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Sports /競技を知る
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新人とベテランが魅せた! 全日本ローイング選手権「初のデッドヒート」の裏側
東京2020パラリンピックの舞台となった海の森水上競技場で、第104回全日本ローイング選手権・パラローイング種目が開催され、激しい首位争いが見るものを熱狂させた。
有安・下村ペア、信頼が生んだ逆転劇
6月6日に行われたPR3男子ペア決勝。この日は、水上が強い横風にさらされるタフなコンディションとなった。唐津ボートクラブ(有安諒平/下村朋孝)は、前日の予備レースでは3クルー中3位。競技歴わずか半年の新人で片下腿義足の下村がバウ(艇の進行方向・前方)を担当し、視覚障がいのある有安がストローク(後方)でオールを操作する。
左右の漕手がそれぞれ1本のオールを操るペア種目では、2人の出力にわずかでも差があれば、艇を直進させることすら難しい。スタート直後、彼らはなかなか直進できず苦戦を強いられた。

下村は片足義足のためレンジ(漕ぐ幅)がどうしても狭くなってしまう。そこを、有安が歩み寄り、お互いの長さをすり合わせて1本を強く漕げるところを探していった。
まっすぐ進めなくても有安はポジティブだった。前日の予備レースでは、左側を漕ぐ下村の出力の比重が高かったが、この日の決勝は、右側を漕ぐ有安に負荷がかかる風が吹いていた。「このコンディションなら、(経験の浅い)下村選手よりも僕が頑張ればいいだけ。ラッキーだった」と有安は振り返る。2人でしっかり練習を積んできた自信も後押しし、レース終盤は「自然にギアが上がっていった」。

身体の限界が近づく1500mを過ぎ、前を行く倶楽部KBC(佐野靖典/西岡利拡)との距離が近づいていくと、「ここは1本1本確実に」と有安が下村に声をかける。
負けん気が強いという下村も、このときは逸る気持ちを抑えていた。「初めてのレースだった昨日は、勝ちたい気持ちが先走ってしまった。今日はそれを内に秘め、自分の漕ぎに集中した」

フィニッシュ手前の観客がいるエリアで唐津ボートクラブが倶楽部KBCを抜き去った。
その後、フィニッシュ直前でブレードがブイに当たるアクシデントがあったものの、艇が止まることはなかった。そのままフィニッシュラインを通過し、見事な逆転勝利を飾った有安と下村は、拳を突き合わせて互いの健闘を称え合った。
有安はほっと胸をなでおろし、下村は「楽しく漕ぐことができて結果もついてきた」と、充実感に満ちた笑顔を見せた。
8月に世界選手権(オランダ)を控え、この後には選考会も予定されている。パラローイング日本チームの育成指定選手である下村は、PR3 舵手つきフォアで初の日本代表を狙う。「このいい流れに乗って、(強化指定選手で代表有力候補の)有安さんと同じ艇にまた乗れるようにがんばりたい」と気合を入れた。


圧倒的なストロークで森が王者に
全日本のパラローイングにおいて、3クルーが出艇したのは今回が初めて。昨年は2クルーの出艇にとどまり、タイム差も開いていただけに、今回は見応えのあるレースとなり、関係者らも喜びを隠しきれない様子だった。

養和会の森卓也が優勝したPR1男子シングルスカルは、2クルーでレースを実施。全日本で正式にパラのレースが実施されるのは3回目であり、パリ2024パラリンピックにパラローイング日本代表として唯一出場した森は、国内で大会に出場できる喜びをこう語る。
「以前は国内に大会がなく、わざわざ海外まで行って出場する状態だったのが、国内で戦える環境を作ってもらえているのがありがたい。これを途切れさせないように、2クルーが3クルー、4クルーと増えていき、最終的に6レーンすべてが埋まるようになれば、競技の盛り上がりもまったく違うだろうなと思います」
2021年に競技を始めた51歳の森は、2023年に車いすの陸上競技から転向してきた百武強士(唐津ボートクラブ)について、「後輩に教えてあげたい気持ちも、ライバルがいる怖さも両方ある」と語る。タイム差は3分弱あったが、先にフィニッシュした後も、百武に檄を飛ばす姿が印象的だった。

これまではケガが多く、思うような基礎練習を積めずにレースに臨むことを余儀なくされていた森は、この1年間、ケガがなく、1本ずつできるだけゆっくり長くオールを使う効率のいい動き方を練習できていると言い、「初めて自分の成長を実感できている」と手ごたえを語る。

「これを続けてもっと正確さを出し、ロサンゼルスパラリンピックにつなげたいなと思います」
国内に生まれた「競い合える環境」を追い風に、選手たちはこれからも力強く進み続ける。

text by Asuka Senaga
photo by X-1






