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【Road to 2026】アルペンスキーのアジア杯、来季で第一線を退く意向の森井大輝が3勝

パラアルペンスキーのアジアカップを兼ねた「TOYOTA2025全日本障害者アルペンスキー競技大会」。4月18日に閉幕し、大回転(GS)1レースと、回転(SL)2レースが行われた(初日は天候不良のためキャンセル)。
2024-2025シーズンの締めくくりとなる本大会。男子の座位カテゴリーは、パラリンピックに6大会出場中で7個のメダルを獲得している森井大輝(LW11)が3戦全勝。来年のミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会を集大成と位置付けているだけに、「すごく嬉しい部分と、(2位の鈴木)猛史と(次世代を担う強化選手の塚原)心太郎くんに脅かしてほしい部分がある」と複雑な心境を吐露した。
オールラウンダーの森井は、大回転優勝の後、回転でも同種目を得意とする鈴木猛史に完勝。第1戦は「攻めあぐねた」と話したが、第2戦は2本とも「しっかり攻めることができた」。そのうえで、「もう一つギアを上げないと、(世界の)メダルに近づけない。そのギアを上げられるように、来シーズンに向けてトレーニングをしなければならないし、技術ももう一段階磨きをかけないといけない」とパラリンピックを見据えた。
森井によると、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会でアルペンスキーが実施されるコルティナのコースは「緩斜面で最後にすっと落ちる」という。
「板にしっかり圧をかけると板がたわみ、板の反発で加速が生まれるが、調子がいいときは無駄な動きがなく、1回でしっかり圧をかけることができる。コルティナのコースでは“攻めたもの勝ち”だと思うので、スタートからゴールまでミスなく攻め切ることができたらもしかしたらという(金メダルの)可能性がある。その可能性にかけて少しギアを上げないといけないと思います」
昨年11月にイタリアで右の肩甲骨を折る大ケガをしたものの、年明けにはトレーニングを再開した。
「ケガした当初はかなり痛かったので、まいったなと思った。でも、雪上に戻ってから、調子自体は悪くない。チェアスキーのセッティングも、いろいろ試しながら自分の技術を対応させていくが、今年はそれがうまくハマった年だったかな。国内のレースですけど、最後に勝つことができたので、来シーズンにつながるかなと思います」
“先輩”の後を継ぐ2人のチェアスキーヤーは
一方、チェアスキーのフレームを調整中だという鈴木は、「締めくくりとしては悔しい終わり方だなと思う。やはり得意としているスラロームで(森井)先輩に負けたというのがあるので」と振り返った。
2014年に開催されたソチパラリンピックで回転を制した鈴木は、2022年の北京パラリンピックではゴール直前で転倒し途中棄権。「コルティナでは北京の借りを返したい」と強い気持ちで臨む。
「コルティナのような(難易度の高くない)回転のコースでは、(LW12-2クラスの鈴木よりも)障がいの重い選手が有利になる。そこに勝つためには限界を超えるような滑りをしなくちゃいけない。難しい戦いになるだろうとは思っている」
鈴木は、日本チームを盛り上げることができるか。
そんな先輩たちの背中を追いかけ、来年、パラリンピック初出場を目指すのが、18歳の塚原心太郎(LW11)だ。
2月にスロベニアで行われた世界選手権に初出場し、大回転で第1戦18位、第2戦19位だった。
「海外選手とすごい秒数で離されてしまった。スタート後のスピードの乗せ方、急斜面から緩斜面に入るタイミング……トップとの秒差は何なのか、動画を見ながら考えた」と振り返る。
今大会については、「全体的には今シーズンやってきたことを出せていたのかな」と話し、手ごたえを得た様子だった。
もう一度強い日本チームを作るために
森井は、2025-2026シーズンを最後に、パラリンピックや世界選手権などトップカテゴリーの大会からいったん離れることを表明している。若手育成のために、後輩たちと一緒に滑る時間を増やし、自分の滑りを継承したいからだ。
引退するわけではないが、「自分の中で1回退くと決めたことで、気持ちの整理もつくと思う」。
森井は、塚原らにどんな滑りを見せるのか。ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会では、悲願の金メダルを目指す。
text by Asuka Senaga
photo by Hiroaki Yoda