フィギュアスケートと勉強を両立。女子高生メダリスト・中井亜美選手に学ぶ“諦めない”毎日の過ごし方「課題を絶対、後回しにしない」

フィギュアスケートと勉強を両立。女子高生メダリスト・中井亜美選手に学ぶ“諦めない”毎日の過ごし方「課題を絶対、後回しにしない」
2026.09.04.FRI 公開

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックで、日本のフィギュアスケート史上最年少のメダリストとなった中井亜美選手。演技後の”ほっぺポーズ”が「かわいすぎる」とSNSでも話題になったのが記憶に新しい。将来のさらなる活躍が期待される若手スケーターだ。

そんな中井選手は、フィギュアスケート選手だけでなく、通信制高校で学業に励む現役女子高生の顔ももっている。
海外遠征が続く中でも課題を後回しにせず、自分で時間を組み立てながら勉強を続ける毎日。

「競技か、勉強か」ではなく、どちらも諦めない。

その姿から見えてきたのは、トップアスリートだからこその特別な才能ではなく、多忙な毎日を前向きに生きるためのセルフマネジメントだった。

トップを目指しながら学びも諦めない選択

勇志国際高校の通信制で学ぶことを選んだ中井選手。練習の合間の時間を使って学業にも専念し両立の道を歩んでいる

競技か、学びか。どちらか一方ではなく、両方を続ける道を中井選手は選んだ。

新潟で生まれた中井選手は中学1年生の時に千葉県へと転居。千葉県南船橋にあるMFアカデミーで、現在もコーチを務める中庭健介氏に師事するためだ。

中庭コーチは、フィギュアスケートと学業の両立を重んじる。朝練や昼練はほぼしない。あくまでもメインはシニア(17歳以上)のスケーター。ジュニアの間はしっかり勉学に励むことを薦めていたこともあり、中井選手は中学校へ通いながら練習を続けていた。

大会での欠席や早退以外では、午前中はできるだけ授業へ出席し、その後リンクへ向かう生活だったという。だが、それは決して簡単なことではない。

「スケートの時間を確保しながら、学校で授業を受けるのは本当に大変でした。それに中学校時代は、通学時間を確保することも難しかったので、高校を探す時には通信制を第一志望に考えていました。お母さんと一緒にいろいろな高校を調べる中で、勇志国際高校を見つけて。アスリートが通っていることも知って、とても魅力的な学校だと思いました」

競技と学業を両立させるセルフマネジメント

中井亜美選手は競技と学業の両立でさらなる高みを目指していく

通信制は初めての経験だが、入学してからも、大きな戸惑いはなかったという。

「自分のスケジュールを優先しながら勉強時間を確保して学ぶことができるのはとてもありがたいです。フィギュアと学業を両立する自分の生活スタイルにはとても合っています」

シニアとなった現在、生活は、ほとんどが競技中心だ。試合では海外をはじめ遠征することが多い。それでも勉強時間を調整しながら学べる環境は、中井選手にフィットしていた。

中井選手の1週間のルーティンは、平日はフィギュアの練習をし、オフの日や半日休みを使って、学校の課題を一気に進めているという。

「通信制の高校だと平日を練習時間に充てられるのはとてもありがたいです。勉強はオフの日にやると決めているので、メリハリのある生活を送れています」

練習後は疲労も大きい。だから「オンとオフを切り替えること」を大切にしている。

「勉強する日は、朝から頑張って早く終わらせて、午後は休むようにしています。練習がオフの日は、勉強だけじゃなくて、体もしっかりと休めることも大事なので」と話し、高校3年生となった現在、自分自身で勉強量やスケジュールを自主的に管理している。

また、中井選手は「課題をため込まないこと」を意識する。勇志国際高校の先生からも「課題は必ず締め切り前に提出してくれる」と評価されている。

競技生活では、遠征や大会によって日常のスケジュールが大きく変わることも少なくない。だからこそ「後回しにしないこと」を強く意識する。

「試合や遠征になると勉強時間の確保が難しくなるので、できる時に早めに終わらせるようにしています」

その姿勢は、競技にも通じる。限られた時間の中で何を優先し、どう準備するか。フィギュアと学業の両立で培われた自己管理能力が、生きている。

学びや挑戦が自分を成長させている

ミラノコルティナ2026オリンピックでのフリープログラムでの中井選手。大きな話題になった終了後のほっぺポーズは、演技にミスがあったと感じ「メダルはどうかな」という不安な気持ちによるものだったという photo by AFLO SPORT

中井選手が学びを続ける理由は、「将来のため」だけではない。

「スケートだけに集中する道ももちろんあったんですけど、それだけだと行き詰まってしまう時もあるので、勉強も必要だと思っています」

学校や勉強を通じて得られるものは、競技とは違う。友人と助け合う経験。違う競技の選手たちとの交流。新しい価値観との出会い。そうした経験が、自分の視野を広げているという。

勇志国際高校には、さまざまなスポーツの高みを目指して努力する生徒が在籍する。

年に数回、スクーリングという全国から集まった同級生たちと交流する機会があり、トップアスリートコースでは、F1ドライバーやバレリーナを目指している学生がいる。他の学科でも芸術やクリエイターを夢見る個性豊かな生徒がいる。スクーリングを通して中井選手は、「自分一人が頑張っているわけではない」と実感することが多いという。

「他のスポーツの選手や同級生が頑張っているのを見ると、刺激を受けます」

仲の良いバレリーナの友人とは、体型管理の話をすることもある。競技は違っても、“表現する身体”をつくる難しさは共通している。

また学校での授業が、競技への意識を変えたこともあった。印象に残っているのが、高校1年生の時のこと。大谷翔平選手の「目標達成シート」を題材にした授業だったという。九つのマスを使って目標を可視化する内容で、中井選手は中央に「オリンピックに行きたい」と書いた。

「そこでちゃんと目標が定まった感じがしました」

その後、中井選手は本当にオリンピックの舞台に立ち、日本人として最年少のメダリストとなる。中井選手が指導を受けるMFアカデミーでは、中庭コーチによる「自主性」を重視した育成方針が取られている。

「やらされる練習」ではなく、自ら考えて競技と向き合うことを大切にしているという。

「自分で考えて行動することは、スケート以外でも大事だと思っています」

競技と学業の両立にも、その考え方はつながっている。誰かに管理されるのではなく、自分自身で時間を組み立て、必要なことを判断する。その積み重ねが、中井選手の現在の競技生活を支えている。

新しい挑戦と学びが人生の糧になる

勇志国際高等学校ではトップアスリート科に通う中井選手。クラスメートと切磋琢磨しながらさらなる高みを目指す

中井選手は、競技以外のことにも積極的に挑戦している。

現在注力しているのが、ダンスレッスンだ。

「まだ始めたばかりなんですけど、スケートの表現力につながったらいいなと考えていて。先生がいろんなヒップホップダンスとかいろいろなダンスを教えてくれています。知らないことに挑戦するのは好きなタイプなので、いつも楽しいし面白いです」

新しい表現に触れること。新しい考え方を知ること。知らないことに挑戦すること。その積み重ねが、中井選手にとってさらなる成長へとつながっていく感覚があるのだろう。

「勉強もスケートも、学ぶことで知識が増えていく。それが人生の中で役立つことがたくさんあると思っています」

分からないことがあれば、まずは自分で考える。それでも分からなければ先生に聞く。フィギュアでも勉強でも、その姿勢は変わらない。

現在高校3年生。中井選手は大学進学を視野に入れている。興味を持っているのは商学部や政治経済学部。「先輩たちが通っていたこともあって。みんなにおすすめされるので、興味を持ち始めています」

自らの探求心を原動力に歩みを続ける中井選手。その可能性は、これからも大きく広がっていく。


競技か、学業か。

アスリートにとって、その二択を迫られる場面は少なくない。
しかし中井選手は、「どちらかを諦める」のではなく、「両立する」という道を選んだ。

限られた時間の中で、自分で優先順位を決め、後回しにせず、一つひとつ積み重ねていく。その姿勢は、フィギュアスケートだけではなく、学びやその先の人生にもつながっている。

仕事や家庭、勉強など、いくつもの役割を抱えながら日々を過ごす私たちにとっても、「100%理想の環境ではなくても、自分で道を選び、続けることはできる」。中井選手の姿は、そんな小さな勇気を与えてくれる。

PROFILE 中井亜美
2008年生まれ。千葉県出身。5歳からスケートを始め、中学進学を機に千葉県のMFアカデミーへ拠点を移し、中庭健介ヘッドコーチに師事。「自主性重視」の育成方針のもとで成長を続ける。勇志国際高校トップアスリートコースに所属し、競技と学業を両立。2026年のミラノ・コルティナ冬季オリンピックではフィギュアスケート女子シングルで銅メダルを獲得した。現在も競技活動と並行しながら、学びを続けている。

text by Akihiro Ichiyanagi(Parasapo Lab)
key visual by AFLO SPORT
写真提供:勇志国際高等学校

『フィギュアスケートと勉強を両立。女子高生メダリスト・中井亜美選手に学ぶ“諦めない”毎日の過ごし方「課題を絶対、後回しにしない」』

フィギュアスケートと勉強を両立。女子高生メダリスト・中井亜美選手に学ぶ“諦めない”毎日の過ごし方「課題を絶対、後回しにしない」