[関東パラ陸上競技選手権大会]東京の老舗大会、 充実のライバル対決や新記録誕生に沸く

2016.07.07.THU 公開

7月2日から3日にかけて、IPC(国際パラリンピック委員会)公認の第21回関東パラ陸上競技選手権大会が開催された。東京の町田市立陸上競技場を舞台に、ベテランからジュニアまで幅広い選手が集まる伝統の大会。梅雨時期特有の高温多湿の厳しい環境の中、アジア新記録や日本新記録などが多数生まれるなど、今年もハイパフォーマンスが繰り広げられた。

先輩の背中を追う、鈴木、三須の成長光る

アジア新記録のひとつは、若手成長株の鈴木朋樹が男子T54クラス(車いす)の800mで樹立した1分33秒34だ。初日に行われたこのレース。定評あるスタートダッシュで鈴木が先頭を奪うと、そのまま独走。2位を2秒以上離す圧勝で、第一人者の樋口政幸を「完敗でした」とうならせた。

鈴木はこの4時間前に行われた1500mでも、2分59秒34の自己ベストをたたき出している。いつものように先頭で飛び出したが、樋口に追いつかれ0秒31差の2位。実は前日から疲労による発熱もあり体調は万全でなかったというが、いつもより樋口に食い下がることができ、自身の成長に手ごたえを感じたようだ。

「1500mは樋口さんに隙を突かれて逆転されたけど、800mは逆に隙をつくことができた。今後は世界ランキング5位以内を目指したい」と意気込みを語る鈴木に対し、樋口は、「頼もしい成長。でも、簡単には譲らない」と話す。スプリント力に勝り、勢いのある鈴木と、持久力が持ち味で、かけ引きにも長けた樋口。ふたりのライバル関係に今後も目が離せない。

ライバル対決といえば、女子T47クラス(前腕切断など)の短距離にも注目が集まった。女王の辻沙絵が27秒08で日本記録を更新した200mを始め、100mと400mも制して三冠と力を見せつけた。だが、同じ日本体育大学に所属する後輩の三須穂乃香も将来を期待させる快走を見せた。200mでは辻と0秒63差の27秒71をマークし自己ベストを更新。「前半からしっかり飛ばし、後半(力を)抜くのでなく、伸びていける走り方ができ、200mの走り方が自分なりに分かってきた」と自己分析した。

先輩の辻と切磋琢磨する三須(写真左)
photo by Kyoko Hoshino

100mでも、これまで先行する辻に終盤さらに離されるレースが続いていたが、この日は0秒22差まで迫った。「ぴったりついていけた。最後は少し上体がぶれたけど、前よりは成長できたかな」と笑顔を見せた。成長の大きな要因は練習環境の変化だ。今春、高校を卒業し、日体大に入学。辻もいる陸上部でより専門的な指導を受けられるようになり、練習の質や体調管理が充実した。「沙絵先輩からも刺激をもらい、励ましてもらい、いい環境の中で練習ができています」と力強く話した三須。辻との切磋琢磨で、さらなる成長が楽しみだ。

5度目のパラリンピックを控え、走り高跳びの鈴木徹が2m越え!

ベテラン勢も安定したパフォーマンスを見せた。まず、T44(片大腿切断など)の鈴木徹が走り高跳びで2mをクリア、自己新記録を狙った2m03は失敗したものの、順調な調整ぶりをうかがわせた。今年5月にブラジル・リオの大会で自己ベストを2m02まで伸ばし、また地元・山梨の一般大会でも2m01を跳んでいたが、実は日本国内のIPC公認大会で2mを越えたのは2006年以来、10年ぶり2度目のこと。鈴木は、「やっと皆さんの前で跳べてほっとした」と安堵の表情で話した。

競技歴も16年目に入ったが、1年間で2mを3回跳んだのは今年が初めてといい、36歳にして成長中だ。目標とする2m05のクリアに向け、助走後半の走りとクリアランスの姿勢という2つの課題を掲げ、さらなる進化を期す。左膝の故障からの復活や過去4回出場のパラリンピックなど、「いろいろな経験をして、今がある。40歳まででもできるだろう」と頼もしい。

T44(片下腿切断など)の女子走り幅跳びでは試技3回目に中西麻耶が自身のもつアジア記録にあと11cmと迫る5m40を跳び優勝。「いつもは前半にファウルが多くて追い込まれるので、前半からしっかり跳躍できるよう練習してきた。今日は前半に記録が残せたので、後半はいろいろ課題を試しながら跳べた」と満足そうな表情で振り返った。

投擲で東京を目指す加藤

また、T 42 (片大腿切断など)の山本篤はリオでの金メダル獲得が期待される走り幅跳びでは義足のトラブルという不運に見舞われ記録なしに終わったものの、100mと200mではともに大会新記録の快走。嫌なイメージを自ら払しょくして見せた。

昨年のこの大会で女子F46(上肢切断など)砲丸投げで12m47の世界新記録を樹立した、加藤由希子。今年は12m27に終わったが、今春、大学を卒業して社会人となった環境の変化も後押しに、一層の奮起を期待したい。

ところで、今年は大会運営で新たな取り組みがなされた。最寄り駅からの直行バスの運行や飲食ブースの営業は好評で、選手も参加してのパラ陸上体験会やミックスリレーなども盛り上がりを見せた。2020年東京パラリンピック成功には競技の魅力を伝えると同時に、観客増など国内大会の活性化が不可欠だ。地元東京でのこの大会、選手のがんばりとともに、こうした取り組みの充実にも注目していきたい。

text by Kyoko Hoshino
photo by Rokuro Inoue

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