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地元・愛知で大会の主役に! 車いすテニス小田凱人、アジア制覇&ロサンゼルスパラリンピック出場権獲得

まさに圧勝だった。車いすテニスの小田凱人が、地元・愛知で行われた「愛知・名古屋 2026アジアパラ競技大会」で単複2冠を達成。初戦から決勝戦まで1セットも落とさない快進撃でアジアを制し、王者の貫禄を見せつけた。同時に、日本勢初となるロサンゼルス2028パラリンピックの出場権も獲得した。
photo by Atsushi Mihara
地元開催の大会で王者のプレーを披露
小田は今大会の開催地である愛知県の一宮市出身。アジア最大の総合スポーツ大会が地元で開催されるという非常にまれな機会なだけに、小田自身も大会前から気合十分だった。
photo by Atsushi Mihara
「名古屋のいろんなところで、広告やプロモーションを見た。地域を挙げてというような大会だと思うし、いろんな人が名古屋で開かれるんだっていうのを知っていると思う」
世界ランキングで見ると小田は1位だが、トップ10に入っているアジア勢は今大会欠場の三木拓也と9位の紀珍旭(ジー・ジェンシュー/中国)だけ。アジア全体の車いすテニスのレベルはまだ高いとはいえない。それだけに、小田自身も「実力的にも負けられないし、圧倒的なっていう場所になると思う」と、2連覇は当然という認識。だからといって、油断もしていない。
「『勝てるかな』と油断して臨むのは危険。『負けるかもしれない』という危機感を持って入り、プレーしていく中で『今日は大丈夫だ』と手応えをつかむようにしている」と常々語っているように、この日も「ガンガン上げていこう」という意識で集中して試合に挑んだ。
photo by Atsushi Mihara
試合では、序盤からリターンでブレークを奪うと、強力なサーブやショットで主導権を握り、第1セットを6-2で先取。続く第2セットも威力を増したサーブとフォアハンド、そして攻撃的なネットプレーで相手を寄せ付けず、6-2で奪って圧倒した。随所で大きな盛り上がりを見せるラリーの応酬もあり、観客は間近で車いすテニスの魅力を存分に堪能した。
勝者インタビューでは、「いろんな国でプレーしてきたんですけど、一番です!」と話し、ホームの温かい声援に感謝を伝えた。
photo by Atsushi Mihara
地元への恩返し
今大会で小田が勝利とともに重きを置いていたのが、これまで自分を支えてくれた人々への恩返しだった。
photo by Takamitsu Mifune
世界を転戦するだけに、身近な人やお世話になった人々が直接見守る中で試合ができる機会は、決して多くはない。だからこそ今回は、他の大会とは一味違う特別な感情を抱いてプレーしていた。
車いすテニスを始めた10歳の頃。家族やコーチ、共に練習に励んだ先輩たちは「本気で世界1位を目指せる」と小田の可能性を信じてくれた。その存在があったからこそ「自分もいけるかもしれない」と自信を深めることができ、今につながっているという。
photo by Atsushi Mihara
競技を始めて10年。スピーチでは「10年」と口に出した瞬間、感極まり涙が溢れ出た。この特別な大会は、感謝を伝える場であると同時に、多くの人に車いすテニスを知ってもらう絶好の機会でもあった。
小田の胸には、東京パラリンピックの記憶が強く残っていた。当時、オリンピックに比べてパラリンピックのテレビ放送が圧倒的に少なかったことに悔しさを感じつつも、「観たい」と人々に思わせる魅力がなければ、メディアで扱われる価値も生まれないという現実を冷静に受け止めていたのだ。
photo by Atsushi Mihara
だからこそ小田は、まずは自らがテレビ放送に値する圧倒的なパフォーマンスを毎試合見せることが不可欠だと考えている。自分が魅せるプレーによって、それを見た子どもたちが車いすテニスに憧れて競技を始めるきっかけを作り、競技そのものをさらに大きく発展させていきたい――。地元・愛知で開催された今大会をそのための絶好の好機と捉え、小田自身も大きな期待と高揚感を胸にコートへ臨んでいた。
photo by Takamitsu Mifune
実際に、決勝の観戦チケットは早い段階で完売。地元局や無料配信プラットフォームで放送・配信された。小田が目標としていた「観てもらうためのステップ」に、また一歩近づくことができたのではないだろうか。
試合後、小田は手応えを込めてこう語っている。
「車いすテニスを普段やらない人が、試合を見てどう思うかは選手次第で変えられること。そこには絶対可能性があると信じていたし、それが今日は見せられたのかなと思います」
地元で魅せた攻撃的テニス
また、今年は「年間グランドスラム」がかかっていた。4大大会の最後を飾る全米オープンは今大会前に行われるため、「チャンピオンとして帰ってきて(今大会に)挑みたい」と意気込んでいたものの、決勝でライバルのアルフィ・ヒューエットに敗れたため、残念ながらチャンピオンとしての凱旋はかなわなかった。しかし、その悔しさをぶつけるかのように、ファンの前で攻めのテニスを披露し、見事な優勝を飾ってみせた。
photo by Atsushi Mihara
今大会の優勝によって獲得したロサンゼルスパラリンピックへの切符について、本人は「まだだいぶ先」と冷静に受け止めつつも、ここからまた、年間グランドスラム、そしてパラリンピック2連覇への挑戦が始まる。
text by TEAM A
key visual by Atsushi Mihara