【アジアパラPREVIEW】世界王者、好調の主将、14歳最年少……パラ水泳日本代表が目指すアジアの頂点

2026.10.14.WED 公開

愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会のパラ水泳が、10月19日より名古屋市総合体育館[レインボープール]で始まる。前回の杭州大会で日本代表選手団最多の56個のメダルを獲得した水泳チーム。中国などの強豪を抑え、アジア最速の座をいくつ手にできるか。上垣匠総監督は「愛知・名古屋ではトータル80個のメダルを目指す」と強い意気込みを語る。

世界記録保持者の泳ぎに注目

最大の注目は世界記録保持者・山口尚秀の圧倒的な泳ぎが見られることだ。今年8月にアメリカで行われたパラパンパシフィック水泳選手権(以下、パンパシ)において、自身が保持していた男子100m平泳ぎ(SB14)の世界記録を約1年ぶりに0秒15塗り替える、1分02秒38の世界新記録を樹立。続く9月の国民スポーツ大会(青森)に健常者に交じって出場し、1分02秒46(16位)という好タイムを残した。

ところが、「体が重かった」と本人が語る翌週のジャパンパラ水泳競技大会(以下、ジャパンパラ)は1分04秒69と悔しさの残る結果に。それだけに、「アジアパラではもっと大幅に記録更新できるようにしたい。力強いストロークとキック、そしてハイテンポなピッチで泳ぎきりたい」と、本番への意気込みを語っていた。

山口尚秀(写真は、2026ジャパンパラ水泳競技大会)

アジアパラでは、「100m平泳ぎで世界記録更新と他の種目でもメダル獲得」を目標とする山口。注目の100m平泳ぎ(SB14)は、21日(水)に予選・決勝が行われる予定だ。

そして、知的障がいクラスでもう一人注目なのが、木下あいらだ。前回の杭州大会では200m個人メドレーなどで3個の金メダルを獲得し、1大会における日本女子最多タイ記録を打ち立てた。

「すごく楽しみだし、戻ってきて、もう自分が主役だっていう気持ちで臨みたいです」

病気療養を経て投薬しながらプールに復帰した日本のエースは、そう楽しそうに笑う。前回は金メダルに輝いたものの、100m背泳ぎで香港選手に競り負けるなど悔しさも残った。だが、今は経験を積んだからこそ、ライバルが得意とする泳法や展開を冷静にイメージすることができる。

ジャパンパラでも100m自由形でアジア新、100m背泳ぎで日本新をマークする好調ぶり。後半のスタミナも戻ってきており、目標として掲げる「個人5種目で全部金メダル」も夢ではない。

木下あいら(写真は、2026ジャパンパラ水泳競技大会)

今大会には、パリパラリンピックで金メダルを獲得したベテランも出場する。100m自由形(S4)などにエントリーしている鈴木孝幸は帯状疱疹により調整は出遅れているが、「できる限りのことをやる」と前を向く。100mバタフライ(S11)をメイン種目とする木村敬一は今季重点的に取り組んできたバタフライの腕の戻し方の修正に確かな手応えを得ている。

木村敬一(写真は、2026ジャパンパラ水泳競技大会)

絶好調のキャプテンが牽引!

日本チームのキーマンになるのは、キャプテンであり、5種目に出場予定の荻原虎太郎だろう。ジャパンパラの100m背泳ぎ(S8)では、予選でパリ2024パラリンピック銀メダリストの窪田幸太が保持していた日本記録を塗り替える1分05秒51をマーク。続く決勝でも1分05秒06と自身の記録をさらに更新してみせた。

好調の要因について、荻原は次のように語る。
「今年は(練習環境を変え)上半期からすごい量の練習を積んできました。総合力が向上し、それをしっかり泳ぎに反映できた結果だと思います。レース展開としては、とくに前半のスピードがかなり上がり、しっかり貯金を作って後半に温存できるようになりました。後半の泳ぎ方を修正すれば、アジアパラでもさらにベストが出せると思っています」

そんな荻原に対し、上垣総監督も全幅の信頼を寄せる。
「パンパシではチームの全体ミーティングで、荻原が『必ず自己ベストを出すからついてきてほしい』と宣言し、その通り1発目で自己ベストを出してチームを乗せてくれました。キャプテンという大役をプレッシャーと感じず、自らのパフォーマンスの糧に変えることができ、非常に頼もしい存在」

荻原は、若手とベテラン勢との架け橋となる「パイプ役」としてチームを牽引する。

荻原虎太郎(写真は、2026ジャパンパラ水泳競技大会)

14歳もはつらつ、チームを勢いづける新世代

10月12日にナショナルトレーニングセンター(東京)で行われた公開練習では、若手選手の明るく元気な姿も見られた。

日本代表選手団最年少・14歳の都甲万結もその一人だ。代表合宿では「いい感じでベストが出ているので、このまま大会でもベストを出したい」と順調な仕上がりを見せる。「最年少」という立場にも気負う様子はなく自然体だが、合宿中は先輩たちの泳ぎを観察し、「技をちょっとずつ盗んでいきたい」と競技に対する貪欲な姿勢をのぞかせた。

都甲万結(写真は、2026ジャパンパラ水泳競技大会)

同じく14歳で男子最年少の山田龍芽も今季、複数種目で記録を更新しており、今大会を世界へのステップアップの場にできるか注目が集まる。

また、障がいの軽いS10クラスで、地元・愛知に本社を構えるトヨタ自動車所属の南井瑛翔や、視覚障がいでより障がいの軽いS13の選手と同じレースで競うS12クラスの辻󠄀内彩野、齋藤元希がどこまで金メダルに近づけるかも大きなポイント。ベテランと若手が融合した日本チームの躍進に期待が高まる。

text by TEAM A
photo by X-1

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