「1年前に見たかった景色がかなった」東京2020大会1周年記念セレモニー<TOKYO FORWARD>

2022.07.25.MON 公開

無観客で開催された東京2020大会から1年。ついに有観客イベントが実現した。東京2020オリンピック開会式からちょうど1年後となる2022年7月23日、開閉会式会場だった国立競技場で、記念セレモニー「TOKYO FORWARD」が開催された。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のメインスタジアムとして使用された国立競技場

アスリート、ボランティアらが約1.5万人の見守るスタジアムを行進

17時、冒頭で東京2020大会の招致と成功に尽力した故・安倍晋三元首相の追悼VTRが上映。黙とうを捧げた後、セレモニーがスタートした。

(写真左から)日本オリンピック委員会の星野一朗専務理事、スポーツ庁の室伏広治長官、小池百合子都知事、元東京2020組織委員会の橋本聖子会長、日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会の森和之会長 ©Tokyo Metropolitan Government

「汗、感動、やさしさ、絆は過去の話じゃない。あの日生まれた変化は、今もこの町に、私たちの中に息づいている。あの日々を力に変えて、私たちは進んでいく」とうたう1周年記念VTRでは、東京オリンピックの開会式で話題となったピクトグラムのパフォーマーも登場。一気に1年前の感動を呼び起こす。

続いて主催の東京都・小池百合子知事は、「共生社会の実現や最先端テクノロジーによるスポーツの楽しみ方など、多くのレガシーを残した。東京は新たなスタートラインに立っている」とあいさつし、開会宣言を行った。

(写真左から)ミライトワ、小池都知事、ソメイティも大きな拍手で迎えられた

オープニングパレードでは、埼玉栄中学高等学校のマーチングバンドが先導して盛り上げる中、大会マスコットのミライトワやソメイティをはじめ聖火ランナー、ボランティアらが続々入場。東京大会と北京大会の日本代表選手団「TEAM JAPAN」も163人(うちパラリンピックは68人)参加し、東京大会でエスコートキッズを務める予定だった子どもたちと一緒に歩いた。まさにこのスタジアムで2冠を達成した佐藤友祈(陸上競技)は、大勢の観客が見守る中での入場に、「あの日見たかった景色が1年越しにかなってうれしい」と、感無量の様子だった。

金メダルを胸に行進した陸上競技二冠の佐藤(左)
テコンドー太田渉子や車いすバスケットボールの鳥海連志らも出席。東北の子どもたちと一緒に歩いた
1.5万人の「観客」と選手、関係者で国立競技場全体が一体となった
客席にもユニフォーム姿のボランティアが多数。「お疲れ様でした!」と互いにねぎらい合った

セレモニーでは新たな試みも披露された。ARを使って、YouTube Liveによる配信映像やスタジアムビジョンに、スタジアム上空をゆっくりと旋回する飛行船や、動画の視聴者数や「いいね」の数に応じて打ち上がる花火、事前登録された約1000名のアバターがパラシュートでフィールドに次々と降り立つ様子が映し出されたのだ。アバターは、フィールドの中央に集まって「TOKYO FORWARD」の人文字を作って盛り上げると、観客席に着席して観覧。新時代のスポーツ観戦やイベント参加の形がこのような大規模イベントで提示されたことは興味深かった。

フォトセッション後、橋本聖子元東京2020組織委員会会長と室伏広治スポーツ庁長官があいさつ。「困難な中、日本は前に進めることを示した。共生社会、多様性を実現する転換点となった」(橋本)、「アスリートはさまざまな障壁を乗り越えて力を発揮。スポーツが持つ力を示してくれた。パラ選手の活躍によって、共生社会への実現に一歩一歩、歩み続けている。レガシーをさらに進化させていく」(室伏)。

アンドリュー・パーソンズ国際パラリンピック委員会会長は、映像でメッセージを寄せ、「(大会は)障がいのある人への理解を促進した」と評価した

オリンピアンらと混合の4チームで勝負。最強のチームは!?

その後、イベント「TOKYO FORWARD CHALLENGE」を実施。まずは、観客席をエリア別にレッド、ブルー、グリーン、パープルの4つにチーム分け。スタジアムビジョンに映し出されたソメイティとミライトワが、観客のクラップの音に合わせて、次々と現れるだるまや東京スカイツリー、富士山などをジャンプしていくゲーム「TOKYO FORWARD GAME」では、チームごとに息を合わせて手元に配られたハリセンでクラップ。満点をたたき出したチームレッドが優勝した。

レスリングでオリンピック3連覇の吉田沙保里率いるチームレッドが優勝!
©Tokyo Metropolitan Government

GAMEで一体感が生まれたところで行われたのが、オリンピアンとパラリンピアン、さらに東京、岩手、宮城、福島の子どもたちによる混合リレー「TOKYO FORWARD RELAY」だ。

出番を待ち、談笑する池崎(車いすラグビー)、瀬立(カヌー)、梶原(バドミントン)

参加したパラリンピアンたちは、「(東京大会では、国立競技場に)開会式と閉会式で来た。久しぶりに、明るい時間帯に来られてうれしい」(瀬立モニカ・カヌー)、「東京で試合ができたことは貴重な思い出になった。この会場で楽しい時間を過ごせる。パラリンピックと同じ気持ちでリレーに挑みたい」(池崎大輔・車いすラグビー)、「(東京大会では)あこがれの選手に勝てたのが一番の思い出。今日は精いっぱいがんばる」(梶原大暉・バドミントン)、「(東京大会の)開会式の心残りが、テレビに抜かれた瞬間、下を向いていたこと。今日はしっかり映りたい」(瀬戸勇次郎・柔道)と、それぞれの思いを胸に参戦。

ハリセンを叩いての応援合戦で盛り上がる中、MCを務めた松岡修造の「位置について、よーい、スタート」のかけ声でスタート。パラアスリートが並んだアンカーは、それまでトップを走っていたチームレッドの瀬立をほかのチームが次々と抜き去り、チームパープルの瀬戸が1位、チームグリーンの梶原が2位、チームブルーの池崎3位でフィニッシュした。

障がいの有無、年齢、性別問わずバトンをつなぐ「TOKYO FORWARD RELAY」。トップでリレーをつなぎ、笑顔の瀬立だったが……
なかやまきんに君率いるチームパープルの瀬戸は「パワー」のポーズでしっかり目立った

リレー後、パラリンピアンたちは、「大逆転負け(笑)。笑顔がなくなるぐらい反省しています。反省を生かして、2024大会でメダルを穫れるようにがんばります」(瀬立)、「まだまだ不安なところはあるが、たくさん努力して自信につなげて、自分もチームも世界のトップになる力をつけていく。現在、日本は世界ランク1位。1位を継続する力をつけていきたい」(池崎)、「シングルスでは優勝だったが、ダブルスでは3位と悔しかった。パリでは2冠を狙う」(梶原)、「パリで金メダルを実現すべく稽古に励んでいきたい」(瀬戸)と、パリへ向けて抱負を語った。

「特別支援学校の教師になるという目標も大切。すべての目標を成し遂げるつもりで全力を尽くしていく」と瀬戸

リレー参加者が集まっての写真撮影では、観客も一緒に「TOKYO FORWARD」のかけ声と共にこぶしを突き上げてポーズ。

観客も一緒にこぶしを突き上げてポーズ

その後、フィールドの中央で、2022年4月にデビューした2000年生まれのシンガーSennaRinが力強い歌声を披露し、会場を華やかな雰囲気で包んだ。

フィナーレを飾ったSennaRinのライブ
©Tokyo Metropolitan Government

最後に、松岡は「無観客開催、あの過酷な状況で開催できたのは日本、東京だからと信じている。その力が若者を支えていく」と、東京大会のレガシーを未来につなぐメッセージで締めくくった。

東京大会を機に多様性、共生社会の実現、街や施設、制度のユニバーサル化が進んだことは間違いないが、一方で、まだまだ十分とはいえない現実もある。このイベントを通じて、東京大会の感動を思い起こすと同時に、東京大会のレガシーをいかに未来へつなげていくか、改めて考えるきっかけとなったのではないだろうか。

競技場周りに体験ブースも設けられ約1.5万人が来場した

text by TEAM A
photo by Atsushi Mihara

『「1年前に見たかった景色がかなった」東京2020大会1周年記念セレモニー<TOKYO FORWARD>』