Bリーグ・アルバルク東京の会場がオレンジ色に彩られた日。ファンの心を動かした「オレンジリボン活動」とは

2026.04.06.MON 公開

2025年10月に東京・お台場エリアの青海に完成したばかりの「TOYOTA ARENA TOKYO」が、同年11月、オレンジ色に染まった。これは同施設をホームアリーナとするプロバスケットボールクラブ・アルバルク東京が行った「オレンジリボン活動」の演出の一環。昨年で5回目となったこの取り組みにかける、アルバルク東京の思いを聞いた。

オレンジリボン活動って何?

2025-26シーズンのオレンジリボン活動のバナー。活動の中心となる#9安藤周人選手(左)、#25福澤晃平選手(右)のイラストもすっかりお馴染みに

こども家庭庁の発表によると、2023年度に虐待によって死亡した子どもの数は65人。死亡には至らなかったものの、虐待によって命にかかわる受傷、衰弱の危険性にさらされた子どもは47人だった。これは表面化した数字なので、実際はもっと多い可能性もある。こうした悲劇をなくし「子ども虐待のない社会の実現」を目指すのがオレンジ色のリボンを象徴とした「オレンジリボン活動」という市民運動だ。

アルバルク東京はこの活動を1人でも多くの人に知ってもらい、児童虐待を根絶しようと、2021年から活動をスタート。こども家庭庁が11月を「オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン」の期間と定めたことから、毎年11月に啓発活動を実施している。

昨年は、これまでも連携してきた東京都の職員、フォスタリング機関(里親になることを検討する段階から、里親登録後まで、継続的にサポートする機関)の職員たちと一緒に、「オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン~里親制度の普及・啓発とともに、すべての子どもに安心を~」と題した活動を実施した。

まず、2025年11月にTOYOTA ARENA TOKYOで行われたアルバルク東京のホームゲームでは、アリーナの外観を活動のテーマカラーであるオレンジ色にライトアップ。会場内にある、高精細の巨大なセンターハングビジョンと、国内アリーナ初となる2層のリボンビジョンでもオレンジ色をベースとしたデザインのメッセージを発信した。

会場内のビジョンもオレンジに

その他にも、選手はオレンジ色のバスケットボールシューズ(以下、バッシュ)や靴紐を身につけて試合に出場し、スタッフやチアリーダーもオレンジリボンを着けていた。

オレンジ色のバッシュを履いてプレーする#9安藤周人選手(左)、#25福澤晃平選手(右)

また、11月1日、2日、16日のホームゲームでは会場内のALVARK Willブースにてオレンジリボンと里親制度に関するクイズを実施。参加者にはオリジナルステッカーやオレンジリボンなどがプレゼントされた。クイズに全問正解すると、活動の中心になっている#9安藤周人選手、#25福澤晃平選手のサイン入りオレンジバッシュや、オリジナルトートバックが当たる抽選に参加できるとあって、多くのファンが参加した。

活動に賛同したファンがSNSに続々とコメント

アルバルク東京マスコットキャラクター「ルーク」もオレンジリボンをつけてファンをお出迎え

こうした活動は、大変意義のあることではあるが、バスケットボールのファンには、どのように受け止められているのだろうか。キャンペーンを企画・運営しているトヨタアルバルク東京株式会社経営企画部企画室コミュニティ・SRグループの杉本咲子さんと、齋藤樹さんにお話を伺った。

「オレンジリボンの意味を知らなかった人が、クイズに参加したりする中で、初めてその意味を知るケースもあるようです。実際に『オレンジリボンには、そもそもそういう意味があったんだね』などというコメントをSNSで書いてくださる方もいます」(杉本さん)

実際にXに投稿されたファンのメッセージ

最初はオレンジリボンの意味を知らなかった人たちにも活動の回を重ねるごとに浸透していき、11月は児童虐待防止推進キャンペーン期間だと認識してくれるまでになったそうだ。

「オレンジリボンの活動は昨年で5回目でしたが、ありがたいことにファンの方々が11月になると自発的に試合会場にオレンジ色のものを身につけてきてくれるなど、年々認知度が上がっているなと思います。期間中はSNSでリポストキャンペーンを実施していますが、公式SNSのキャンペーンポストをリポストする際に『オレンジリボンはこれからもずっと継続してやってほしい』といった、好意的なコメントをつけてくださる方が多くて、活動の輪がだんだんと広がっている実感はあります」(齋藤さん)

子どもの虐待をなくす、あるいは虐待から子どもたちを守る方法はさまざまで「里親制度」もそのひとつ。虐待のほか、親の病気などの理由で自分の家庭と暮らせない子どもは、東京都内で約4,000人いるそうだ。アルバルク東京は、単に児童虐待防止を訴えるだけでなく、そんな子どもたちを救う里親制度をもっと知ってもらおうという取り組みもしている。

オレンジリボン活動でプレゼントされたグッズの数々

「里親制度を聞いたことはあっても、具体的な仕組みまで理解している人は多くありません。そういう方にも里親制度を知ってもらうために、クイズに参加してくれた方には里親制度のパンフレットを配ったり、東京都里親制度普及啓発キャラクター「さとぺん」と、アルバルク東京マスコットキャラクター「ルーク」のコラボグッズをプレゼントしたりといったこともしました」(杉本さん)

まずは知ってもらうことから、とは言うものの、ただパンフレットを置いておくだけでは、手にとってもらうことは難しい。しかし、こうして応援しているスポーツチームや推しの選手が発信することで、今まで届かなかった人にも情報が届くようになる。実際、この3日間のホームゲームだけで約1,900人にパンフレットなどを配ることができたそうだ。

スポーツの力が人々の心に種を蒔く

安藤選手、福澤選手の思いに共感して、11月のホームゲームではオレンジの靴紐をつけてプレーした#13菊地祥平選手(右)と#75小酒部泰暉選手(左)

アルバルク東京では、オレンジリボンのキャンペーンの他にも、乳がん検診の啓蒙「ピンクリボン活動」や食料支援を必要とする人々への支援「フードドライブ」など、さまざまな取り組みをしてきた。これらは2021年にアルバルク東京が立ち上げた社会的責任プロジェクト「ALVARK Will」の一環で、「東京で、共に生きる人たちと幸せに暮らしていける環境をつくっていきたい」という思いから、「健康」「成長」「環境」の3つの分野に力を入れた取り組みをしている。

「食料やインフラを扱う企業は、人が生きていく上で絶対になくてはならない存在ですが、スポーツチームは必ずしもそうではないですよね。極端なことを言えばスポーツがなくても生きていけます。でも、だからこそ我々が社会的な課題に責任を持って取り組むことはとても重要ですし、それが企業価値を高めていくことにも繋がります。我々がこうした活動をすることでスポーツ好きな人に社会課題を知ってもらうきっかけになるし、社会課題に興味がある人には、スポーツチームがこんなことをやっているんだと、アルバルク東京やバスケットボールの魅力を知ってもらうきっかけになるので、とても大切な取り組みだと思っています」(齋藤さん)

オレンジリボンについて発信する#25福澤晃平選手のSNS投稿

オレンジリボン活動の中心選手である安藤周人選手、福澤晃平選手は、自身のSNSでオレンジリボンについての発信をしたり、宣材写真でオレンジ色のバッシュを履いたりと、活動期間以外でも積極的に普及をしてくれているそう。このようにアスリートやスポーツチームが旗振りをすることは、社会課題の認知においてとても有益なことだ。一方で、杉本さんはこれからの課題について考えているという。

「オレンジリボン活動についてファンの方々に『知ってもらう』という段階は毎年活動することである程度認知が拡大してきていると思うんです。ただ、その課題の本質的な解決のために何ができるのか、というのが次の課題なのではないかと考えています。今まで以上に選手・スタッフ、一人ひとりが、社会課題への理解度をあげて、次のステップに進めるといいなと思います」(杉本さん)


児童虐待の多くは家庭内で起きているため表面化しづらく、また原因も1つではなく多岐に亘るため、難しい社会課題だ。しかし、1人でも多くの人が問題意識を持ち連携することで救える命が必ずあるはず。アスリートやスポーツチームにはそうした問題意識の種を撒き、社会を変えていく力があるということを、今回の取材で改めて実感した。この記事を読んだ人の心にも1粒の種が蒔かれ、次のステップに繋がることを願ってやまない。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:アルバルク東京

『Bリーグ・アルバルク東京の会場がオレンジ色に彩られた日。ファンの心を動かした「オレンジリボン活動」とは』