2017.02.06

【パワーリフティング】[ユニバーサルアートフェスティバルinすみだ]2020を目指す女性アスリート、オリンピアン三宅宏実とパラアスリート山本恵理がトークショー

2月4日、5日の2日間、墨田区立両国中学校・格技室にて「ユニバーサルアートフェスティバル in すみだ」が開催され、4日には「スポーツの魅力、夢見るチカラ」と題し、ウエイトリフティング選手でリオデジャネイロオリンピックの銅メダル獲得が記憶に新しい三宅宏実さん(以下敬称略)と、パワーリフティングでパラリンピック出場を目指すマクドナルド・山本恵理がトークショーを行い、夢や競技にかける情熱、そして2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けるおもいを語った。

パワーリフティングを競技として本格的に開始してまだ9ヵ月という山本は、競技を始めてからずっと憧れていた三宅との対面に「夢が叶った!」と興奮気味。三宅も山本とは年齢が近いこともあって、初対面ながら打ち解けた様子でトークを繰り広げた。

パラリンピックのパワーリフティングとオリンピックのウエイトリフティングの違いとは?

ウエイトリフティングとパワーリフティングは“バーベルを持ち上げて誰がいちばん力持ちかを競う競技”だが、似ているようで全く異なる競技。ウエイトリフティングは「スナッチ」と「クリーン&ジャーク」という2種目があり、それぞれ3回ずつ行い、各種目の最も重い重量のトータル重量を競い合う。一方、パラリンピックのパワーリフティングは、ベンチプレスのみで行う。さらに、ウエイトリフティングは背中を反らして全身の筋肉を使うが、パラ・パワーリフティングは、ベンチに横たわった状態でバーベルを持ち上げるため上半身の筋肉でバーベルを持ち上げる点が大きな違いだ。
※一般のベンチプレスは脚が床に着いた状態で行われるが、下肢に障がいのある選手が行うパラ・パワーリフティングは、専用のベンチプレス台に脚を固定して全身が台の上に乗った状態で行われる。


「多くのゲストが訪れる2020年までに英語を話せるようになりたい」と三宅

まず、ふたりにそれぞれの競技を始めたきっかけについての質問がなされ、三宅は「中学3年のときにシドニーオリンピックを見て、自分も出場したいと思いウエイトリフティングを始めました」と回答。山本は「パラスポーツの体験会でパワーリフティングを試したところ、そこで40㎏を持ち上げられたんです。そうしたら周りがびっくりして、本格的に競技に取り組むよう説得されました」とのエピソードを披露。それを聞いた三宅は「40㎏は重いですね。私ですらベンチプレスの最高重量は55㎏ですよ」と驚いた様子だった。



4大会連続でオリンピック出場に出場し、ロンドンとリオデジャネイロでメダルを獲得している三宅は、競技を始めたときからオリンピックを目指しており、メダリストでもありコーチでもある父の義行氏からは、「オリンピックでメダルを獲得すること、途中で逃げ出さないこと」の2つの条件を提示されたという。「アスリートにとってオリンピックを目指すこと、メダルを獲ることは夢であり、目標を持つ大切さを感じさせてくれる、そして心を成長させてくれるのがオリンピックなんです」と三宅。それを聞いてうなずく山本は、「参考になります。私も2020に向けて練習していますが、この競技を始めてまだ9ヵ月だし、本当にパラリンピックを目指せるのかなと思う時があります。でも周りが信じてくれるので、それが自分を前に進めてくれるパワーになっています。その力をもらいながら、毎日重いバーベルを持ち上げています」。

トークショーでは、三宅がリオデジャネイロオリンピックで獲得した銅メダルを披露する一幕もあり、会場からは拍手が沸いた。オリンピック出場、そしてメダル獲得の夢を叶えた三宅は、夢の叶え方について「目標を達成するためには準備、計画、実行が大切です。でも計画しても8割、9割いつも失敗してしまいます。結果につながっている部分を分析して、その部分を積み重ねていきます。一歩ずつ目標に向かってトライしていくことですね」と実感を込めて語った。

続いてのお題は、日々のトレーニングについて。「基本はスクワット、デッドリフト、ベンチプレスで鍛えます。筋肉を部分的に鍛えてから総合的に仕上げるというやり方で、冬場の今は筋力系のトレーニングで筋肉をしっかり太くし、春先になったら瞬発力を鍛えます」と語る三宅に対し、山本は「練習メニューは大会に合わせて3ヵ月サイクルで組んでいます。スピード力を上げる日、重いものにトライする日など違いがあります。よく、今何㎏持ち上げられるの?と聞かれますが、100%の力を出してしまうと、その後1週間はバーベルを持ち上げられなくなるので、練習では常に力をコントロールしています」と答えた。

三宅「壁を乗り越えてもまた違う試練がやってくる」 山本「壁をよじ登るのが楽しい」

限界に挑戦するアスリートであるふたりは、練習でも「壁」にぶち当たることがある。
三宅は、こう話す。
「壁が目に前にあるとしたら、それを自分の力でコツコツ乗り越えていくしかないですね。でも、それを乗り越えてもまた違う試練がやって来ます。その繰り返しがやりがいだし、楽しさでもあります。困難は自分を成長させてくれます。くじけそうになることもありますが、まだ叶えられていない夢があるのでやめたいとは言いません」。


憧れのオリンピアンと対談する山本

一方、山本は「私は、この競技を始めたばかりで、壁がどの程度の壁なのかわかりませんが、登っているとしたらよじ登っている感じです。立ち行かなくなったときは信頼できる人たちと話をすれば、自分だけじゃないって思えるはずです。だから壁を乗り越えられないと思ったことはありません。それすら楽しいと今は思っています」と笑顔で話した。パラスポーツを学ぶためにカナダに大学院留学していた山本は、9歳で水泳をはじめ、アイススレッジホッケー(専用のソリに乗り、左右の手にスティックを一本ずつ持ってプレーするアイスホッケー)ではカナダ代表の経験も持つ。そんな中でも、「自分自身と戦う」パワーリフティングが一番楽しいと言う。



最後に、ふたりはそれぞれ2017年の目標、そして2020年に向ける意気込みを語った。

「今年は2018年に芽を出すための1年にしたいです。とくに食事は体をつくる大切な要素なので、母から料理を学び、食事を自分で作れるようになりながら体を整えたいですね。2020年までもう3年半。しっかり備えて、体力の限界に挑戦して、チャレンジャーの気持ちも忘れずに、まずはオリンピック出場を果たして、もうひとつの夢をかなえたいです。また、オリンピック・パラリンピックは選手だけのものではありません。みんなが参加できる大会でもあるので、たくさんの人たちと東京大会を盛り上げられたらと思います」(三宅)

「まずは、時間管理です。仕事とアスリートを両立している今、自分の中に2020年のパラリンピックを支えたいおもいと、自分自身が選手としてパラリンピックにも出たい気持ちの両方が存在しています。どちらかひとつだけを選ぶことはできないので、両方やり遂げる覚悟を決めて、仕事も練習も集中して取り組み、時間管理をしっかり行って両方成功させたいですね。それから、パラスポーツやパラリンピックは馴染みがありません。このようなイベントなどをきっかけに興味を持ってもらえたら嬉しいですし、パラスポーツを知ることで2020年をもっと楽しめるようになります。多くの方々と楽しいパラリンピックにできたらいいなと思っています」(山本)

オリンピックのメダリストとしてさらなる高みに挑戦する三宅と、パラリンピックを下支えしながら競技に取り組む山本。2020の大舞台を目指すふたりの女性アスリートからは、競技を楽しむことを忘れない、そんな“i enjoy”精神が溢れていた。


観客は小さい体で活躍するふたりのトークにひき込まれた


いつも笑顔の山本は「“楽しもう”がモットー」


text by TEAM A,photo by X-1
  • Share on Facebook
  • Share on Twitter
  • Share on Google+