東京辰巳アイスアリーナで初開催! アイスホッケーの全国クラブ選手権大会で長野サンダーバーズが大会8連覇

2025.12.10.WED 公開

冬のパラリンピック競技・アイスホッケーのクラブチーム日本一を決める第34回パラアイスホッケー全国クラブ選手権大会が12月6日と7日、今夏にオープンした東京辰巳アイスアリーナで行われ、長野サンダーバーズが大会8連覇を飾った。

9月に開業した東京辰巳アイスアリーナで初めて開催

パラリンピック出場権を得た日本代表戦士も集結!

出場は5チーム。日本が11月にミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会の出場権を獲得したばかりということもあり、選手たちは熱気あふれるプレーを披露した。

6日の第1試合は、東海アイスアークスとロスパーダ関西が対戦。河原優星が2得点の活躍を見せた東海アイスアークスが、シュートアウトまでもつれ込んだ大接戦を4-3で制した。ロスパーダ関西は日本代表チームの若き中心選手でもある伊藤樹の2得点や初出場の山田惟月のゴールで食らいついたが最後に屈した。

第2試合は北海ベアーズと東京アイスバーンズの対戦。中村俊介が2得点を決めた東京アイスバーンズが、第3ピリオドに1点を返されたものの2-1で逃げ切った。

第3試合は長野サンダーバーズと第1試合を制した東海アイスアークスの対戦。長野サンダーバーズは立ち上がりの42秒に先制ゴールを決めたエースの熊谷昌治が計4得点の活躍。対する東海アイスアークスは第3ピリオドに鵜飼祥生と河原がゴールを決めて1点差まで詰め寄ったが及ばず、5-4で長野サンダーバーズが勝利した。

日本代表クラスを多数擁する長野サンダーバーズ

大会2日目の第1試合は初日の試合で敗れた北海道ベアーズとロスパーダ関西の対戦となった。早朝7時開始の試合は、立ち上がりの41秒にロスパーダ関西の伊藤が一人で持ち込んでシュート。いきなりの先制パンチを食らった北海道ベアーズは、6分に森崎天夢がシュートを決めて1-1に追いつくと、第2ピリオドに試合を大きく動かす。
日本代表でもベテランコンビとして活躍する須藤悟三澤英司、そして同じく先の最終予選の日本代表である森崎の3人がコンビネーションプレーを披露して3人で4得点し、一気にロスパーダ関西を突き放す。北海道ベアーズは第3ピリオドにも2点を加え、7-4で勝利。ロスパーダ関西は伊藤を中心に多くのチャンスを作り、シュート数では29本対21本で相手を上回ったが及ばなかった。

試合後、北海道ベアーズの三澤は「朝が早く、前日の疲労もあったので出だしは固かったですが、点数が入ってからはいつも通りの伸び伸びしたプレーができたと思います」とホッとした様子を見せた。

北海道ベアーズの三澤

この試合で3得点の三澤は、同じく3得点した20歳の森崎について「今後は彼が中心のチームになると思っているので、彼の潜在能力を引き出せるようなプレーや助言をしてもっと強いチームにしていきたい」と語った。

また、三澤は「森崎くんは耳が(あまり)聞こえず、周りから声かけをしても気づきにくいというハンデがありながらもこれだけできる。視野が広がれば、もっと味方を活かせるプレーや周りを使うプレーができるので、もっと伸びていくと思っています」とも言った。

三澤のこの言葉を聞いた森崎は「本当は昨日の試合に勝って決勝に行きたかったけど、僕のミスで勝てませんでした」と悔しさをのぞかせたが、パラリンピックに向けては「残り3ヵ月間で視野を広げて周りを見ることや、1対1での駆け引きを身につけてパーフェクトな選手になりたい」といきいきとした表情で抱負を述べた。

ロスパーダ関西の伊藤

一方、敗れたロスパーダ関西のエース・伊藤は悔しさを呑み込みながら「楽しめてよかった。それが一番。みんな頑張っていて、心が温まるような試合でした」と言った。

伊藤は小学生のときに競技を始めた当初、スレッジの操作に苦労したことを思い出し、「自分は障がいが重くて一人で起き上がれず、下手くそでしたが、それでもここまで来られるので、みんな頑張ってほしいです」としみじみ語っていた。

東京アイスバーンズが王者に挑んだ決勝戦

2日目の第2試合は、長野サンダーバーズと東京アイスバーンズによる決勝戦が行われた。

決勝のカードは長野サンダーバーズと東京アイスバーンズ

第1ピリオドの序盤は互いに守備が機能し、相手にゴールを割らせない。均衡が破れたのは8分。長野サンダーバーズが吉川守と熊谷のダブルアシストから新津和良が決めて先制した。

「日本代表トリオ」の連携で口火を切った長野サンダーバーズは、第2ピリオド開始からの2分間で3得点を決めるなど一挙4得点。5-0までリード広げたところで東京アイスバーンズの金子幹央に1点を返されたがその後も危なげなく試合を進めていく。

堀江はFWとして出場

第3ピリオドの終盤、東京アイスバーンズはキャプテンの石川雄大と、今大会はFWとして出場した、日本代表GKの堀江航がそれぞれ1得点して気を吐いたが追撃はそこまで。6-3で勝利を収めた長野サンダーバーズが大会8連覇を飾った。

優勝した長野サンダーバーズ

試合後、熊谷は「決勝はチームのみんなで戦えて、それぞれの選手が機能した。昨日とは違う勝ち方ができたのかな」と満足そうに振り返った。初日の東海アイスアークス戦では5点中4点が熊谷のゴールだったが、決勝では新津の3得点を筆頭に、自身を含めて3選手が得点を決めていた。

また、長野サンダーバーズへ移籍してから初出場だった永井涼太は第2ピリオドにチーム5点目を決め、「長野チームでの初の大会で勝利できて得点を決められてよかったです」と笑顔を浮かべた。

永井は「アイスホッケーはパラの中でも当たりが強くて迫力のあるスポーツだと思うので、それをもっと皆さんに広めていきたいです」と意欲的だ。

一方、惜しくも準優勝に終わった東京アイスバーンズだったが、金子が「東京チームとして出られたのは久々。少ないメンバーでなんとか準優勝できたのでよかったと思います」と言うように実りのある大会となったようだ。

トッププレーヤー同志の激しい攻防戦が大会を盛り上げた

クラブチームの日本一を決める大会は長野サンダーバーズの優勝で幕を閉じた。アイスホッケーの次の“大一番”はミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会。東京アイスバーンズの石川が「(パラリンピック出場権獲得で)注目度が上がるので気を引き締めて戦いに行かなきゃいけないなと思う反面、この競技は見ていて面白いと思うので、より注目してもらえるように頑張りたいです」と抱負を述べると、日本代表のキャプテンでもある長野サンダーバーズの熊谷は「パラリンピックの出場権を取っていなければ、本当に寂しい大会になったと思います。皆さんに見てもらうことが僕たちのモチベーションになりますし、今回は東京の会場でできたことも嬉しいことでした」とコメントした。プレーする側も見る側も3ヵ月後を意識しながらの熱い2日間の戦いだった。

長野サンダーバーズの熊谷(左)

text by TEAM A
photo by Hiroyuki Nakamura

『東京辰巳アイスアリーナで初開催! アイスホッケーの全国クラブ選手権大会で長野サンダーバーズが大会8連覇』