初の大舞台まであと2ヵ月。ブラインドサッカーWGP2021準優勝がもたらした日本代表の自信と課題

2021.06.10.THU 公開

6月5日まで7日間にわたって開催された「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川」。開催国の日本が決勝に進出し、ブラインドサッカーという言葉がTwitterのトレンド入りを果たすなど盛り上がりを見せた一方で、世界の厳しさも痛感させられる大会となった。

国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)公認の同大会は昨年3月、パラリンピック本番5ヵ月前に強豪8ヵ国で行われるはずだった。今回来日したアルゼンチンに加え、パラリンピック4連覇中のブラジルとアジアの雄・中国も参加予定で、前哨戦としての役割もあった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止を余儀なくされている。

それから1年。いまだ収束を見せない感染状況のなか、選手たちが目指す大舞台は目前に迫っている。そこで、主催者は、無観客、バブル形式での開催を決め、日本を含む世界ランキング14位以上の5ヵ国による大会を実現させた。鋭い感覚が求められる対人競技のブラインドサッカー強化において海外との試合は欠かすことができない。2019年12月以降、対外試合から遠ざかっていた日本代表の高田敏志監督も試合の機会を熱望していた。

大会を通してスタメンに起用されたGK佐藤、FP佐々木ロベルト、田中、川村、黒田

2年ぶりにヨーロッパ勢と激突

大会は総当たりのリーグ戦を行った後、決戦と3位決定戦が行われた。

百戦錬磨の田中は、冷静な判断力で最終ラインを守った

日本にとって先制のゴールから勝ち点を得る理想的な展開となったのが初戦のフランス戦と2戦目のタイ戦だ。

フランス戦はヨーロッパ勢との対戦は約2年ぶりとあって大柄で手足が長い選手の「自分の感覚と、相手の足の届く位置の違い」(黒田智成)に苦戦する場面もあった。しかし、開始早々、最後尾の田中章仁からパスを受け、川村怜が左サイドから切り込んで獲得した1点が結果的に勝負を決めるゴールに。「いい形で味方からパスが来て、得意とする形で点が取れた」と川村も笑顔を見せた。

2戦目のタイは格下とはいえ、2019年のアジア選手権で脅威を感じた相手。高田監督はGKに佐藤大介、FPに佐々木ロベルト泉、川村、黒田、田中という初戦と変わらないメンバーで臨み、開始1分で右サイドの黒田が左足でゴールを決めた。
「真ん中のゾーンと、縦のラインが空いていたので、そこから崩そうと話していた。その後(追加点は)入らなかったが、チャンスがたくさん作れたのはよかった」と高田監督も一定の評価を与えた。

日本のダブルエース川村と黒田は健在だ

守備面では、威力のあるシュートを放つ相手ストライカーに対し「コンパクトなダイヤモンドを作って、スペースを消すことに成功した」と練習時にゴムチューブで体を縛って距離感を磨いてきた手ごたえを語り、2試合続けて無失点に抑えた選手たちを称えた。

続く相手はヨーロッパ選手権優勝のスペイン。攻撃陣をローテーションさせるスペインに対し、日本は「できるだけ交代なしでどこまで行けるか」(高田監督)を試す機会とし、主力を休ませることなくピッチに送った。

スペインとの一戦で好セーブを連発したGKの佐藤

その日本は、後半9分にカウンターから黒田が左足で先制弾。攻撃のひとつの武器を見せたが、後半18分にフリーキックから1点を失い、1-1で引き分けた。

勝てば決勝進出が決まっただけに、会場は無観客だったが、ため息が聞こえるような展開だった。

それでも「次は世界一のチームに勝ちたい」と黒田。1日の休息日を経て、選手たちは強い気持ちで予選最後のアルゼンチン戦に臨んだ。

ワールドグランプリの2018年大会と2019年大会を制しているアルゼンチンは、ベテランのフロイラン・ドゥルヴァル・パディージャを起点に、エースストライカーのマキシミリアーノ・アントニオ・エスピニージョにつなぎ攻撃を仕掛けていく。日本は田中を中心に、豊富な運動量と体を張った守備でアルゼンチンを封じ0-0。攻撃面ではわずかなチャンスを活かせなかったが、4年越しでつかんだ決勝進出を喜んだ。

「パワー勝負では負けてしまうが、相手のパワーを受け流しながら、自分の体を入れる。フィジカルコーチに指導してもらったことが自分の中にうまく取り込めてきた」とは、決勝進出の立役者でもある田中。アルゼンチンのリカルド・マルティン・デモンテ監督も「日本の守備がすごかった」と力なく語った。

決勝は、相手エースの猛攻に2失点

そして、アルゼンチンと日本による頂上決戦。決勝戦の戦い方は対照的で、アルゼンチンはマキシミリアーノを中心に、果敢にシュートを狙い攻撃的に仕掛けたのに対し、日本は組織的な守備を見せた。

迎えた前半9分、均衡を破ったのはアルゼンチン。2019年大会でも得点王だったマキシミリアーノが、ディフェンスの寄せが甘くなったところを得意のカットインから左に切り込んで高速シュートを決めた。対する日本は、佐々木ロベルトの好守から黒田がシュートに持ち込むもゴールネットを揺らすことはできない。

「相手がどれだけ強くてもきちんと体を当ててスペースを与えないようにすれば止めることはできたと思う」と佐々木

前半残り5分、再びマキシミリアーノが12mラインからドライブでカットインし、ボールをゴールネットに押し込み、日本は追加点を許してしまう。

日本はマキシミリアーノの2得点に泣いた

2点ビハインドの日本は後半、アルゼンチンに追加点を与えず堅守を見せたが、攻撃では決定的なチャンスを作れないまま試合終了。0-2で敗れた日本は準優勝となった。

「アルゼンチンに対しては守備から入れば崩されないことはわかっていた。2年前にアルゼンチンと戦ったときは全く歯が立たずただ耐えていたが、今回は意図的にボールと人を動かして、相手ディフェンダーにも対抗した。(負けたが)ポジティブな要素はあるし、後半は攻撃の機会もあり失点もなかったので、そこは評価したい。決めるところを決めればチャンスがあったので、(今後は)ゴールの可能性を高められるように強化したい」と高田監督は前を向いた。

日本の組織的な守備の中心として活躍した田中が個人賞を受賞した

今大会を東京パラリンピックのシミュレーションとして位置づけ、決勝進出を目標に掲げていた日本にとって、準優勝という結果は大きな自信になるはずだ。しかし、フィールドプレーヤー4人のうち3人の年齢が40代という日本の層の薄さが露呈したのも事実。決勝では17歳の園部優月もわずかな時間、ピッチに立ったが、多くのベンチメンバーが今大会で試合の中での動きを確かめられず、不安を残した。

「東京パラリンピックでのメダルの可能性は五分五分」とは高田監督の言葉だが、日本にとって初出場の大舞台は間近に迫っている。決して慢心しない選手たちは、限られた残りの時間でさらなる進化を誓っていた。

【Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川 リザルト】

最終順位
1位:アルゼンチン
2位:日本
3位:スペイン
4位:タイ
5位:フランス

個人賞
MVP: マキシミリアーノ・アントニオ・エスピニージョ(アルゼンチン)
MIP: 佐々木ロベルト泉(日本)
得点王:マキシミリアーノ・アントニオ・エスピニージョ(アルゼンチン)
ベストゴールキーパー: ヘルマン・フランシスコ・ムレック(アルゼンチン)
TANAKA Great Effort Award: 田中章仁(日本)

大会3連覇を飾ったアルゼンチンと過去最高の4位を超える成績を残した日本

text by TEAM A
photo by JBFA/H.Wanibe

『初の大舞台まであと2ヵ月。ブラインドサッカーWGP2021準優勝がもたらした日本代表の自信と課題』