2016.02.04

【陸上競技】[第1回日本IDハーフマラソン選手権大会]日本初開催の大会で金子遼が初代王者に!

日本知的障がい者陸上競技連盟(JIDAF)が主催する、「第1回日本IDハーフマラソン選手権大会」が1月31日、東京・明治神宮野球場をメイン会場に開催され、JIDAF強化指定選手を中心にハーフの部に男子18人、女子1人、10kmの部に男子23人、女子7人が出場した。
なお、「ID」は知的障がいを意味する“Intellectual Disability”の頭文字に由来する。

金子が圧巻の走り

 日本知的障がい者陸上競技連盟(JIDAF)が主催する、「第1回日本IDハーフマラソン選手権大会」が1月31日、東京・明治神宮野球場をメイン会場に開催され、JIDAF強化指定選手を中心にハーフの部に男子18人、女子1人、10kmの部に男子23人、女子7人が出場した。


トップ集団を形成した金子(写真左)

金子はスタートから他のID選手を引き離し、一般選手2人と先頭集団を形成。185cmの長身と長い手足によるダイナミックなフォームは力強く、しばしば前に出て集団を引っ張る積極的なレースを展開した。残り約2km地点で、総合優勝した平塚潤(TEAM R×L)がスパートして離されたが、最後まで食らいつき、5秒差でフィニッシュした。

「(第1回目のID大会だったので)優勝を狙って走って、(目標通り)いけました」と振り返ったが、総合では2位だったことで、「あそこまで行ったら、1位を獲りたかった。最後に抜かれてしまって悔しかったです」と負けず嫌いな一面を垣間見せた。


金子はフルマラソンでも公認の世界最高記録・日本最高記録(2時間26分15秒)を持ち、昨年12月の防府マラソンでは2時間24分台で走って自己ベストを更新したばかりだ。練習の拠点は地元の走友会で、健常者と切磋琢磨しながら、走り込み期には週末の2日間で90kmを走破したり、スピード練習にも取り組んだりしているという。「練習も仕事も頑張って、もっと上を目指します。次の目標は東京マラソンで、フルの2時間23分切りです」と意気込む。

ID選手たちが躍動!


総合入賞した久保田の走り

ハーフの部2位には久保田史郎(大阪走友会)が1時間14分07秒で入り、3位にはチームメートの余村直彦(同)が1時間14分25秒で続いた。総合でも6位に入った久保田は、「フルマラソンに出たばかりだったが、順位も記録も思ったより、よかったです」と話し、余村は「気持ちよく走りました。坂道も頑張れました」と振り返った。

男子10kmの部を制したのは金箱浩史(横浜ウィンズ)で、タイムは34分46秒だった。「ベストタイムが32分台なので、もう少し速く走りたかった。悔しいです」と話した。2位には門田丈幸(堺ファインズ)、3位には常葉一統(都立青峰学園)が入った。3選手は総合順位でも健闘。金箱が5位、門田が6位、常葉は8位だった。


「女子は38分25秒で1位だった阿利美咲(吉野川市陸協)が総合優勝も果たし、強さを見せた。43分12秒で2位の黛涼子(J・ファミリー)も総合4位と健闘した。


金箱が男子10kmを制した


女子10kmで総合優勝した阿利


ID陸上の現状は?


第1回大会のハーフの部に入賞した選手たち

 知的障がい選手を対象とする、さまざまな競技は国際知的障がい者スポーツ連盟(INAS)が統括している。障がい別にクラス分けして競技を行なう陸上競技ではT20(トラック)、F20(フィールド)がID選手を対象とするクラスだ。パラリンピックの陸上競技では、2012年ロンドン大会からIDクラスも含まれるようになったばかりで、まだ実施種目も少ない。リオパラリンピックで実施されるのは、男女4種目(400m、1500m、走り幅跳び、砲丸投げ)のみで、2020年東京大会での実施種目は今年中に決まる予定となっている。


日本の国内大会では100m走から、跳躍や投擲までさまざまな種目が実施されている。JIDAFでは25人を強化指定選手として選び、トレーニングや栄養指導、合宿などを行って強化を図っているものの、リオで実施の4種目については、日本勢は女子1500mの世界ランキング7位が最高と、なかなか厳しいのが現状だ。

だが、長距離走では強さを見せる。今大会を制した金子が昨年5月のハーフ世界選手権(ポルトガル)で銅メダル、10月の世界選手権(カタール・ドーハ)では中川大輔(三菱自動車工業)が5000mで金メダルを獲得するなど、実績がある。世界で戦える種目として、さらなる普及・強化が期待されている。

現在、INAS主催大会としてはハーフマラソンが最長距離で、毎年、ハーフ世界選手権が主にヨーロッパで開催されている。JIDAFの浅野武男事務局長によれば、今回のハーフ日本選手権の開催は、まずはID競技の普及や強化を目指し、国内大会の整備を第一に、近い将来には国際大会招致も視野に入れたものだという。

さらに、事務局長は大会を通して、「外見からは分かりにくい、IDという障害や競技に対する理解と認知度を高めること。そして、新たな選手の発掘とともに、選手に対して国際大会に関する情報や心がまえなどを伝えられたら」と話す。

今回は大会実行委員会や新宿区の理解と支援もあり、新宿シティハーフマラソン大会での同時開催が実現したが、同大会は今年で14回目という運営実績があり、交通の便もよく、さまざまな種目に1万人以上の選手が参加する人気大会だ。ID大会の実施については大会開会式でも紹介され、競技進行中も周回コースのスタート地点にID選手が戻ってくると時折アナウンスで声援を促すなど、大会側の細かな配慮も感じられた。JIDAFが掲げる目標達成に向け、大きな一歩となったのではないだろうか。

ID選手たちも期待に応えるかのように、全員が無事完走し、総合順位でも健闘した。今後のさらなる活躍に注目したい。


一般ランナーと同時にスタートした


男子10kmの表彰の様子


text by Kyoko Hoshino
photo by X-1
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