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水泳
平泳ぎがクロールより速い!? 選手によって異なる泳ぎがスゴイ「パラ水泳」とは?
2019.07.01.MON 公開
「パラ水泳」ってどんなスポーツ?
簡単に言うと・・・
①タイムを競う点は、一般の水泳と同じ
②選手は同程度の競技能力同士で競う
③コーチやスタッフのサポートも注目度大
パラ水泳は、基本的に国際水泳連盟のルールに準じているので、一般の水泳と同じ競技用プールを使用し、自由形、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライといった泳法の種類も同じ。障がいの種類によって多少のルール変更はあるが、難しいルールは特になく、誰の泳ぎが一番速いかをシンプルに楽しめる競技だ。
一般の水泳との一番の違いは選手がクラス分けされているところ。パラ水泳では、同程度の障がいごとに細かく分けられたクラス内で公平に戦い、競技能力に差が生まれないようにしている。クラス分けを行うのは、クラス分け委員という存在。公認の資格が必要で、医師や理学療法士、コーチやトレーナーが行っている場合が多い。水泳に必要な筋力や関節の可動域などのチェックを行い、また実際に泳いでいる姿も見て総合的に競技能力を見極めてクラスを決めている。公平なレースが行われるために、非常に重要な役割を担っているのだ。
一般の水泳と何が違うの?
①スタート方法は人により違う!? スタート前から目が離せない!
パラ水泳独自のルールと言える一つがスタート方法だ。飛び込みスタートがスタンダードだが、障がいによって飛び込めない場合は水中からのスタートが認められている。
背泳ぎはスターティンググリップを握ってのスタートとなるが、障がいによって握れない選手はベルトや取り付け式用具といった補助具を使用。ひもやタオルを口にくわえて身体を支える選手も!
聴覚障がいのある選手の場合は、スタート音が聴こえないため、スターターが身振りで合図を伝える。またシグナルでスタートを知らせる場合もあり、飛び込み台の足元に設置されたり、水中からのスタートの場合は台の上にシグナルが置かれたりもする。
② 白熱の勝負を支えるサポーターの存在
選手の怪我を防止したり、競技を円滑に進めるために重要な役割を果たすコーチやスタッフの存在にも注目だ。場合によっては、プールへの入水や競技が終わった後に退水させるなど、選手の手助けをする。また、スタート時にも様々な形でサポートを行う。足の裏が離れないように固定するフィートスタートをはじめ、スターティンググリップを握ることができない場合は身体を固定したり、スタート台の上で支えたりすることも。
こうして障がいの重い選手も、日々の厳しい練習をコーチやスタッフと共に積み重ねていく。そして深まっていくその信頼関係によって、選手は勝利へと繋がる最高のパフォーマンスを発揮するのだ。
③ 正確なタッピングが勝敗を分ける!
視覚障がい者がターンやゴールで壁にぶつかってしまうのを防ぐために、重要なのがタッピングと言われるサポート。もうすぐ壁ですよ、とタッピングバーを使用して知らせるのがタッパーの役割だ。
タッピングのタイミングは早すぎても遅すぎてもダメで、タッチの強弱も大切。わずかなタイム差が勝敗を分ける勝負の世界では、選手とタッパーのあうんの呼吸が必要となる。レースで最高の結果を出すために、日々の厳しい練習でコンビネーションを高めているのだ。
そして、使用しているタッピングバーは実は手作り。日本は釣り竿をベースに改良したものが多く、程よいしなりと高い完成度で、海外チームから話題になっているとか。一番最初に「釣り竿で作ってみたらどうだろう?」と考えた人は偉大なり。
他にも上半身の一部でタッチをしたり、平泳ぎで禁止事項のあおり足の一部許可など、独自ルールもあるので、知っておくとより面白く競技を観戦できる。
ココに注目!観戦が面白くなるポイントは?
①「まっすぐ泳ぐ」ことは一日にして成らず
通常「まっすぐ泳ぐ」ことは当然、と思いがちだが、片足切断や半身まひ、全盲の選手らにとってはそうではない。その裏で血のにじむような努力を行っているのだ。
例えば、 片腕しかない選手が片手だけで水をかいて真っ直ぐ進むのは難しい。また、全盲の選手は、泳ぎ方を見て学ぶことができないので、ひたすら泳いで身体に覚えさせるしかないという人もいる。計り知れないほどの練習量と、自分に合う泳ぎ方を試行錯誤した結果、まっすぐ泳ぐことを可能にしているのだ。選手たちのたゆまぬ努力に思いを馳せ、敬意を送りながら観戦しよう。
②自由形種目に、平泳ぎで参加!?
毎年のようにレコードタイムが更新される水泳競技。選手たちの実力の向上はもちろんのこと、速く泳ぐことのメカニズムがほぼ解明され、理論化されているのも大きい。しかし、障がいがあると一般的に良しとされている泳ぎ方がベストとは限らないのがパラ水泳の面白いところ。
障がいによってクロールより平泳ぎのほうが速い選手もいるので、自由形種目に平泳ぎで出場する場合もある。クロールVS平泳ぎ、という違う泳法同士の接戦を観られるのは、一般の水泳競技にはない面白さだ。
選手それぞれが、日々の努力で修得する自分にとってベストの泳ぎ方。それをオリジナルへと昇華し、大会で思う存分発揮する。パラ水泳の大会は、まさにオリジナリティあふれる泳ぎ方の宝庫なのである。
パラ水泳に注目しよう!
関東や近畿といった地域ごとに行われる大会や、年に一度行われる「日本パラ水泳選手権大会」、国内最高峰の「ジャパンパラ競技大会」など、パラ水泳は年間を通して多数の競技会が開催されている。
基礎知識はほとんど必要ないので、ただ純粋にトップ選手たちの泳ぎを楽しめばいい。持てる身体能力を最大限に活かしたその泳ぎに驚き、百分の一秒を争う手に汗を握る勝負を見届けよう。さらにはコーチやスタッフの献身的なサポート風景やタッピングなどにも注目すると、より一層パラ水泳を楽しめるはずだ。
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text by Jun Nakazawa(Parasapo Lab)
photo by Getty Images Sport
参考資料:かんたん水泳ガイド(公益財団法人日本パラスポーツ協会)