地元福島出身の選手も躍動した「2017ジャパンパラ陸上競技大会」。イベントとの共催で見えた課題と収穫

2017.10.03.TUE 公開

9月23日と24日の2日間、福島県福島市にあるとうほう・みんなのスタジアムで「東日本大震災復興支援・World Para Athletics公認2017ジャパンパラ陸上競技大会」が開催された。全国からトップ選手が集結し、世界新2、アジア新5、日本新6、大会新の合計141の新記録が誕生した。

地元出身の佐々木ら若手も存在感

なかでも、地元福島出身のスプリンター佐々木真菜(T13/弱視)の活躍は、スタンドを沸かせた。福島県立盲学校を卒業した昨年から東邦銀行陸上部に所属し、健常者とともに研鑽を積む。大会に出場するたびにタイムを縮めている伸び盛りの20歳で、初出場だった7月の世界選手権(イギリス・ロンドン)でも200m、400mの2種目でアジア記録を更新。地元開催の今大会も、自己記録更新を狙っていた。

初日の400mでは1分00秒15でアジア記録を更新したものの、日本新記録を樹立できず、「納得できる走りができなかった」と悔しさをあらわにした。その悔しさをぶつけて臨んだ翌日の200mは26秒28の会心の走りで、自身の持つアジア新記録・日本新記録・大会新記録を樹立した。「最初は緊張したが、声援を受けて楽に走ることができた」と笑顔を見せた。

佐々木の所属先の先輩である佐藤智美(T13)は100mと200mで大会新をマーク、地元福島出身の庭瀬ひかり(T51/車いす)も100mで大会新記録を樹立するなど、県勢の活躍が光った。

存在感を示す若手の姿もあった。やり投げでは山﨑晃裕(F46/切断など)が56m30、山手勇一(F41/低身長)が30m78の日本新記録を樹立し、次なるシーズンに向けて自信をつけた。

その他、世界選手権の400mと1500mで金メダル2個を獲得した佐藤友祈は、400m、800m、1500m(T52)に出場して三冠。同走り幅跳び(T42)で銀メダルの山本篤も本調子とはならなかったが6m10のジャンプで安定感を見せつけた。山本はスノーボードで平昌パラリンピックへの挑戦を表明しており、出場できるかによって来シーズンの迎え方が自ずと変わる。現在ワールドカップを転戦中で「平昌に出場できるよう最大限頑張る」と話し、その生きざまでパラ陸上界をけん引し続ける。

砲丸投げの世界記録を持つ齋藤由希子(旧姓:加藤)は8月に結婚して福島県民に
東京パラリンピックの実施種目は決まっていないが「どの種目でも金メダルを獲れるように準備したい」と佐藤友祈

集客に工夫も、残る課題

今大会は東日本大震災の被災地である福島県で開催された。会場となったとうほう・みんなのスタジアムは2万人収容できたが、来場者は2日間でのべ2000人にとどまった。

2020年のパラリンピックを成功させるには、開催地の東京だけでなく、その盛り上がりを全国各地に波及させなければならないが、今大会のスタンドの寂しい光景を見るに、そのムーブメントはまだ地方には広がっていないと感じずにはいられなかった。自国開催のパラリンピックに向けて大観衆に慣れておきたい選手たちにとっても、物足りない舞台になったに違いない。

しかし、スタジアム隣の広場で行われた「ふくしまスポーツフェスティバル2017」(福島県主催)では、ボッチャの体験コーナーに県内の車いすの子どもが訪れるなど、これまで見られなかった光景があったと関係者は語る。

記念撮影会では、元巨人の宮本さんが1984年のロサンゼルスオリンピック野球の金メダルを披露

ジャパンパラと同時開催された同イベントは、スポーツコメンテーターで元プロ野球選手の宮本和知さん、陸上競技のオリンピアンである為末大さんやパラリンピック7回出場の永尾嘉章さんらによるトークショーが行われ、車いすバスケットボールやカヌー、ボルダリングなどオリンピック・パラリンピックの競技体験ができるもの。今回のように“トップアスリートが集結する競技会”と“他競技を体験する機会”が同時に開かれる事例は地方ではめったにないそうだ。

ボートの体験コーナーを担当したリオパラリンピック日本代表の駒崎茂は、「ローイング(ボート)を知らない人にアピールすることができた。健常者のローイングでも構わないので競技を始める人が出てくればうれしい」と子どもたちへの普及に手ごたえを口にする。

「ここからパラリンピックの日本代表を目指す人が出てくれば」と期待を膨らませるのは、ボッチャでリオパラリンピック日本代表を率いた村上光輝コーチ(福島市出身)だ。

「全国を回っていて感じるのは、地方と都会に温度差があるということ。地方の大会は人が来ない。だからこういったイベントとの共催は効果的だと思うし、関係者ではなく一般の人にパラスポーツの魅力を訴えるいい機会になりました」

会場を訪れた鈴木俊一東京オリンピック・パラリンピック
担当大臣もボッチャを体験
伴走体験では視覚障がい者を誘導する方法も紹介

関係者によると、昨年、新潟県で開催されたジャパンパラで閑散としていた客席を目の当たりにし、集客に危機感を抱いたという。そこで地元の福島中央テレビに働きかけ、ジャパンパラとイベントを抱き合わせるかたちで広報に注力した。

その甲斐あってか、来場者のなかには、テレビでイベントを知り、足を運んだ家族連れも多かった。

ボッチャは競技名だけ知っていたという11歳の近澤青夏くんは家族でボッチャにチャレンジ。実際にボールを投げて「白のボールに近づけられるかハラハラして楽しかった」と声を弾ませた。

ステージを担当した福島中央テレビの久保恵佳アナウンサーは「自分たちも今回初めて知る競技ばかりだった。『パラリンピック競技のルールを知れば、2020年を楽しく迎えられますよ』と伝え、体験を促した」と話し、自らも体験ブースを回った。

またイベント会場ではスタンプラリーも実施され、競技を体験したり、ジャパンパラを観戦してシールを集めると抽選で福島の名産品がもらえる取り組みも。イベントは2日間で8542人を集め、ジャパンパラの集客をアシストした。

イベントによる集客効果は未知数だが、東京パラリンピックに向けた盛り上がりが、パラアスリートたちのハイパフォーマンスを後押しすることは間違いない。

人の列が途切れなかったカヌー体験
車いすバスケット体験はスタジアムのすぐ脇で行われた

text&photos by Asuka Senaga
photo by X-1

『地元福島出身の選手も躍動した「2017ジャパンパラ陸上競技大会」。イベントとの共催で見えた課題と収穫』