側面があるからだ。

「バレーボールでは協調性が大事なんですが、こと男子の話で言うと、20代と40代を比較すると、40代の男性は包容力がある方が多いからか、40代男性のいるチームは雰囲気がよくなる傾向があります。Total220では、年齢や経験と共に磨かれるパーソナリティも価値になるんです。年齢の制約のなかでどういったチームを編成するのかの戦略も、この競技特有の面白さだと思いますね」

スポーツは心身の健康増進に役立つのは周知の事実と言えるが、大江氏が言うように年齢や性別によるハードルは少なからずある。

「よく生涯スポーツなどと言われるように、老若男女誰もが楽しめるスポーツの重要性は高まっています。Total220の考え方は、どのようにして生涯スポーツを創造していくか、みなさんをどうやって生涯スポーツへと導いていくかのひとつの枠組みの提案になるのではないでしょうか。我々はこの活動で得た経験を元に、男女混合、ミックスジェンダースポーツのあるべき方法、こういう風にやったら楽しいよということを提唱していきたいなと思っています」


競技スポーツは、相手に勝つために努力することで高揚感や達成感などが生み出される貴重な場だ。Total220はそれを一歩進めて、誰でもそこに参加でき、喜びを共有することによって、そのチームならではのコミュニティを作るような、より付加価値の高いスポーツのひとつのかたちを提言しているのではないだろうか。

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
写真提供:日本混合バレーボール連盟

『性別混合、世代の壁ナシの次世代バレーボール! 選手年齢の合計220歳以上のルールがもたらす価値とは』