東京パラリンピックを見据えた出場枠争いも激化! ワールドトライアスロンパラシリーズが2年ぶりに横浜で開催

2021.05.19.WED 公開

5月15日、世界最高峰の「ワールドトライアスロンパラシリーズ」が横浜で開催された。新型コロナウイルス感染症の影響により2年ぶりの開催となった今大会は、東京2020パラリンピックの出場権を争うランキングポイント対象レースということもあり、世界のトップアスリートが集結。徹底した感染症対策が講じられた中で、障がい種別ごとに熱い戦いが繰り広げられ、日本勢は2019年大会を上回る4選手(男子1選手、女子3選手)が表彰台に上がった。

2大会連続のパラリンピックを視界に捉える

どう乗ればもっと速くなれるのか。同じ片足漕ぎのライバルのレースも参考に、トレーニングに励みたいという秦

大会開催時点で、東京パラリンピック代表内定圏内に位置するPTS2の秦由加子。ライバルでもあるメリッサ・ストックウェル(アメリカ)にはおよばなかったものの、2位と結果を残し、2大会連続のパラリンピック出場に大きく前進した。

新型コロナの影響で、海外選手とのレースは実に約1年3ヵ月ぶりだった。レース前日の会見では、「バイクでどれだけ他の選手たちに差をつけられるかがカギになってくる。(合宿中の)沖縄で積み重ねたトレーニングを信じて、スイムから積極的に挑んでいきたい」と語っていた。

レースは終始、ライバルを追う展開となった。スイムで1分の遅れをとると、いよいよ勝負のバイクへ。秦は2019年から、課題であるバイクの強化とトランジションでのタイムロス短縮のため、義足を装着せず、片足で漕ぐスタイルに切り替えている。「きっかけは、(2019年8月、東京・お台場で行われた東京大会のプレ大会で)ものすごく暑い中で(汗で)義足が外れそうになったことがあって。本番での付け外しは絶対にしてはいけないと思い、片足に挑戦しようと決めた。切り替えには1年かかった」と振り返る。

強い気持ちで臨んだバイクだったが、結果は2分以上の差をつけられ、トータルでも約8分の遅れをとった。「負けた以上、手ごたえは感じていない。義足を使わないと決めた以上、片足で漕ぐことを徹底的に強化していきたい」と、本番での雪辱を誓った。

ストックウェルは、昨年2月にオーストラリアで行われたワールドカップで秦に敗れた雪辱を晴らした

悔しさを見せた一方、ライバルとの再会を喜び、レース後に涙を流した秦。「コロナ禍のトレーニングではライバルの存在がすごく力になった。こうして再び戦える日を目標に頑張ってきたので……」と言葉を振り絞り、「横浜に来てくれてうれしかった。(ストックウェルは)素晴らしい選手です」と勝者を称えた。

横浜に縁のある2選手が好レースを展開

PTVI(視覚障がいクラス)では、女子の円尾敦子が3位、男子の米岡聡が4位と結果を残した。

「コースは感覚として頭の中に入っている」。円尾にとって、横浜大会は2012年から出場する思い入れの深い大会でもある。前日会見では、「エリートパラ部門での出場はおそらく今年で最後になる。お世話になった皆さんに感謝を示せるようなレースにしたい」と、愛着のある大会への思いを語っていた。

コロナ禍に伴う自粛期間中、ガイドと二人三脚でトレーニングを積んできたという円尾。「彼女を信じ、彼女の力を精いっぱい使いながら、自分の力を出し切りたい」という言葉の通り、フィニッシュ後、すべてを出し切り、その場に倒れ込んだ姿が印象的だった。

力を出し切る以外に作戦はないと、全力を尽くした円尾

今年4月、広島県廿日市市で行われたアジアトライアスロン選手権のレース後、「次の横浜大会で4位くらいに入れれば、東京パラリンピック出場も不可能ではない」と話していた米岡。

横浜大会は2017年以来、4年ぶりの出場。地元、神奈川出身ということもあり、思い入れも人一倍だ。「スイムとバイクでなるべくいい位置でレースを展開して、最後のランで粘り切りたい」という事前のレースプラン通り、ガイドとの息の合ったレースで、3位から12秒遅れの4位と底力を見せた。

米岡(右)は「4位は悔しいが、全力は尽くせた」と語った

バイクの強化で代表に一歩前進

現在、東京パラリンピック出場資格ランキング8位の谷真海も、今回の横浜大会に勝負をかけたひとり。「最後までわからない戦いになることは最初から予想していた」という谷は、くしくも2019年大会同様、谷が属するPTS4で2位、東京パラリンピック採用種目(※)のPTS5に当てはめると5位に相当する結果だった。ただ、結果は同じでも、「最後のスピード勝負では勝てなかったのが、PTS5の選手と互角に戦えたのは良かった」と、悔しさで涙も浮かべた2年前に比べて悲壮感は感じられない。

(※)谷はクラス統合により、東京パラリンピックではPTS4よりも障がいの程度が軽いPTS5で戦うことになる。

冬季練習で集中的に強化してきたというバイクでは、順位そのものは落としたものの、粘りを感じさせるレースを展開。「2年前までは最後に順位を落としてしまうというレースがあった。そこで試合が終わりになってしまわないよう、粘ってランに入れたのは収穫」と手ごたえを口にする。

本番に向けて引き続きバイクの強化を図り、さらにランでカバーできるようにしたいという谷

もちろん、まだまだ楽観視はできない。パラトライアスロンの東京パラリンピック国別出場枠は、ITU(国際トライアスロン連合)のパラリンピック出場資格ランキング9位以上の選手に与えられるのだが、今大会もライバルたちの結果次第で、ランキングが入れ替わる状況だったため、「最後の1周、最後のスプリントまで気が抜けない試合だった」と振り返る。「もうひとつ順位を落としていたら、(出場資格ランキングでボーダーラインにいる)東京パラリンピック出場も結構危なかった」。ギリギリで踏みとどまり、代表の座へ可能性を残した。

二刀流の実力者は結果を残せず

スイムでの出遅れが最後まで響いた土田

トライアスロンと陸上競技の車いすマラソン、2つの競技でのパラリンピック出場を目指す土田和歌子は、PTWCに出場。現在、東京パラリンピック出場資格ランキング9位とボーダーライン上にいる土田にとって、横浜大会は2017年、2018年と連覇を果たした験のいい大会でもある。

先月のアジアトライアスロン選手権の前日会見では、「パラリンピックは、大きな目標でありモチベーション」と東京パラリンピックへの思いを語っていたが、レース当日の発熱により無念の欠場。今回が仕切り直しとなる一戦だったが、結果は7位と東京大会出場を引き寄せることはできなかった。

東京パラリンピック出場に可能性を残した佐藤

パラリンピック夏季・冬季連続出場の経験を持つPTS5の佐藤圭一も東京パラリンピックを目指して挑戦を続けている。大会開催時点で東京パラリンピック出場資格ランキングは11位と、東京大会出場のためにも上位に入りたかったが、悔しい9位という結果に終わった。

昨夏、合宿トレーニング中の転倒により、左肩を3ヵ所骨折。復帰戦となったアジアトライアスロン選手権では2位という結果だったが、「パフォーマンス以前の問題」というように、負傷によるブランクの影響は大きかった。

今シーズンは夏と冬のパラリンピックが同じ年に行われる異例の1年になる。ノルディックスキーでの北京2022冬季パラリンピック出場も視野に入れる佐藤にとって、今後は未知の領域。「まずは、東京パラリンピックに向けてトライアスロンに集中したい。自分のチャレンジがどこまでできるか挑戦していきたい」と、あくまで二兎を追う。

男子で唯一表彰台に上がった宇田も、東京パラリンピックへ大きく前進

その他、東京パラリンピック出場を目指す日本勢は、PTS4の宇田秀生が3位。PTWCの木村潤平が5位、PTS5の梶鉄輝が8位だった。

東京パラリンピック出場枠をかけた熾烈な争いは7月まで続く。

リオパラリンピックでの悔しさをバネに東京大会に向けてトレーニングに励んでいる木村 photo by Satoshi TAKASAKI/JTU
【ワールドトライアスロンパラシリーズ(2021/横浜)リザルト】

女子
PTWC:1位 ケンドール・グレッチ(アメリカ)、2位 ジェシカ・フェレイラ(ブラジル)、3位 エバ・マリア・モラル・ペドレロ(スペイン)
PTS2:1位 メリッサ・ストックウェル(アメリカ)、2位 秦 由加子、3位 ベロニカ・ガビトワ(ロシア)
PTS4:1位 ケリー・エルムリンガー(アメリカ)、2位 谷 真海、3位 エルケ・ファン・エンゲレン(ドイツ)
PTS5:1位 グラディース・ルムシゥ(フランス)、2位 アリサ・コルパクチ(ウクライナ)、3位 アナ・ビチュコワ(ロシア)
PTVI:1位 ケイティ・ケリー(オーストラリア)、2位 ビタ・オレクシウク(ウクライナ)、3位 円尾 敦子

水温も気温も20度を少し越える絶好のトライアスロン日和。67名のエリートパラ選手が出場した photo by Satoshi TAKASAKI/JTU

男子
PTWC:1位 イェツェ・プラット(オランダ)、2位 ヘールト・スキパー(オランダ)、3位 アフマド・アンダルーシ(フランス)
PTS2:1位 リオネル・モラレス(スペイン)、2位 マウリッツ・モルシンク(オランダ)、3位 アダム・ポップ(アメリカ)
PTS3:1位 ニコ・ファン・デル・ブルフト(オランダ)、2位 ビクトル・チェボタレフ(ロシア)、3位 アレクセイ・ペトゥホフ(ロシア)
PTS4:1位 アレクシ・アンカンカン(フランス)、2位 マイケル・テイラー(イギリス)、3位 宇田 秀生
PTS5:1位 ジョージ・ピースグッド(イギリス)、2位 マルティン・シュルツ(ドイツ)、3位 ロナン・コルデイロ(ブラジル)
PTVI:1位 カイル・クーン(アメリカ)、2位 ホセ・ルイス・ガルシア・セラーノ(スペイン)、3位 チボー・リゴドー(フランス)

山下公園特設会場は入場規制が行われ、公道のコース周辺でも応援自粛が呼びかけられた

text by TEAM A
photo by X-1

『東京パラリンピックを見据えた出場枠争いも激化! ワールドトライアスロンパラシリーズが2年ぶりに横浜で開催』