パリから1年! 車いすテニス&柔道&水泳“同学年メダリストトリオ”のハイテンションわちゃわちゃトーク

2025.08.28.THU 公開

パリ2024パラリンピックでメダルを獲得した田中愛美(車いすテニス)、小川和紗(柔道)、辻󠄀内彩野(水泳)は、そろって20代最後の年を送っている同学年トリオ。2021年の東京パラリンピックで銅メダルを獲得した小川を中心につながったという3人、久々に顔を合わせたということもあり、会った瞬間からおしゃべりが止まらない。その勢いのまま、パリの思い出からプライベートまで、エンジン全開で語り合った。

小川 和紗(おがわ・かずさ)|柔道
東京大会の銅メダルに続き、パリ大会の70㎏級(J2)で銅メダルを獲得し、2大会連続メダリストに。3人の中では一番誕生日が遅いが、しっかり者でお母さん的存在。夢はマツコ・デラックスのテレビ番組に出て、マツコにツッコまれること。

田中 愛美(たなか・まなみ)|車いすテニス
パリ大会では車いすテニスの女子ダブルスで日本女子初の金メダル。待ち合わせなど時間はきっちり守るが、金メダルを半年間リュックに入れっぱなしというおちゃめな面も。推しは声優の宮野真守。

辻󠄀󠄀内 彩󠄀野(つじうち・あやの)|水泳
パリ大会は、100m自由形(S12)で銅メダル。読売ジャイアンツ・阿部慎之助監督のファン。「パリの後、始球式で会えました!」。ディズニー好きとしても知られる。最近、実家の近くで一人暮らしをスタート。

(写真左から)田中、小川、辻󠄀内。「違う競技だからこそ、同時に最高の結果を出しに行こう」と高め合うことができる
2024年9月に行われたパリ2024パラリンピック競技大会特別賞授与式の食事会場で一番といってよいほど盛り上がっていたのが、田中、小川、辻󠄀内の3人がいたテーブルだった。競技が異なる3人が出会ったきっかけは?

小川和紗(以下、小川):愛美と彩ちゃんが会ったのは、パリパラリンピック特別賞授与式とその後の食事会じゃない?

田中愛美(以下、田中):私、もともと同い年の知り合いが少ないんですよ。だから同い年っていうだけで、めっちゃ「友!」みたいな感じで、話しやすかったのがきっかけかな。

一同:イェーイ!

田中:パリ以前は、視覚障がいの知り合いがほとんどいなかったんです。だけど、知り合ってみたら、車いすの私から見るとすごくフットワークが軽くて自由だし、明るい印象で。

辻󠄀内彩野(以下、辻󠄀内):私は「来る人拒まず」なタイプだしね。

田中:私も人と会うことでパワーチャージをするタイプだから。彩野ちゃんみたいに、バーッて来てくれると、やりやすいというか。

田中・󠄀辻󠄀内:楽しい!

辻󠄀内:私と和紗ちゃんはそれよりも前で、東京2020パラリンピックの開会式です。水泳チームみんな先帰っちゃって、どうしようってなっていたときに……。

小川:同じジャージの子がいるなと思って、ちょんちょんってして。

辻󠄀内:話してみたら、学年が同じってわかって盛り上がったよね。

小川:で、「インスタ交換する?」って。

田中:私と和紗は、パリでメダルを撮った後、NHKに行く送迎のバスの中で。私の後ろの席で柔道の先輩とずっとしゃべってたのが、和紗。

小川:(笑)

田中:「試合前に猫やお守りに話しかけるみたいなことは、知らない人の前ではあまりやらないように」って注意されてて(笑)。変わった人だな、って衝撃的でした。

小川:愛美のことは、「かわいい子がいるらしいよ」って耳に入ってきてたんです。いずれご縁があるといいなと思っていたら、バスが一緒ってわかって。もちろん車内で話しかけました。

田中:同い年っていうことは、話の途中でわかったんだよね。

小川:私はかわいこちゃんとしゃべったぞって、喜んでたんだけど、実は変わった人と思われてたという(笑)

田中・󠄀辻󠄀内:(爆笑)

ロサンゼルスに向けては、「いつ何があっても対応できるように、パリ後1年はゆとりを持って競技に取り組みました」と辻󠄀内
その後、主にインスタグラムの投稿に「いいね」やコメントをしたり、電話をし合ったり、会ったりすることで交流を深めてきた。お互いをどう思っているのか聞いてみると……。

小川:私にとって、彩ちゃんは元気をくれる「ひまわり」みたいな感じ。

辻󠄀内:うれしい。

小川:今はテンションもわかってるし、お互いに結構ズバズバ言えちゃいます。だから、彩ちゃんと会う約束をして風邪でドタキャンされても、イヤな女とは思わない(笑)

辻󠄀内:よかったー。

小川:私、約束破る人が苦手で。でも、選手はストイックにやっている分、体調を崩しやすいのもわかってるから。

辻󠄀内:ありがとう、すぐにリスケしよっ。

小川:愛美の印象は、最初と変わらずかわいい。みんなのアイドル。

田中:ありがとう。

小川:私たちに見せる闇も好きなんだけど。

辻󠄀内:裏表なく接してくれるから。

小川:愛美はツッコミキャラで、私はボケキャラ。愛美にツッコまれると、やったー!ってなる。印象は花に例えると「薔薇」って感じ。

辻󠄀内:和紗ちゃんは……花びらがいっぱいある「ダリア」。いろんな人とつながってるイメージ。

田中:あー、それいい! 花はよく知らないけど、それでお願いします。

小川:適当かい(笑)

改めて、3人にとってパリはどんな大会だったのか。

田中:ダブルスで自分がやるべき最低限のことを完璧にこなした、その結果(が金メダル)だった。だから、今後は最低限の仕事以上のことをやっていかないと勝てないなって、パリの直後からずっと思っています。

小川:仕事人だね。

辻󠄀内:私は、パリのときは満身創痍すぎて。そもそもパリの直前にクラスと種目が変わって、もうてんやわんや。そこにひざの痛みが出て、さらに開会式の1ヵ月前にコースロープに突っ込んで中指の爪がはがれて。

󠄀小川・田中:言ってたよね。

辻󠄀内:本番は、痛み止めを飲んでレースして、悲惨だった。1年経って、あれを乗り越えたなら何でもできるんじゃないかって、やっとポジティブな考えに変わったかな。

小川:私もケガの痛みを薬で抑えながらギリギリで掴んだ銅メダルだったのですが、東京もパリも銅だったので、変化がないってすごく考えちゃった時期があって。自分探しをしようと、1ヵ月間スペインに武者修行に行きました。

パリの1年前に左足を骨折し、「意地で2ヵ月で治しました」と小川

田中:そういえば、スペインから電話かかってきたよね。

小川:そうそう。「(パリ大会の)凱旋パレードに出る?」って。

辻󠄀内:あぁ、私が体調不良だったときだ。

田中:そう。だから、パレードの後、和紗と私の2人で会ったんです。で、熱い恋の話を……。

一同:(爆笑)

田中:柔道の話も、結構聞いたね。

小川:競技が違っても金メダルを目指していることはみんな一緒。愛美から何かを得たくて、いっぱい話したんです。アドバイスをもらって、それでまたエンジンかけて。

田中:アドバイスは記憶にないですね。

小川:私の話を聞いてくれる姿と、「和紗が動いて決めたことはすごくいいことだし」っていう言葉が、私にとってのアドバイスだったんです。

辻󠄀内:素敵。多分、泣いちゃうやつ。

小川:刺さったよ。

田中:「一緒にがんばろう」みたいな感じで最後終わったじゃない。あれで私もエンジンかかりました。

「柔よく剛を制す」のスタンスを大事にプレーしていると田中。座右の銘は「その一球に魂を」
それぞれにとってのメダルの位置づけ、そして保管方法にも個性が出ている。

田中:私はね、この袋(ジェラートピケ)に入れています。お店に行ったら、ちょうどまん丸のやつがあって。かわいくない?

󠄀小川・辻󠄀内:かわいい!

田中:これ、実は半年ぶりに出した。前回使ったリュックに入ってました。

小川:最高じゃん!

辻󠄀内:見つかってよかった(笑)

メダルを持ち運ぶポーチにも個性が出ている

田中:このケースを買う前は、車いすの下(のネット)に、(ケースなどに入れず)むき出しの状態で入れてました。

辻󠄀内:メダルが入っていた箱、重いしね。

小川:私は、セリア。お出かけ用に。

田中:ベストサイズだね。

小川:しかも110円。すぐに取り出せるように、テレビボードの下に保管してます。ロサンゼルスでは同じ間違いをしたくないなという戒めのメダルでもあるので、たまに心が折れるときは見て。

辻󠄀内:また、銅になっちゃうぞって?

小川:そう。あとは、「ちょっと走り行く?」「OK」みたいな感じで。

田中:やっぱり、話しかけてる! 相棒は、(初めて会ったときに聞いた)猫だけじゃなかったんだ!

一同:(爆笑)

小川:東京のメダルは実家に飾っています。あれはもう過去のものなので。

田中:私も、パリのメダルをすごく大切に保管していますよ!?

󠄀小川・辻󠄀内:本当にね(爆笑)

田中:でも、一人で獲ったものではないので。やってきたことの証明ではあるけど、次にシングルスでメダルを獲るためのステップみたいな気持ちはあります。

小川:じゃあ、家の中に置き場をつくろう。

田中:では、家用の車いすの下に(笑)

辻󠄀内:基本、私は大会でメダルと一緒にもらった箱に入れて、クローゼットの上に置いてます。その上に、(大会マスコットの)フリージュ(のぬいぐるみ)。持ち運び用のケースは、スターウォーズのポーチです。ポーチの内側が劣化したらイヤだから、母がタオルに巻いて巾着に入れろって。

小川:厳重だ。

田中:巾着もディズニーだし、オタク感がすごい。

辻󠄀内:ここのフックにカラビナを付ければカバンにもつけられるし……。

小川:(落としてしまいそうで)こわいこわい。もっと愛してあげて。

辻󠄀内:わかった。毎日、話しかけるわ(笑)

田中:私は、もう……あきらめてください(笑)

小川:ポーチに入れたことが進歩だもんね。

3年後のロサンゼルス大会に向けて、それぞれのペースで走り出している3人。刺激し合いながら、各々の競技で最高到達点を目指す。

text by TEAM A
photo by Atsushi Mihara

『パリから1年! 車いすテニス&柔道&水泳“同学年メダリストトリオ”のハイテンションわちゃわちゃトーク』