スポーツクライミングと同時開催! 日本初の国際大会でロサンゼルスに向けてパラクライミングをアピール
国際スポーツクライミング連盟(IFSC)が主催する新設大会「IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025」が10月23日から4日間にわたって開催され、週末にあたる25日と26日にはパラクライミング競技も実施された。
主催者によると、健常者とパラクライマーが同じ舞台で競技を行うのは、日本国内では初めて。選手たちも「海外の国際大会では健常とパラが連続した日程で行うこともあるが、同じ日に行われた記憶はない」と話す。

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メディアや観客の関心を集めるうえでも、同時開催は意義のあること。今大会の舞台となった「筑豊緑地公園/いいづかスポーツ・リゾート ザ・リトリート」は、パラスポーツの中でも歴史がある「飯塚国際車いすテニス大会」と同じ会場だ。車いすテニスに続いてクライミングの聖地になるか――期待が集まっている。
東京オリンピック銀メダリストの野中生萌、パリオリンピック銀メダリスト安楽宙斗ら人気選手が出場したスポーツクライミング(国別対抗多戦)は、開場前に列ができる人気ぶりで、場内MCにリードされて観客も盛り上がる。日本は「リード」で2位、「ボルダー」で1位。ボルダーでは、圧巻の強さで観客を魅了した。

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そんな中、パラクライミングは日本、アメリカ、インドから計14選手が出場。有料チケットを購入した観客の前で、安定したパフォーマンスを見せた。

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異例のワーキングセッション
パラクライミング初日は、制限時間内で決勝と同じ課題に何度でも挑戦できる「ワーキングセッション」が行われた。

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今大会はワールドカップ遠征と日程が重なったことにより、複数のトップ選手が不在。さらに、新設大会ということもあるのか、出場選手も少なく、予定されていた障がいクラス別の競技は実現しなかった。
決勝は“無差別級”で争った
制限時間6分で高度を競う決勝は、出場選手が2グループに分かれ、異なるAとBそれぞれのルートで障がいクラスを超えて優勝を争った。
通常は、障がいの度合いや種類に合わせたルートが設定されるため、さまざまな状態の選手が同じルートを登ることはない。
2025年9月の世界選手権(韓国)で4位の岡田卓也は、「関節可動域および筋力とその他の機能障がいカテゴリー」の中でもっとも重度のRP1クラスの選手。序盤は軽快に登ったものの、前日のワーキングセッションでも苦戦した中間の難所をクリアできず、悔しさをにじませた。それでも「これまでいろんなクラスが混ざって同じ1本のルートを登ることはなかったので、楽しみながら登った」とポジティブに話した。

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9歳のときに髄膜脳炎を患った岡田。体幹にまひがあり、右半身に力が入りにくく、右に横移動をすることが難しい。この日は腕をクロスさせるムーブを試みるなどして粘り強さを見せた。
29歳でクライミングを始め、競技歴は今年で6年目。次の世界選手権をステップにし、ロサンゼルスで男子RP1の初代王者を目指すことを誓っていた。
世界選手権上位のパフォーマンスを披露
同じくロサンゼルスで金メダルを目指している片足クライマーの結城周平は、決勝で完登ならずも、Bグループ3位に。安定した体幹の強さでぐんぐん登り、ワーキングセッション時の高度を越えた。
ほぼ同日程でワールドカップ(フランス)が行われている中、日本開催である本大会に出場。観客から大きな拍手を受ける場面もあり「多くのお客さんが見てくれて、すごくうれしかった」と振り返る。
9月の世界選手権は自身過去最高の2位(男子AL2)だった。今年から、長めのボルダー課題を2周・5セット行う持久系トレーニングを取り入れた成果が結果につながっているという。
ロサンゼルスで表彰台の中央に立つには、絶対王者のフランス選手を倒さなければならないが、「少しずつ彼の背中に追いつきたい」と言葉に力を込めた。

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2028年にロサンゼルスで開催されるパラリンピックで実施されるのは男子「B1(視覚障がい)」、「RP1(関節可動域および筋力とその他の機能障がい)」、「AU2(上肢機能障がい)」「AL2(下肢機能障がい)」、女子「B2(視覚障がい)」「RP1」「AU2」「AL2」の8種目。選手層の厚い日本勢は、非実施種目でも金メダルを狙える実力派が揃う。大会中には、2032年のブリスベンで種目増加を願う声も聞こえた。

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「IFSCクライミンググランドファイナルズ福岡2025」パラクライミングのAグループは、1位が藤咲淳一(男子B2)、2位が前岡ミカ(女子B3) 、3位が青木宏美(女子B1)、Bグループは、1位が黒澤真吾(男子B3)、2位が山下和彦(男子RP3)、3位が結城という結果だった。

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text by TEAM A
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