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Sports /競技を知る
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世界選手権4位から再出発へ。ゴールボール男子日本代表の「連覇への現在地」と消えない闘志

ゴールボール男子日本代表の、いばらの道が始まった。その先に、どんな未来が待っているのだろうか。
中国・杭州で開催された「2026 IBSA ゴールボール世界選手権」。パリ2024パラリンピック金メダリストとして今大会に臨んだ男子日本代表は4位に終わり、上位2チームに与えられるロサンゼルス2028パラリンピックの“最初の出場枠”を、あと一歩のところで逃した。
「準々決勝の壁」を突破も、立ちはだかった宿敵・ドイツ
予選プールを全勝で首位通過した日本は、決勝トーナメント初戦(準々決勝)でアメリカを16-9で撃破。先発メンバーだけでなく、ベンチ入り6人全員が出場する総力戦で、まずまずの準備と仕上がりを見せていた。前回の世界選手権では準々決勝敗退に終わっていただけに、キャプテンの金子和也は「絶対に突破しなくてはならない壁」と強い覚悟で臨んでいた。その壁を越えた喜びも束の間、チームの意識はすでに準決勝へと向けられていた。
相手は予想通り、力をつけてきているドイツ。パリパラリンピックへの出場こそ逃したものの急成長を遂げている国であり、日本にとっては今年3月の国際大会で敗れた因縁の相手でもある。日本は強化合宿から、他チームよりもゴールラインに近い位置で守る「ドイツのバックライン」への対策を徹底。準々決勝を制した後、翌日に備えミーティングなどでイメージを高めて挑んだ。
しかし、ボールが走りやすい特徴がある杭州のAコートに日本は苦しめられた。「会場が変わることで、自分たちが『このボールが効く』と思っていても、その特性にアジャストしなければならない。その対応が難しかった」と金子が振り返るように、環境への即応に苦しめられた。
エース金子は、前半に同点となる鋭いグラウンダーのショットを決めるなど見せ場もあったが、流れを変えるため前半途中に一度ベンチへ下がる展開に。「ドイツ対策はしてきたものの、個人としてやるべきことをすべてやりきれたかというと悔いが残る。相手を崩すようなコースの精度が、ここ最近の課題。それが改善しきれないまま大会を迎えてしまった」と金子は唇を噛んだ。さらにこう続ける。
「重要な場面でのペナルティや、相手のボールに対応しきれなかった部分での失点が響いた。ただ、そこは本当にこれから改善できる日本の伸びしろでもある」
ドイツの巧みな攻撃も日本を翻弄した。味方同士のパスをする際、床に落として音を出すのではなく、手渡しのパスを多用。これによって、音を頼りにボールの出どころを探る「サーチ」を狂わされた。投球位置を絞りきれないまま、さらに日本の手元でバウンドする鋭いボールを投げ込まれ、失点を重ねる結果となった。
「技術が足りなかった。本当にイチから、やっていかないといけない」
守備の要であるセンターの田口侑治は、言葉を絞り出した。
試合はたった一つの流れで暗転する。「我慢しなければいけない時間帯をドイツが我慢し、日本が失点してしまった。掴みたいところで流れを掴みきれなかった」と工藤ヘッドコーチも勝負のあやを悔やんだ。
王者の意地と新戦力の台頭
だが、日本もただ敗れたわけではない。パリの覇者として徹底的に研究される中、相手の的を絞らせない多彩な戦術を次々と繰り出した。準決勝ではレフトの金子をライトに配置する最強シフトに変えたり、攻撃時に3人が同時に足音を立てて走り込み、3人目が投げると見せかけて最初の金子が投じる新たな連係プレーを披露。王者のプライドと進化を示した。
また、今大会ではロサンゼルスを見据える大きな収穫もあった。パリ大会では出場時間の短かった鳥居陽生は、今大会すべての試合で金子・田口とともに先発に抜擢された。コートに立てる喜びを全身で表現しながら、直線的な高速球や、ライトウィングのポスト際から相手守備の間隙を突く鋭いショットで得点も重ねた。
182cmの大型センター行弘敬祐も、初の大舞台で声を張り上げ自らを鼓舞し、貴重な経験を積んだ。後半のプレッシャーがかかる局面で投入されたパリの金メダルメンバー佐野優人や宮食行次が味わった悔しさも、今後の日本を支える大きな強さに変わるはずだ。
「金メダルを獲る前の、もっとギラギラとした自分たちを取り戻す必要がある」と田口は前を向く。
3位決定戦ではブラジルに6-10で敗れ、4位になった男子日本代表。今大会では中国とドイツがロサンゼルス大会への切符を手にした。しかし、日本にとってロサンゼルスへのチャンスはまだ終わったわけではない。出場枠獲得の機会はあと2回残されている。
悔しさをエネルギーに変え、再び貪欲に頂点を見据えるゴールボール男子日本代表。ロサンゼルス大会で連覇を果たすための進化の物語は、ここから次なる戦いへと続いていく。
text by Asuka Senaga
photo by TEAM A