[第3回全国障がい者スノーボード選手権大会&サポーターズカップ]ピョンチャンパラリンピックからの新競技スノーボードの国内大会、成田緑夢らが優勝

2017.02.23.THU 公開

2018年ピョンチャンパラリンピックの開幕があと1年と少しに迫る中、パラスノーボード国内唯一の大会である「第3回全国障がい者スノーボード選手権大会&サポーターズカップ」が白馬乗鞍温泉スキー場(長野県)で開催された。大会は18日と19日の2日間にわたって行われた。

種目はスノーボードクロスで、障がいごとに「大腿義足」「下腿義足」「下肢障がいその他」の3クラスを実施。現在、国際パラリンピック委員会(IPC)では、SB-UL(上肢障がい)、SB-LL1(重い下肢障がい/大腿義足など)、SB-LL2(LL1より軽い下肢障がい/下腿義足など)の3クラスを採用しているが、それとは異なる独自ルールでのレースとなっている。

パラリンピックにおけるスノーボードの歴史はまだ浅い。2014年ソチ大会で、アルペンスキーの1種目としてスノーボードクロスが初採用。2018年ピョンチャン大会では独立した競技となり、スノーボードクロスとバンクドスラロームの2種目が実施されることが決まっている。そしてそのピョンチャンに、日本は初めての代表選手を送り込むことになる。

ピョンチャン出場に期待! 世界選手権銅メダルの成田

笑顔を見せる成田

日本では、スノーボードは2016-17シーズンから日本障害者スキー連盟の強化指定制度の対象になったばかりだ。第1期となる現在の強化指定の7選手は、昨年のこの大会での成績上位者を中心に選ばれている。中でも注目を集めたのが、2月にカナダで開かれたパラスノーボード世界選手権のバンクドスラローム男子SB-LL2で銅メダルを獲得した成田緑夢。成田童夢、今井メロというスノーボード・ハーフパイプのオリンピアンを兄と姉に持ち、幼い頃からともにアスリートとしての道のりを歩みながら育ってきた。その経歴は華々しく、ウェイクボード、トランポリン、スノーボード、フリースタイルスキーなど多岐に渡る競技に挑むだけでなく、ことごとく結果も残すという、日本のスポーツ界には珍しいタイプの天才アスリートといえる。2013年3月には、フリースタイルスキー世界選手権の男子ハーフパイプ日本代表に選ばれ、目標であったオリンピック出場という夢にも大きく前進した。しかし同年春、トランポリンを使った練習中に左足を負傷。膝下にまひが残ったことから、パラリンピックへの出場を新たな目標に据えて、陸上競技とスノーボードに取り組むようになった。

そして、初出場した前回大会でいきなり優勝。強化指定選手となり、2016年11月に国際クラス判定を受けるために出場したオランダでのレースでも4位に入る健闘を見せて、海外の選手から「あいつは誰だ?」と注目を集めた。その後、ワールドカップで2勝を挙げ、先述のとおり世界選手権でも3位に入って、ピョンチャンのメダル候補に急浮上。

今大会でも、まったく危なげのないレース展開で大会2連覇を達成。

「採点競技は点をつける人に左右されるところがあるけれど、スノーボードクロスもバンクドスラロームも、純粋に速い者が勝つ。それが新鮮で楽しい」と語る成田の滑りには、まだまだ伸びしろがあるように見えた。今後、より難しい条件でのトレーニングとレースの経験を重ねることで、その実力にますます磨きがかかっていくに違いない。

大腿義足クラスでは、リオのメダリストが小栗を抑えて優勝

初出場初優勝で大会を沸かせた山本

もう一人、話題を集めた選手が山本篤。リオパラリンピックの陸上競技・男子走り幅跳び銀メダリストが、スノーボードのレースに出場するというだけでも驚かされたが、大腿義足クラスで優勝を飾り、会場をおおいに沸かせた。

ただし、この結果をもって「ピョンチャンパラリンピック出場か?」と考えるのは、早計にすぎる。山本の優勝は、決勝の対戦相手となった小栗大地がコース前半部で転倒し、挽回不可能な展開になったことによるもの。ワールドカップの表彰台にも上っている小栗と山本の間には、はっきりとした実力差がある。とはいえ、初めてのレース出場であったことを考えればそれも当然で、むしろ陸上競技で培った身体能力と適応力の高さ、そしてこの競技への可能性と期待を感じさせる滑りだったともいえる。

「ライバルになるかもしれない」

大腿義足クラスの国内第一人者である小栗もそう語っていたが、さすがにこれは報道陣の期待に応えたリップサービスだろう。続けて発した「今は自分の実力を上げることだけを考えたい」という言葉こそが、今シーズン、世界の舞台で戦ってきた彼の強い決意を表わしている。この小栗と、そして成田が、現時点でピョンチャン大会出場にもっとも近い選手であることは間違いない。

一方、山本が今から本気でピョンチャンをめざすとなると、その道は決して易しくはないだろう。だが、もしかしたら……と思わせるものを彼が持っていることもまた事実だ。

今大会に参加したパラスノーボーダーは16人。そのうち女子は1人で、上肢障がいの選手はゼロだった。出場選手のレベルにも大きな開きがあり、この競技本来の醍醐味である競り合いを見ることがほとんどなかったのは残念だった。選手をいかに発掘して競技人口を増やしていくかは、パラスポーツ全般に共通する課題だが、黎明期にあるスノーボードにおいては、有効な対策が急務といえる。何らかの障がいを持つスノーボーダーは、きっと全国に存在しているはず。彼ら彼女らの目をパラリンピックに向けさせるには、ピョンチャン大会での日本選手の活躍が何よりの特効薬になるだろう。パラスノーボードの地平を切り拓く役割を担った選手たちに、期待を込めたエールを送りたい。

大腿義足で滑る小栗
2日目に行われた決勝の様子

text by Isao Horikiri
photo by X-1

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