愛知県蒲郡市に誕生! 無料で楽しめるコミュニティパークが秘めた「共生社会」への可能性。多目的施設で幅広い世代の交流を目指す

愛知県蒲郡市に誕生! 無料で楽しめるコミュニティパークが秘めた「共生社会」への可能性。多目的施設で幅広い世代の交流を目指す
2025.05.19.MON 公開

2025年4月27日、愛知県蒲郡市(がまごおりし)に待望のコミュニティパーク「Gruun(グルーン)がまごおり」がオープンした。BOATRACE蒲郡の敷地内の南駐車場スペースに新設。子どもが遊べる場の提供と、地域の人が触れ合う施設整備を方針に掲げ、「多世代の交流ができるコミュニティの拠点」というにふさわしい施設が完成した。

オープン前日の26日に行われた完成記念式典では、さまざまなスポーツの体験やデモンストレーションを実施。障がいの有無や世代を越えて多くの人の笑顔が溢れ、地域において多世代が楽しめる空間があることの可能性を感じさせた。

誰もが楽しめる多目的な施設

完成を記念したバナーには地元の子どもたちから寄せ書きが

Grunnがまごおりは、スポーツの一歩手前、「からだを動かす」を身近に感じることができる場所だ。特長は、健康づくり、交流の機会、地域連携の3つが揃った誰でも利用できる無料の公園であること。
屋外にはスケートボードとフットサル、バスケットボールができる3面の多目的コートに加え、ゆったりと過ごせる芝生広場や1周375mのランニングコース、若者からシニアまで自分に合った負荷で自由にトレーニングやストレッチができるアウトドアフィットネスエリアを設置。

屋内は事務室と更衣室に加え、交流の場として会議や遊びプログラム、トレーニングができるマルチスタジオ、休憩や飲食スペースとして利用可能なレストエリアを完備している。

注目すべきは特定のスポーツ施設を連想させる名称を使っていないところ。公式WEBサイトにはそれぞれ「スポーツコートにバスケットのゴールが2基設置」、「人工芝コートにフットサルゴールが設置」と記載があるものの、「どなたでも様々な運動を楽しめます」としており、他ならスケートボードパークと記載するであろう施設も「様々な難易度のセクション(スケートボード等でトリックを仕掛ける障害物の総称)が設置された本格的なコート」に留めており、これらは全て多目的コートと呼んでいる。屋内エリアも”マルチ”スタジオと名付けるなど、多様な活動の場となり、さまざまな可能性を広げようとする施設の姿勢を感じることができる。

多くの地元住民が内覧会でパラスポーツを体験

皆でハートをつくってはい、チーズ!

「誰もが利用できる」場所であるGrunnがまごおり。もちろん障がいのあるなしに関わらず楽しむことができる。オープン前日の26日に開催された完成記念式典と内覧会では、一般のスポーツとともにさまざまなパラスポーツの紹介も行われた。

さまざまなスポーツのデモンストレーションや体験会が行われた

内覧会では豪華ゲストを招き、バスケットゴールがあるAコートで車いすバスケットボール 、ボッチャ 、パラカヌー(エルゴメーター)、パラ陸上(レーサー)、フットサルゴールがあるBコートでアンプティサッカーとブラインドサッカー、そしてセクションが設置されたCコートでスケートボード、といった具合にコートごとにデモンストレーションと体験会が行われた。

そこでは多くの地元住民がオープンを祝うと同時に、様々な競技と触れあう様子が見られた。新たな経験が新たな交流を生み、多くの笑顔が溢れる。そんな素晴らしい光景が広がっていた。

式典の最後には鈴木市長のほか、パラアスリートや南知多ユニバーサルビーチプロジェクトの皆さんも登壇し、一緒にテープカットを行った

完成記念式典では鈴木寿明蒲郡市長が「ボートレース場のパーク化の一環として地元の理解と協力を得て完成しました。親しまれ、より地域に根付いていけるように万全を尽くしていきます」とあいさつ。
愛知県出身で、2010年のバンクーバーパラリンピックから4大会連続でクロスカントリースキーなどに出場しているパラアスリートの佐藤圭一選手は、パラスポーツが発展していく上で素晴らしい施設になっていくことへの願いを語った。

式典に登壇した佐藤圭一選手

「パラスポーツ含め、色々なスポーツを体験できる場があるのはすごく良いと思います。障がいのある子どもたちが様々なスポーツを体験することで、そこから新しいパラアスリートが生まれたり、また健常者の子どもも新しい競技を体験することでスポーツに親しみ、アスリートが生まれる可能性もあると思います。未来を感じたコミュニティパークでした」(佐藤圭一選手)

ゲストが感じたコミュニティパークの新たな可能性

ブラインドサッカーにチャレンジする北澤豪さん

完成記念式典と内覧会には各競技を代表する豪華ゲストも来場。会場に華を添えてくれただけでなく、Gruunがまごおりから広がる新たな可能性についても語ってくれた。

元サッカー日本代表で日本障がい者サッカー連盟会長を務めている北澤豪さんは「気づきを与える場になっていくのでは」とのこと。

「インクルーシブな社会や共生社会の実現には、、こういった場があることが大きな入り口だと思います。デモンストレーションで見せて、みんながその知識を持つと楽しめることが増えていくはずです。友だちも増えるだろうし、本格的なコミュニティ作りですよね。
もともとボートレース場があって人が集まる場所ではあったと思いますが、これからは子どもたち世代だったり、高齢の方たちとも出会える場所になっていくのではないでしょうか。そうなった時に、家庭では祖父母との関わり方につながる発見があったり、子ども社会にもっとユニバーサルなものを考えていかなきゃいけないとか、あらゆる人に気づきを与えてくれるのではないかと思います。
気づきはやってみることで得られるものでもあり、我々がいくら主張しても皆が感じないと広がりません。場があることはチャレンジに繋がります。(Gruunがまごおりは)気づきと広がりの場所になっていくのではないでしょうか」(北澤さん)

蒲郡と同じ愛知に本拠地を置くJリーグ・名古屋グランパスで活躍した経歴を持つ阿部翔平さんは、新たな交流の場としての未来に期待を寄せる。

子どもたちと笑顔で楽しむ阿部翔平さん

「子どもたちの笑顔が何よりというのと、喜んでいる姿を見て大人たちも元気づけられているなと感じました。家族連れで訪れて、多くの方々と交流を図ることが大事かなと思います。
今は地域の付き合いが少し薄らいでいるように思いますが、こういうところに皆さんが集まることで、それをきっかけに仲良くなり、絆を深めていく。それができると感じた施設でした」(阿部さん)

近年、全国の自治体で施設整備が進んでいるアーバンスポーツ施設。ここにも「共生」という言葉にピッタリな2名のゲストが招かれ、デモンストレーションで大きな歓声を浴びた。
大内龍成さんは網膜色素変性症により視野のほとんどを失っているが、ブラインドスケーターとして精力的に活動している。

白杖を持ちながらトリックを披露する大内龍成さん

「もともと自分は健常のスケーターと視覚に障がいのあるスケーターのコラボレーションがやりたかったので、今日はすごく楽しかったです。ゲスト同士互いに高め合って良いモチベーションで臨めましたし、最高の雰囲気でした。こういう施設が全国にどんどん増えていってほしいですね。 障がいのある方にも来てほしいですし、こういった遊びを通して障がいのある人と健常者が交われるのはすごくいいことだと思います。共生社会に向けた歩みがまた一歩進んだことを実感しました。
自分はいつかセクションにスピーカーを埋め込み、視覚に障がいのあるスケーターがトライする時に音が出せるようなパークを作りたいと思っています。まだまだ道のりは長いですが、こういう一つひとつのイベントが未来に繋がっていくと思うので、叶えられるようにこれからも頑張っていきたいと思います」(大内さん)

もう1人のゲストプロスケーターは地元愛知県出身の末松連さん。デフスケーター(聴覚に障がいのあるスケーター)の兄を持ち、幼少期から「障がい」や「共生」を身近なものとして感じながら過ごしてきた。

デモンストレーションで魅せる末松連さん

「スケートボードはそもそも練習できる場所が少ない中、こういう新しいスケートパークが愛知県にできて、練習する機会が増えることはすごく良いなと思いました。体験会も小さい子ばかりで初めて乗った子も多かったので、これからも楽しんでもらえたら嬉しいです。
僕の兄も聴覚に障がいがあるので、口パクでやりとりしながら一緒に生活し、スケートボードをしてきました。聞こえないのにできるって本当にすごいですし、基礎はもちろん僕の苦手な技も兄はできるので、僕も意地になって練習してきたところがあります。それくらい身近な存在だと、障がいがあることを忘れてしまうんですよ。

障がいのある人と一緒に取り組める空間があると施設が発信していって、実際にそうした交流が生まれていけば、僕が兄に対して思うのと同じように、社会も障がいのあるなしの違いを特別なことと思わなくなるのではないでしょうか。
この施設はその第一歩になったので、そういう意味でもすごく価値があると思いますし、今後はデフの大会やイベントも行なってくれたら嬉しいですね」(末松さん)

それぞれが感じ取ったGruunがまごおりの持つ新たな可能性。この波はいろいろなところに波及していくことだろう。

地元住民からも多く集まった喜びの声

子どもから大人まで、たくさんの地元住民が集まり、様々なスポーツを体験。大いに楽しんでいた

地元住民からも、この日は多くのスポーツが体験できるとあって一様に喜びの声が聞こえた。

「スケボーが楽しかった! バランス取るところが楽しかった!!」

「今日は体験できるものを全部やりました。車いすバスケが一番楽しかったです。シュートが難しかったけど、車いすが思った以上によく動くから面白かったです!」

「全競技やりました。やったことないのもできたので楽しかったです。中でもスケボーは思ったより難しかったけど、その分滑れた時がすごく楽しかったです。またやりたいです!」

といった子どもたちの声があれば、

「気軽に無料で体験できるところはなかなかないので、このような施設はありがたいです。土地を有効活用してくれて、市民に還元していただき、本当に助かります。駐車場の整備もしっかりされていて来やすいと思うので、今後も定期的に利用していきたいと思います」

「地元の蒲郡に素敵なところができてとても嬉しいです。子どもたちがすごく楽しんでくれたので、連れてきて良かったなと思いました。初めて経験するスポーツもいっぱいあったので、ぜひまた来てみたいです」

と、親御さんからも満足の声が多く聞こえた。これから新たな市民の憩いの場となっていきそうだ。

一人ひとりが思い思いの時間を過ごせる未来の施設、Gruunがまごおり

Gruunがまごおりが、多くの可能性を秘めた新しい公園であることは、多く方の言葉から感じ取ることができた。これまでのルールに縛られず、自由に空間を活かしていく、そんな未来の施設のあり方を提示しているのかもしれない。
多様な楽しみ方ができるこのパークで、コミュニティが広がり、時間の過ごし方が豊かになる。そんな日常が、今後「Gruunがまごおり」から広まっていくのではないだろうか。

text & photo by Yoshio Yoshida(Parasapo Lab)

『愛知県蒲郡市に誕生! 無料で楽しめるコミュニティパークが秘めた「共生社会」への可能性。多目的施設で幅広い世代の交流を目指す』

愛知県蒲郡市に誕生! 無料で楽しめるコミュニティパークが秘めた「共生社会」への可能性。多目的施設で幅広い世代の交流を目指す