東北6県の祭りが楽天モバイルパーク宮城に集結!「東北を熱く元気に」楽天イーグルスが“祭り”を通して築いた地域との絆

今年6月11日から5日間、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地、楽天モバイルパーク宮城で開催された「東北ろっけんまつり」。その名のとおり、東北6県の祭りをテーマにしたイベントで、期間中は日替わりで各県の演舞披露や展示などが行われた。
主催する楽天イーグルスは、2012年より野球をはじめとしたスポーツ振興・青少年の育成、並びに東北各地の活性化に貢献することを目指して行う「東北ろっけん活動」をスタートし、その一つとして2016年に「東北ろっけんまつり」を初めて開催した。以来、球団職員自身が各地の祭りに参加するなど、それぞれの地域の人々との関係を築きながら、大切にこのイベントをつないできた。「祭り」を通して見える、楽天イーグルスと東北の絆に迫った。
コロナ禍の東北を元気にする起爆剤に!
初めて「東北ろっけんまつり」が開催されたのは、2016年。その後、東京2020オリンピック・パラリンピックが1年遅れで開催された直後の2021年9月に開催され、2022年、2023年と3年連続で開催された。2021年は、まだ新型コロナウイルス感染拡大を懸念した自粛ムードが残っていた頃だ。
「コロナ禍の規制が少しずつ緩和されはじめてはいましたが、東北の方々はよく“奥ゆかしい”という言葉などで表現されるように、土地柄なのか当時も積極的に外に出るという雰囲気ではありませんでした。そんな中、我々エンターテインメントを提供する立場としては、楽天イーグルスが起爆剤になれるといいといった思いもありました」
と、話すのは株式会社楽天野球団総合企画部の亀谷さんと山本さんだ。球団社長(当時の)の「東北の魅力的な夏祭りを、なんとかスタジアムで体験できないだろうか」という提案から、楽天生命パーク宮城(現:楽天モバイルパーク宮城)で楽天イーグルスの一軍公式戦が行われた2021年9月の5日間に「東北ろっけんまつり」が開催されることとなったという。
まず観客を出迎えるスタジアムの正面には、ねぶた祭(青森県)のねぶたや、七夕まつり(宮城県)の巨大な吹き流しなど、東北6県を代表する祭りのアイテムを展示。さらにステージでは東北各地から駆けつけた演者が各地元の踊りや太鼓を演舞して盛り上げた。
その他、縁日の屋台がずらりと並ぶエリア、各県のグルメが味わえるエリアを展開し、「観て」「食べて」「体験して」楽しめるイベントとなった。
祭りを通して、県をまたいだ交流も
東北に古くから伝わる祭りは、東日本大震災以降、震災で亡くなられた方々の鎮魂と復興を願う役割も果たしてきた。「東北ろっけんまつり」には、そうした東北の魅力を、野球観戦と合わせて体験できる機会となっている。
「当初、ねぶたなど、巨大なものを運ぶことはとても大変で、手探り状態でしたが、地元の皆さんは以前から県外のイベントにも参加していたので、移動のノウハウがたまっていました。そうした皆さんの協力を得て最近ではスムーズに運べるようになりました」
「東北ろっけんまつり」では、祭りの象徴となるアイテムを飾るだけでなく、各地の祭りの踊り手や太鼓を叩く人たちが参加して盛り上げてくれる。たとえば今年、山形県の花笠まつりでは、山形大学の花笠サークルの皆さんが参加した。
このように、イベント当日は各県から関係者が楽天モバイルパーク宮城に集結するが、反対に球団職員が東北各地を訪ね、地元の祭りに参加することもあるのだそうだ。
「我々球団職員の中には東北出身ではない者もいますので、東北6県に愛着を持って活動してほしいという思いで、チームスタッフを含む職員をチーム宮城、チーム山形のように6つのチームに分けて、チームろっけんとして活動を行っています。その活動の一環として、東北を代表する夏祭りに参加しています。東北楽天ゴールデンイーグルスとして参加させていただく場合もありますが、地元の団体にまぜていただき参加することもあるんです。たとえば、岩手県の“さんさ踊り”という祭りでしたら、チーム岩手の職員が地元の踊りの団体の方々と一緒に参加します。各地域の皆さんが東北ろっけんまつりに協力してくださるだけでなく、我々を受け入れてくださっているのは、とてもありがたいなと思いますね」
祭りで東北を元気に熱く
東北楽天ゴールデンイーグルスは、「東北」を冠に掲げる唯一のプロスポーツチームだ。本拠地は宮城県にあるものの「東北」の名を背負っている以上、東北6県すべてに思いを馳せて活動を続けているという。実際、東日本大震災の後、同球団は「がんばろう東北」をスローガンにさまざまな活動を行ってきた。その姿は東北の多くの人々に勇気を与えた。また、震災から2年後の2013年には、球団創設からわずか9年で悲願のパ・リーグ初優勝、さらに日本一を決めた。東北だけでなく日本中に感動を与えたこのときの光景は多くの人の記憶に残っているだろう。
「我々としては、東北を元気にしたい、熱くしたいという思いがあります。勝手に東北全部を背負うわけではないですが、東北の球団として野球も地域も盛り上げる。東北楽天ゴールデンイーグルスが、そのための分かりやすいひとつの象徴になれればいいなと思っています」
今年の「東北ろっけんまつり」にも子どもから大人まで多くの人が足を運び、おおいに盛り上がったという。
東日本大震災から2年半後、日本一となった楽天イーグルスを率いていた当時の監督・星野仙一氏は優勝インタビューで「大震災で苦労なさっている皆さんを見ると、日本一になってみんなを癒してあげたい! それしかない! と信じてこの3年間やってきました」とコメントした。実際、この優勝で東北の多くの人が勇気をもらい、明るい気持ちになったはずだ。スポーツもまつりも、見ているだけで気持ちが明るくなり、感動したり、関わる人々の絆を深めたりする、不思議な力があるのかもしれない。
text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:東北楽天ゴールデンイーグルス