読売巨人軍がパラスポーツ体験イベントを開催!

2018.04.18.WED 公開

プロ野球が開幕する前の3月、東京ドームで開催されたオープン戦(巨人対東京ヤクルト)の後、2020年パラリンピックに向け、パラスポーツを紹介するイベントが同球場で行われた。

これは読売巨人軍が2015年より行っている社会貢献プロジェクト「G hands(Gハンズ)プロジェクト」の一環。抽選で選ばれた約200名と巨人軍の24選手が一緒に、4つのパラスポーツ(ボッチャ、シッティングバレーボール、アンプティサッカー、フライングディスク)を体験した。

シッティングバレーでは「巨人」対「全日本」が実現!?

白熱したラリーが繰り広げられたシッティングバレーボール

白熱したラリーが繰り広げられていたのが、シッティングバレーボールだ。ここでは、競技の基本を学んでから、参加者が「巨人チーム」と、西家道代主将率いる「シッティングバレーボール全日本女子代表チーム」に混ざり、ミニゲームが行われていた。お尻を床から浮かせてはいけないとあって、巨人の選手も苦戦していたが、そこはプロのアスリート。随所で上半身の強さと柔らかさを見せる。とはいえ、思うようには動けなかったようで、巨人の若林晃弘内野手は、感想を求められると「体幹に負担がかかりますね。きついです。(シッティングバレーボールは、)いいトレーニングにもなりそうです!」と話していた。

参加者も競技特性の難しさを感じたようで、高橋典之さん(48)は「お尻をつけたままだと、なかなか移動できないですね。いざやってみると、見た目以上にハードでした」と、教えてくれた。

体験することでボッチャの奥深さを知る

一方、”頭脳戦”が展開されていたのが、シッティングバレーボール同様、2020年パラリンピック正式競技であるボッチャのコーナーだった。初心者でもやりやすいよう、正規のサイズより一回り小さなコートが設置された中、競技の指南役を務めたのは、日本のトッププレーヤー杉村英孝。2016年リオパラリンピックの団体戦でメダルを獲得したボッチャ日本代表チームの主将である。その杉村は、”模範投球”も披露してくれた。

指南役はボッチャ「火ノ玉JAPAN」の杉村英孝

参加者や巨人の選手がボッチャのルールを知る上で、大きな助けとなったのが、カーリングだったようだ。平昌オリンピックでは、日本の女子チームが銅メダルを獲得。競技への関心が一気に高まった。巨人の立岡宗一郎外野手は「一投一投、作戦をしっかり練りながら投げるところは、カーリングに近いところがありますね」と話していた。

参加者は、実際にやってみることで、ルールはシンプルでも、そこに奥深さが秘められているのがわかったようだ。石井一浩さん(56)は「やるのは初めてでしたが、いつの間にか集中していた。楽しかったです」と笑顔だった。

アンプティサッカー選手のキック力にどよめきが起こる

参加者からも、巨人の選手からも「4つの中では肉体的に一番きついのでは?」という声が上がっていたのが、下肢切断の選手がつえを使って巧みなドリブルを見せたりするアンプティサッカーのコーナーだった。まず、1本の足で歩くことから体験したが、ほとんどの参加者は、それもままならない。上野まり恵さん(31)は「ボールを蹴る以前に、2本のつえを使って、腕で全体重を支えるだけでも大変! 」と、アンプティサッカーの難しさを実感した様子。アンプティサッカーの選手が、素早くパスを回したり、力強いシュートを放つと、どよめきの声が上がった。

ここでも身体能力の高さを発揮していたのが、巨人の選手たち。日本アンプティサッカー協会の理事で選手でもある新井誠治氏も、すぐに走り方をマスターした巨人の選手を見て「こちらが驚くほど、よく動けます。プロ野球選手は体幹がしっかりしているからでしょう」と、感心していた。

巨人の選手もアンプティサッカーを体験
プロ野球ファンとパラアスリートもパス交換

フライングディスクは、多くの人が1度はフリスビーを投げた経験があるためか、参加者は入りやすかったようだ。円形の標的を狙い正確さを競う「アキュラシー」では、初心者が投げやすいよう、的までの距離を短くしたこともあり、参加者も次々と成功。ディスクをコントロールして、円の間を通す醍醐味を味わった。ただ、投げた距離を競う「ディスタンス」は、なかなか難しかったようだ。フリスビーで腕に覚えがある人も、大きく曲がってしまうなど、きれいな軌道を描けず、遠くへ飛ばせない。ボールなら遠くへ投げられる巨人の選手たちも、テクニックを要すことを感じたようだった。

巨人の長野外野手も真剣な表情で体験したフライングディスク

陸上競技用車いすのスピード感を体感

この日は開場時より、球場内のコンコースに、試乗ができる競技用車いすが展示された。展示されたのは、パラアイスホッケーのスレッジに、車いすバスケットボール、車いすテニス、ウィルチェアーラグビー、そして陸上競技のレーサー。

野球観戦の合間にたくさんの人が訪れ、パラアスリートが実際に使用している競技用車いすを体験した。車いすバスケットボール用の車いすを試乗した小学3年の平沢美遥さんは「思った以上に車輪がクルクル回る。これでバスケをやるんですね! 」と驚きの表情。

体験者には、小学生の姿も目立った。子どもたちは、競技用の車いすを体験したことで、パラスポーツが激しい側面もあることを心に刻んだに違いない。一般の体験者からは「普通の車いすとは全然違う」という声が多く聞かれた。

障がいのある当事者という菱田太さんは陸上競技用車いすを体験した後、「障がい者と健常者には、垣根があるのが現状です。こうした取り組みが、垣根を低くするきっかけになるといいですね」と話してくれた。

最新のデジタル技術を使った車いすレース体験も行われていた
子どもたちで盛況だった車いすバスケットボール

巨人の選手の真剣さが参加者の本気を引き出す

今回のイベントを盛り上げたのは、巨人の選手たちの「本気度」だった。イベントの責任者である、読売巨人軍の営業企画部・ファン事業部の橘麻美さんは「開幕前ですし、試合の後なので、選手のケガが心配だったのですが、アスリートとしての本能なのでしょう。真剣にパラ競技を体験していたようです」と話す。

巨人の選手たちの「本気度」は、参加者の本気を引き出した。憧れの選手と近くで触れ合いたいから、という理由で参加したファンも、いつの間にか、パラ競技に引き込まれていった。橘さんは続ける。「試合の後という限られた時間でしたが、みなさんの笑顔が見られてよかったです」

橘さんによるとパラスポーツを体験したことは「巨人の選手たちにとってもいい経験になった」という。同様に、パラスポーツの選手たちも、現役プロ野球選手の身体能力に接したことは、有意義な経験だったに違いない。

text and photo by Shinichi Uehara

『読売巨人軍がパラスポーツ体験イベントを開催!』