パラスノーボード日本代表のキャプテン・小栗大地がどうしてもメダルを獲らなければならなかった理由

パラスノーボード日本代表のキャプテン・小栗大地がどうしてもメダルを獲らなければならなかった理由
2026.03.14.SAT 公開

「大地さーん!」そう呼ぶ仲間の声の方向へ、つかみ取ったばかりのメダルを高く空へ突き上げた。

パラスノーボード日本代表チームの「チーム誰かがメダル獲得」という目標は、キャプテン自らがメダルを獲るという形で達成され、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会での戦いは幕を閉じた。

今までで一番ライバルに近づけた

日本代表のパラスノーボーダー7選手が出場した「バンクドスラローム」は、バンクのあるコースを1人ずつ、2本滑走し、そのベストタイムで順位を決める。

男子SB-LL1で戦う小栗大地は右足義足、スタンスはグーフィーだ。スピードに乗りやすく、勝負どころのターンがつま先側だったことから、「僕のためのコースだなと思った」と公式練習の印象を語り、その言葉から自信を持ってレース当日を迎えられたことがうかがえた。

1本目は前半バランスを崩した場面もあったが、1分00秒09で全体2位につけると、気温が上がって少し雪面が柔らかくなった2本目でさらにタイムを縮めて59秒02でフィニッシュ。磨いてきたカービングターンで最短コースを滑走した。

パラスノーボードの小栗大地
photo by REUTERS/AFLO

レースは、最後に滑走したノア・エリオット(アメリカ)が58秒94で優勝。小栗にも大きな拍手と歓声が送られた。
「最後のキッカー(ジャンプ台)でなぜかミスっちゃって。あれがなければ、もっと(観客を)盛り上げられたかな」

3位には1分00秒05でマイク・シュルツ(アメリカ)が入った。

「今までで(エリオットに)一番近づくことができた。負けたけど、相当嬉しい」

2本目のスタート時にメダルは確定していたが、情報は遮断し、エリオットを追い抜くことだけを考えていた。小栗とエリオットの差はわずか0.08秒差。「これまで(世界大会で)3位が多かった」という小栗が2位になり、リーダーズボードの選手たちがたたえ合うシーンが会場のスクリーンに映し出された。いつもはクールな男が、珍しく歯を見せて笑っていた。

世界選手権で金メダルを獲得した小須田潤太は1分00秒48で5位。右ひじのケガもあり、悔しい結果になったが、キャプテンのメダルを「圧倒的にうれしい」と喜んだ。

8日のスノーボードクロス決勝は小須田の4位が最高でメダルなしに終わっていた日本代表チーム。選手、スタッフは、バンクドスラロームでメダルを獲得した小栗を胴上げして祝福した。

スノーボードクロスの小栗(左)。手前は小須田潤太
photo by REUTERS/AFLO

競技環境の整備のためにもメダルを

小栗は45歳。ワールドカップに出場し始めてから10年の月日が経つ。小栗と言えば、常に滑りや義足を追求し続け、「仕上がることはない」という飽くなき向上心だ。うまくいかないときも、「ステップアップできる楽しい時間」と考えることができるマインドを持ち、落ち込むこともほとんどない。モチベーションの起伏も少なく、「常に今が一番」であり、右肩上がりにスノーボードがうまくなっている実感があるという。

大会では「ここぞという場面に強い」とチームメートたちが口をそろえる小栗だが、決して緊張しないわけではない。

足を切断する前、アルペンスノーボードの選手だった頃の小栗は、当時は大会の雰囲気にのまれて身体が動かなかったという。場数を踏み、緊張しても体が動くようになってきた今は、無理に落ち着かせようとしなくてもパフォーマンスが発揮できるようになった。

「すごく自信があるとかではないですけど。やることをやってきた、準備はしてきたと思えれば、身体が動く。スノーボードの場合、レースで転倒したらおしまいだが、しっかり練習をしていれば転ばないと思えるんです」

以前、そう語っていた小栗は、10年間の挑戦の結果として、日本代表選手団の冬季パラリンピック通算100個目となる価値ある銀メダルを手にした。

「メダルめちゃくちゃ重いですね。ようやく獲れた。本当に重いなって思います」

バンクドスラローム銀メダルの小栗大地
photo by AFLO SPORT

そんな小栗は、少なくとも2030年にフランスで開催されるパラリンピックまでパラスノーボードを続けたいと考えている。

自身はもちろん、共に戦う仲間、そして後に続く後輩たちが資金や環境を理由に夢をあきらめることがあってはならない。強化費の確保と競技環境を整備し、最高のパフォーマンスを発揮できる土壌を整えることがチームにとって不可欠だった。

「入賞では意味がない。チームとしてメダルという結果が必要。チーム一丸で誰かがメダルを獲る」――そう決意を語っていた小栗は、有言実行で結果を出した。

スノーボードクロスの元トッププロで2023-2024シーズンから技術コーチを務める元木勇希コーチは言う。
「日本にはスノーボードクロスとバンクドスラロームの環境がない。(海外勢と比較すると)どうしても海外にお金と時間をかけて行かなきゃいけないのでしんどい。日本の環境がよくなってくれることが一番です」

そんな中、日本代表チームのキャプテンは、さらなる高みを見据える。

「今回は銀だったんで、もう一個いい色を目指してやっていきたい」

いつもと変わらない穏やかな笑顔で語った。

text by Asuka Senaga
key visual by SportsPressJP/AFLO

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