車いすカーリング日本選手権、苦難の1年を越えてKiT CURLING CLUBが2年ぶりの優勝

車いすカーリング日本選手権、苦難の1年を越えてKiT CURLING CLUBが2年ぶりの優勝
2026.05.28.THU 公開

5月22日から24日にかけて、稚内市みどりスポーツパーク(北海道稚内市)で「第22回ナブテスコ日本車いすカーリング選手権大会」が開催された。

逆転劇となった準決勝

4人制の車いすカーリング日本一を決める今大会。北海道2チーム、本州3チームが参戦するなか、KiT CURLING CLUB(北海道)が盤石の強さで予選1位となり、最終日の決勝へストレートで駒を進めた。一方、もう一枚の決勝切符をかけ、予選2位のSAITAMA(本州)と予選3位のチーム長野(本州)が準決勝で激突した。

準決勝は、第1エンドにSAITAMAのスキップ・中島洋治がドローを決めて1点を先制。チーム長野が追いかける展開となるなか、SAITAMAは第4エンドで2点、第5エンドでも1点をスチールし、4-2とリードを広げる。しかし、ここからチーム長野が強さを見せて第6エンドで1点を返すと、サードの新人・渡辺昌利の好ショットでチーム長野が勢いづく。第7エンドでさらに1点をスチールして同点に追いつくと最終エンドへ。SAITAMAが有利な後攻だったものの、プレッシャーをかけたチーム長野がここでも見事なスチールに成功。和智浩らベテランが名を連ねるチーム長野が5-4で決勝進出を決めた。

稚内市みどりスポーツパークに5チームが集まった

「4人制はやはり楽しい」敗退したSAITAMAの2人

中島はラストショットを決められなかった。
「大事なところで決められなかったのがとても残念。第8エンドの1投目は曲がりすぎてしまい、2投目は逆に曲がらずガードに当たってしまった。ショットの選択を含め課題が残るが、狙う場所が多彩な4人制はやはり楽しい。今後は世界の強豪のように幅を広く使う技術を学び、もう一段上を目指したい」

SAITAMAのスキップとしてけん引した中島

サードの小川亜希はこう話す。
「パラリンピックから帰国後、仕事も忙しい時期で1ヵ月弱練習ができない焦りがあった。(優勝した昨年とは違うメンバーで挑み)ぶっつけ本番のような調整の難しさはあったが、チャレンジャーとして全員が笑顔で共有し合い、最終日まで戦い抜けた。やるからには決勝に残る健闘を見せたかったけれど……。パラリンピックでいろいろな人に応援してもらったので、今後も仕事とカーリングを両立して頑張りたい」

小川は「調子が上がらず、中島さんに負担をかけてしまった」

迎えた決勝戦は、KiT CURLING CLUBが第3エンドで一挙に3点を獲得し、試合の主導権を握る。追いかけるチーム長野も意地を見せ、第5エンドに後攻から2点を奪って4-4の同点に追いつく。しかし、KiT CURLING CLUBは第6エンドで1点を勝ち越すと、第7エンドには試合を決定づける2点を追加。7-4とリードを広げられたチーム長野は第8エンドでコンシードを選択し、KiT CURLING CLUBがフォースの高橋宏美を中心に最後まで安定した強さを見せて全勝優勝を飾った。

「相手はミスがないし、格が違う」と和智

試合後、フォースの高橋宏美は「この1年間苦しかった」と涙を流し、これまでの努力が実を結んだ喜びを噛み締めていた。

涙を流して優勝を喜んだ高橋(左から2人目)

フランス・アルプス大会へつなげる、チームの決意

高橋の涙の裏には、大会直前に届いた恩師の訃報があった。車いすカーリングを始めてからの10年間、付きっきりで指導してくれたコーチが他界。悲しみに暮れるなかでも、「泣いていたら怒られる。『思いっきりやってきなさい』とコーチなら言うはず」と、その教えを胸にプレーを続けた。

フォームを改善して大会に臨んだ高橋

昨年の日本選手権では、優勝候補と目されながらも3位に終わり悔しさを味わった。その敗戦を糧に、高橋はこの1年、貪欲に変革を求めてきた。今年2月には世界トップレベルである韓国代表チームから助言を受け、フォームを刷新。猛練習を重ねてきたドローショットが今大会で見事に結実した。フォースの役割を遂行する見事な一投を次々と決め、自らの手で優勝を手繰り寄せた。

KiT CURLING CLUBを中心に構成された2024-25シーズンの4人制日本代表は、2024年の世界選手権(Bプール)で日本史上最高(当時)の銀メダルを獲得し、2025年の世界選手権(Aプール)では9位。札幌で暮らす高橋は、以前は別のチームで活動し、北見を拠点とするKiT CURLING CLUBには日本代表活動時のみ合流していた。しかし、「普段から同じチームで活動したほうが日本代表で活きる」と移籍を決断。正式にチームの一員となり、これが嬉しい初優勝となった。

スキップの柏原一大も前回の悔しさを力に変えた。
「昨年は世界選手権の惰性で日本選手権に入ってしまった部分があった。世界の強い国に勝てても、国内で今まで負けたことのないチームに負けてしまう。そういうメンタルも含めて切り替え、今回は合宿を組むなどイチから準備した。準備を重ねてきた分、喜びもひとしおです」

2年ぶりの優勝を飾ったKiT CURLING CLUB

王座奪還により、チームは2030年フランス・アルプス冬季パラリンピックの出場枠争いにつながる、次回世界選手権への挑戦権も掴み取った(ポイントレースは、2027年の世界選手権からスタート)。

「自分たちの手で勝ってポイントを取り、2030年へつなげたい」と先を見据える高橋。リードの松田華奈も、優勝に安堵の表情を浮かべつつ、「まだまだ課題もある。これから大きい大会に向けて、また新たな形で一つひとつ乗り越えていきたい」と語る。

世界の舞台へ向けたチームの挑戦は、ここからまた新たなフェーズを迎える。

柏原は「仲間を信じてプレーできたことが優勝の要因」と話した

text & photo by Asuka Senaga

  • Sports /競技を知る

    車いすカーリング

    より精確なショットが求められる“氷上のチェス”

『車いすカーリング日本選手権、苦難の1年を越えてKiT CURLING CLUBが2年ぶりの優勝』

車いすカーリング日本選手権、苦難の1年を越えてKiT CURLING CLUBが2年ぶりの優勝