ブラインドサッカー日本選手権・Avanzareつくばが2年ぶりの栄冠!

ブラインドサッカー日本選手権・Avanzareつくばが2年ぶりの栄冠!
2018.07.12.THU 公開

ブラインドサッカーのクラブチーム日本一を決める頂上決戦「第17回アクサブレイブカップブラインドサッカー日本選手権」は、予選ラウンドとFINALラウンドの末、Avanzareつくばが21チームの頂点に立った。

17回目の日本一決定戦に過去最多の21チームが出場

日本代表のキャプテンを務める川村怜が大会MVPの活躍!

全国のクラブチームが一堂に会し、ブラインドサッカー日本一を決める日本選手権。始まりは2003年で、当時の出場チームは4チームだった。

17回目を迎えた今年は、昨年の19チームを上回る21チームに増加。現在のところ、日本選手権に出場するための予選はなく、史上最多のチームが参加したことになる。

増加の要因は複数ある。ひとつは毎年秋から冬にかけて地域リーグが行われており、各地域で試合や普及活動が実施されていること。他には、ブラインドサッカーは視覚障がい者のためのスポーツだが、フィールドプレーヤー4人のうち晴眼プレーヤーが2人まで出場できる国内ルールが設けられている。そのため、全盲の選手が少なくても大会にエントリーできることなどが挙げられる。

日本代表でも活躍する、たまハッサーズの黒田智成

もちろん、競技のレベルも上がった。第1回から出場し、2006年から2008年まで3回連続でMVPを獲得している黒田智成(たまハッサーズ)は、長い年月を振り返ってこう話す。
「個々の技術だけでなく、ブラインドサッカー独特のディフェンスの仕方など戦術もすごくレベルアップしたと思います。第1回はというと、半ズボンで出場しなければならないことを知らずに、ひざをすりむきたくないから長ズボンで大会に臨んだくらいです(笑)」

かくして、ボトムアップによる好ゲームが繰り広げられた今年の日本選手権。今回で3年目となる観戦チケットの有料化は、決勝戦を行うFINALラウンドで実施され、指定席チケット200枚が完売。主催者発表によると、予選ラウンドから3日間併せて1,925人が来場し、熱戦を見守った。

気温31度という暑さの中、観客は日本一の行方を見守った

2つの準決勝の勝敗を分けた重い1点

6月23日、24日の2日間にわたって総合学院テクノスカレッジ東京府中グラウンドで行われた予選ラウンドは、21チームが7組に分かれて総当たりの一回戦を戦った。その後、ナマーラ北海道(北海道札幌市)、free bird mejirodai(東京都文京区)など各グループ1位と、2位チームのうち勝ち点、得失点、総得点で1位だったたまハッサーズ(東京都多摩地区)の計8チームが決勝トーナメントに進出。準々決勝と準決勝が行われた。

そして、準決勝。前回優勝のたまハッサーズ・黒田が試合終了残り1分で得点し、埼玉T.Wingsを1-0で下して決勝へ。試合後、黒田は、「(ともに日本代表チームで活躍する日向賢、田中章仁はもちろんのこと)チームみんなが成長し、いろんなかたちでゴールが生まれるようになった」と喜んだ。

Avanzareつくば(茨木県つくば市)とコルジャ仙台ブラインドサッカークラブ(宮城県仙台市)の対戦となった、もうひとつの準決勝も、劇的な幕切れだった。Avanzareつくばの猛攻に対して、創設以来初のベスト4進出を果たしたコルジャ仙台ブラインドサッカークラブが鉄壁の守備を見せる。しかし、試合終了を告げる審判の笛が鳴る前に、試合終了のブザーが鳴り、そのわずかな間にAvanzareつくばの川村怜が見事なゴールを決めて1-0で勝利。「打ってこの試合を終わりたかったし、最後にやっとイメージ通りのシュートを冷静に打てた」と笑顔を見せる川村に対し、昨年まで日本フットサルリーグ(Fリーグ)のヴォスクオーレ仙台でプレーしていた、コルジャ仙台ブラインドサッカークラブのGK佐々木智昭は、ゴールをがら空きにさせてしまい、「Fリーグではブザーが鳴ったら終わり。僕の経験と認知不足で、みんなのがんばりを台無しにしてしまった」とうなだれた。

堅守で引っ張り、コルジャ仙台ブラインドサッカークラブをベスト4に導いたGK佐々木智昭

エース封じに成功したAvanzareつくば

その二週間後、味の素スタジアムに隣接するアミノバイタルフィールドで決勝が行われた。たまハッサーズとAvanzareつくばは、長年のライバル関係にある。また、両チームとも日本代表選手を複数擁する強豪で、何度も対戦したことがある、いわば手の内を知り尽くしたもの同士だ。

「攻守の切り替えが速い、見ている人が面白いような試合になるんじゃないかな」。
事前に川村がそう予想した通り、決勝は白熱した試合になった。

試合が動いたのは、前半11分。右サイドで相手からボールを奪ったAvanzareつくば・川村が駆け上がり、左サイドで相手選手3人に囲まれたものの、相手の寄せが甘くなった瞬間、身体を反転させ右足を振り抜き、ファーサイドにボールを突き刺した。
その後も競り合いは続いたものの、流れは徐々にAvanzareつくばに傾いていく。たまハッサーズのエース黒田を封じようの自陣に引いて守り攻撃のチャンスを伺うAvanzareつくばに対し、「いつも通り」前がかりなたまハッサーズは、黒田と田中が果敢に突進。そのため、前線とディフェンスラインの間に広いスペースが生じていた。
そして後半15分、山川聖立からのパスをトラップした川村が一閃。相手選手に当たってコースが変わったボールは、日本代表でも活躍する百戦錬磨のGK佐藤大介もとらえきれず、ゴールに吸い込まれた。さらに17分、山川がミドルシュートをたたき込むダメ押し弾。3-0で勝利したAvanzareつくばが2年ぶり9度目の優勝を達成した。

大会を終え、Avanzareつくばの選手やスタッフに胴上げされた魚住稿監督は、こう決意を述べた。
「日本選手権は、過去に4連覇を2回しており、今日の1回を含めて9回目の優勝となった。前回5連覇を目指して悔しい思いをしたので、自分たちを超えること、5連覇を目指して、これからも一勝一勝積み重ねていきたい」

なお、MVPは川村怜(Avanzareつくば)、ベストGK賞は初のベスト4進出を果たした佐々木智昭(コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ)、そして最多得点は12点を記録した菊島宙選手(埼玉T.Wings)がそれぞれ受賞した。

埼玉T.Wingsの高校生プレーヤー、菊島宙(写真左)は女子の日本代表チームでも活躍

text by TEAM A
photo by X-1

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