ボッチャ日本選手権、“世界レベル”のBC2決勝 杉村vs廣瀬の結果は!?

ボッチャ日本選手権、“世界レベル”のBC2決勝 杉村vs廣瀬の結果は!?
2018.12.10.MON 公開

12月1日、2日の2日間、福島市国体記念体育館にて第20回日本ボッチャ選手権大会が開催された。

東西の各予選会を勝ち抜いた選手とシード選手のみが参加できる本大会は、個人戦(BC1~4)とオープンクラス(立位、座位)それぞれに分かれ、各クラスの日本一を決める。また、今大会の各クラス上位2人が、東京2020パラリンピック日本代表有力候補ともいえる、2019年の“火ノ玉ジャパン(※)”入りの内定を得られるとあって、選手たちの気合いは十分。それを見守る関係者も各試合に熱い視線を注いでいた。
※火ノ玉ジャパン:ボッチャ日本代表チームの愛称

地元メディアや観客が見守るなか行われた順位決定戦

世界で戦う選手たちが魅せた!

今回、パンフレットなどの大会ビジュアルを飾ったのは、火ノ玉ジャパンで活躍する、杉村英孝廣瀬隆喜(以上BC2)、中村拓海(BC1)、河本圭亮(BC3)、江崎駿(BC4)の5人だったが、全員が決勝に進出して活躍し、大会の顔としての役割もしっかり果たした。

(左から)藤井友里子、杉村英孝、河本圭亮、河本の競技アシスタントの河本幸代、江崎駿

「実は、昨年までの日本選手権は強化指定選手が敗れる波乱が起きていたのですが、今回は強化指定選手がしっかり勝ち、強化がうまくいっていることが証明されてほっとしました。トップクラスの選手たちは日ごろから『応援される選手になりたい』という思いで取り組んでいますが、近くで見てくれる観客も増え、その応援に応えるようないいプレーを見せてくれました。とくに決勝は、ミスもなく、お互いがいいプレーを引き出し合っているような好ゲームばかりでしたね」

そう笑顔で話したのは今年、世界選手権やインドネシア2018アジアパラ競技大会で日本代表監督を務めた村上光輝氏だ。敢然と立ち向かってくる挑戦者たちを退けていく。そんな強化指定選手たちの成長を素直に喜んだ。

「ボッチャ甲子園」で活躍したBC4の江崎駿が初優勝

盤石の強さを誇った2人が決勝で激突!

なかでも、日本の2大エースによるライバル対決となったBC2クラスの決勝は、見ごたえのある好ゲームだった。日本選手権では過去5年間、廣瀬と杉村が入れ替わりでチャンピオンになっており、今年も杉村が決勝トーナメントを10-0、8-0で、廣瀬が10-1、8-0で勝ち上がり、決勝での対戦を実現させたのだ。

観客がかたずをのんで見守ったBC2のエース対決

その決勝は、先行の杉村が自球を正確にジャックボールに寄せれば、廣瀬がパワーで相手の球を弾いて応戦する一進一退の展開になった。会場の観客が固唾を呑んで見守る中で、大きなチャンスを手にしたのは杉村だった。1-2で迎えた第3エンド、杉村は廣瀬が投げにくいようにガード球でコースを封じ、廣瀬も空中から叩きつけるショットで反撃したが、結局杉村が3点を奪取した。そこで精神的に優位になった杉村に対し、相手の苦手なロングボールで返した廣瀬は第4エンドに勝負をかける。しかし、「いい位置に投げたつもりのファースト球に、ほんの少しズレがあった」と廣瀬。対する杉村の5球目は、ジャックボールの裏にピタリと納まり、廣瀬のやりづらい状況をつくり出すことに成功した。「廣瀬選手はパワーがあるので弾かれるかもしれないと思っていたが、後ろにガードがあれば失点を防げると思っていた」と杉村。狙い通りの展開に「あの一球をミスしたら、やられる場面だった」と話し、胸をなで下ろした杉村が、5-3のスコアで勝利を収めた。

「今までのスタイルでは、国内でも勝ち切ることは難しい。8月の世界選手権以降、『(持ち球である)6球を無駄にしない』をテーマにし、たとえば、(ボールを)ただ押すだけでなく、押したボールを(いい位置に)残すというようなことに取り組んできた。また、ミスをしたときに、次の一球でいかに取り戻せるかということにも重点を置いて練習してきました。この優勝は、ひとつ上の段階を目指して取り組んできた表れだと思います」

今年も役者がそろったBC2クラス。(左から)2位の廣瀬隆喜、3位の佐藤駿、1位の杉村英孝

アジアパラで敗れたライバルの廣瀬に雪辱を果たしての連覇達成。大会終了時の記者会見では「2連覇できてうれしい」と話したものの、「第4エンドのあの一球はベタ付きではなかった」、「調子のいい廣瀬選手に対し、自分は納得いくプレーができなかった」と、常に世界を見据える杉村の自己評価は辛口だ。

東京2020パラリンピックで金メダルを目指す火ノ玉ジャパンのキャプテンは、ここからまたワンステップ高みを目指して進化を遂げる。

群雄割拠のBC3クラス

ランプを使用するBC3クラスは、19歳の河本圭亮が連覇を達成。「レベルが上がっている中で優勝できたのは幸せ。来年も勝って3連覇したい」と力強く語った。決勝は、リオパラリンピック日本代表・高橋和樹と対峙し、2点ビハインドの第4ピリオドで相手のミスを見逃さず、逆転勝利。「もともとクレバーな選手だが、チャレンジと失敗を繰り返し、斬新なボッチャができる選手に成長した」と村上監督も評価していた。

BC3で2連覇を達成した河本圭亮(右)

準決勝で高橋に敗れた有田正行も、競技歴1年半ながら同クラスの競争力を上げているひとりだ。「僕が東京で目指しているのはメダル獲得。3位なんかで満足いくわけにはいかない」と悔しさを隠さずに語り、東京に向けて用具の研究や技術をレベルアップさせるスピードをさらに加速させることを示唆した。

電動車椅子サッカーから転向した有田正行

国内のレベルの向上について、河本に尋ねると「僕は寄せる、弾く、押すという3つの基本をどの距離でもできるようにする練習を日々行っているが、それに加えて、ボールを当てる角度も研究している選手が増えている」という実感を語ってくれた。

また、BC4は高校生が表彰台を独占し、これからが楽しみになる結果に。国際経験豊かな江崎駿と、予選会から勝ち上がってきた新星・内田峻介が対戦した決勝は、6-2で江崎に軍配。初優勝した江崎は、「粘り強く戦えたし、この優勝は自信になる。とにかくうれしい」と顔をほころばせた。3位の宮原陸人も「準決勝ではミスが響いたが、投球の精度を上げてまたこの大会に戻ってきたい」と意欲的に語った。

彗星のごとく現れた内田(右)の今後にも期待がかかる
高校一年生の宮原陸人は3位

BC1は、藤井友里子が決勝で中村拓海に勝利し、2年ぶりの日本一奪還。「多くのサポートを受けて練習してきた成果が出せた」と喜んだ。藤井は、オープン(立位)で優勝した夫との“アベック優勝”だった。

藤井友里子(左)が中村拓海に勝利し、BC1を制した

text by Asuka Senaga
photo by X-1

ボッチャ日本選手権、“世界レベル”のBC2決勝 杉村vs廣瀬の結果は!?

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