お祭りみたいに楽しめて親子が夢中に。茨城の企業が20年以上続ける小学生野球大会の「仕掛け」とは

お祭りみたいに楽しめて親子が夢中に。茨城の企業が20年以上続ける小学生野球大会の「仕掛け」とは
2026.04.20.MON 公開

小学生の子どもにとって、スポーツが心身の成長に果たす役割は大きい。身体を動かすことによって体力がつくのはもちろん、目標に向かって自分と向き合い仲間と力を合わせることは、人間的な成長につながる。茨城県のとある企業がその重要性に着目し、小学生の野球チーム、すなわち“学童野球”の県大会を20年以上も開催し続けている。ひとつの企業が本業とは関係のない取り組みを続けているのはなぜなのか。小学生選手たちが大会に参加して得られるものとは? 主催する株式会社ノーブルホーム、広報担当の鈴木いつか氏に聞いた。

チームで負けても個人で競えて、お祭りのように楽しめる

勝っても負けても、皆がお祭りのように楽しめる大会

茨城県にある住宅メーカーのノーブルホームが毎年8月に開催する学童野球大会“ノーブルホームカップ”がスタートしたのは2005年。当初の参加チームは16チームだったそうだが、第20回大会を開催した2024年、その数は100を超えた。多くの学童チームを魅了し長年続けられている理由は、“記憶に残る大会を作る”というコンセプトにある。

「通常の大会は、試合をして勝ち負けを決めるのが主旨で、どうしても勝敗だけに目が行きがちです。つまり、“負けたら終わり。帰ってまた練習”ということになるのですが、それだけでは負けた子どもたちや、応援する親御さんたちの記憶になかなか残りません。しかし“ノーブルホームカップ”は、初戦で負けたとしても、2日目にも会場にやってきて他のチームを応援したり、個人の能力を競うイベントがある大会なのです」(鈴木氏)

“ノーブルホームカップ”は、なぜ記憶に残るのか。2026年8月1日、2日に開催予定の第22回大会のスケジュールは予選トーナメントが26年2月から6月にかけて行われ、勝ち抜いた15チームと前回の優勝チームを併せた計16チームで試合をして勝者が決められる。普通の大会であればトーナメントの最後に決勝と合わせて3位決定戦が行われるところだが、ノーブルホームカップに3位決定戦はない。
その代わりに開催されるのが、所属するチームの勝敗に関係なく、各チームの選手2人、大人1人の参加枠がある“ホームラン競争”だ。大会参加の全チームの選手、チーム関係者、父兄など、約1,000人がノーブルホームスタジアム水戸に一堂に会し、お祭りのような雰囲気で野球を楽しむ時間になる。だから記憶に残るのだ。

ホームラン競争に出場する父親たち。かつて選手として出場した場所で腕を競うケースも

「“ノーブルホームカップ”で行われる個人競争には、ベースランニングや遠投、スピードガンコンテストといった“チャレンジコンテスト”のほか、飛距離を競うホームラン競争があり、これがとっても盛り上がります。試合では負けてしまったけれど、選手個人としては相手チームの選手に勝つこともありますし、試合での勝ち負けに関係なく皆で応援しあう光景は、他の野球大会では見られないものだと思います」

20回を超える大会ともなれば、以前選手として出場した子どもが親となって腕を競うことも珍しくない。まさに地域を挙げて、家族みんなで盛り上がれるイベントとなっている様子がうかがえるエピソードだ。

住まいを作る企業が、なぜ学童野球大会を開催するのか

プロカメラマンが撮影した臨場感溢れる写真も、皆の記憶に深く刻まれる

ノーブルホームは、茨城県を中心に栃木県、千葉県などで事業を展開する住宅メーカーだ。住まいを作る企業がなぜ長年にわたって学童野球の大会を運営しているのか。それは代表取締役社長の福井英治氏が子どもの頃から野球をやってきたことにある。

「代表の福井は小学校時代から大学生まで野球を続け、その後、教師になり野球部の監督も務めました。野球を通して、地域の人との繋がりや人としての重要な考え方を身につけて行く中で、野球が人格形成や人脈を広げるのに重要な役割を果たしていることに気づいたそうです。その後、ノーブルホームを立ち上げたのですが、これから大人になる子どもたちに、自分と同じような体験をしてほしい、将来に向けて大きな夢を描けるような場を作ってあげたいという気持ちで、“ノーブルホームカップ”を創設しました」

福井氏のそういった思いは、先述のようにチームとして負けたら終わりではなく、個人としての能力を競う“チャレンジコンテスト”を開催することにより、チームを超えた子どもたち同士のつながり、親も含めた地域全体の盛り上がりの形成につながっている。

記憶に刻まれる画像・動画はプロカメラマンが撮影

飛距離を競うホームラン競争。個人戦なので所属チームに関係なくみんなで応援する

“ノーブルホームカップ”をさらに盛り上げるのが、試合中の選手の様子を撮影するプロのスチールカメラマン、TVカメラマンの存在だ。決勝トーナメントのすべての試合がプロの手によって撮影され、画像・映像として残される。必死に走る選手、ホームランを打って飛び上がって喜ぶ選手、負けて悔し涙を流す選手。新聞報道などで目にするスポーツ写真のように、自分たちのプレーが記録されるのだ。

「通常の大会ですと、グランド内で写真や動画をとることが難しいのですが、子どもたちの表情やプレーの一瞬一瞬、臨場感あふれるシーンを残してあげたいということで第1回大会からプロのカメラマンにお願いしています。写真は参加者全員が無料でダウンロードでき、動画(2年前まではDVDディスク)も無料提供しています。これも、他の大会とは大きく異なる点ですね」

鈴木氏自身、高校生と中学生の息子がいて、ふたりが小学生の時に“ノーブルホームカップ”の決戦トーナメントに出場。親として応援する側に立ち、いい思い出を作ることができたそうだ。しかし、鈴木氏はなぜ住宅会社が“ノーブルホームカップ”を運営しているのだろう、ただ名前を貸すだけではなく、なぜ社員も深く運営に関わっているのかと不思議に思ったことがあったという。

「実は、子どものころ“ノーブルホームカップ”に出場した経験のある社員も最近は増えています。野球の大会を通じて直接のお客様、生活者の皆様と接することは、仕事の面でも貴重な場になっていると思います。大会前の準備では、社会人としての見られ方、立ち居振る舞いなどについてもミーティングで確認をし、ノーブルホームの社員としての心構えを共有する場になっていると感じますね」

最近では、遠方にいる親戚や祖父母に子どもたちのプレーを見てもらうため、試合の動画配信なども行っているそうだ。近年は子どもの野球離れが度々話題になるが、“ノーブルホームカップ”は、そのような時代の変化にも応じながら回を重ね、出場する子どもと親の記憶に残り続けていくことになるのだろう。


地元密着の住宅メーカーが20年以上、学童野球大会を開催し続けている。最初は鈴木氏同様、どういうことだろうかと思ったが、代表取締役の野球に対する思い、社員が地域貢献で得られる貴重な体験、喜びは、大会運営の苦労とは比較にならないものなのだろう。まさに「記憶に残る大会」だ。

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
写真提供:ノーブルホーム

『お祭りみたいに楽しめて親子が夢中に。茨城の企業が20年以上続ける小学生野球大会の「仕掛け」とは』

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