地球上で最も筋力を必要とするスポーツといわれる「パワーリフティング」。一般のパワーリフティングでは、「スクワット」「ベンチプレス」「デッドリフト」の三種目で持ち上げた総重量で競うが、下肢障がいのある選手が行う「パラ・パワーリフティング」ではベンチプレスのみが採用されており、基本的には一般のベンチプレスに準じたルールで試技が行われる。
実際の試技は、選手が台上に仰向けになり、バーベルを押し上げる。一般のベンチプレスでは足を地面に着け、踏ん張る力も利用してバーベルを持ち上げるが、パラ・パワーリフティングでは全身をベンチプレス台の上に乗せるため、この踏ん張りが効かず、まさにほぼ上半身の力だけであの重いバーベルを持ち上げることになる。そして驚くべきことに、トップレベルになると男子で最軽量の49kg級の選手でも優に自分の体重の2倍以上のバーベルを持ち上げるのだ。
ここで普段の生活を想像してみてほしい。私たちが何か重いものを持ち上げるとき、必ずといっていいほど下半身の力を頼っている。それを考えると、上半身のみの力でバーベルを持ち上げるパラ・パワーリフティングが、いかに難しいかが理解できるだろう。
また他のスポーツでは、試合の経過とともに緊張がほぐれたり、次第に実力を発揮できるようになることが多々あるが、パワーリフティングでは準備後すぐにバーベルを持ち上げなければならない。試技の時間も約3秒という超高速の競技のため、一瞬の気の緩みや過度な緊張が命取りになるのだ。
この緊張感を克服し、3秒の戦いに4年間の練習成果の全てを集約させる強靭な精神力こそが、パワーリフティング競技の肝なのだ。