-
-
Sports /競技を知る
-
-
18人中12人が初出場のパラアイスホッケー、未勝利で終わるも4年後に花開かせる
ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会のフィナーレを飾る、パラアイスホッケー決勝は1万564人の観客が見守る中、アメリカがカナダを下して大会5連覇を達成した。2大会ぶりにパラリンピックの舞台に戻ってきた日本は、予選リーグ全敗。16年ぶりの白星を狙ったものの、初勝利を挙げることはかなわなかった。
猛攻に耐えるも力尽きる
時間を割いて対策した初戦のチェコ戦を2-3で落とした日本は、カナダ戦、スロバキア戦でも敗れ、予選リーグ敗退。プレーオフでは、イタリアに敗れた後、7-8位決定戦で再びスロバキアと対戦した。

photo by AFLO SPORT
1勝への思いが強かったのは間違いない。日本代表の初出場選手12人のうち6人がスポーツ庁の選手発掘事業「J-STARプロジェクト」出身。この試合は、選手兼指導者として若手育成に貢献した𠮷川守の日本代表ラストゲームであり、試合前の円陣では真ん中に𠮷川が入り、士気を高めた。
序盤、日本は3セットをローテーションしながら守備の包囲網を敷き、ゴールマウスには守護神・堀江航が立ちはだかる。相手が放つ槍のような鋭いシュートを次々と身体で弾き返し、ゴールを死守し続けた。

photo by AFLO SPORT
だが、耐える時間は長く、攻撃の糸口は見出せない。絶対的なチャンスであるパワープレーでもネットを揺らすことができず、選手たちの集中力は、時間の経過とともに削り取られていった。
第3ピリオド、スコアは0-0。延長戦突入かとよぎった残り1分31秒、無情にも日本のゴールネットが揺れた。0-1。日本は力尽き、最終順位8位で大会を終えた。
選手それぞれの「足りなかった何か」
タイムアップのブザーが鳴ると、ディフェンスの石川雄大は悔しさを露わにした。
「(日本のショット数8に対し、スロバキアは19)あんなに打たれても守ってくれたゴールキーパーを最後まで守り切れなかったのは、ディフェンスに責任がある。5試合を行い、さらに上にいくのは簡単ではないと学ばせてもらった。何が足りなかったのかを考えて4年後、この舞台に帰ってきたい」

photo by REUTERS/AFLO
同じくディフェンスの須藤悟は、「大会を通して国内にはない特殊なリンクサイズに苦戦した。振り向くとすぐ敵がいるため、ハンドリングのスピードを上げないと捌ききれず、攻め込まれる時間が長かった」と振り返った。
最終予選で得点頭になった鵜飼祥生は今大会無得点に終わった。
「シュートを決めきれる力がまだない、というのが一番かなと思います。パラリンピックは、どのチームも気持ちが入っていた。勝ちたかった」
「悔しいけれど、やり切った」とは、エースの伊藤樹。伊藤は大会直前に腸閉そくの手術をしており、決して万全な状態ではなかった。チームが強くなるためには、エース頼みのチームからの脱却が必要。今大会を通じ、日本チームはその必要性を痛感したことだろう。
チーム最年少、16歳の河原優星は、プレータイムを伸ばしながらも「期待に応えられなかった」と悔しさをにじませた。また、予選で初出場を果たした唯一の女子選手、福西朱莉は、出場時間が限られたため「(仲間に)『点を取って』『守って』と願うことしかできず苦しかった」と吐露。「4年後は絶対に主力として戻ってくる」と決意を語った。

photo by AFLO SPORT
「つなぐパラリンピック」から次への期待
8位という順位こそ、平昌大会と同じだ。それでも、長野大会から6度パラリンピックに出場している三澤英司は、平昌大会とは異なる意味を持つと口にした。
「若い選手たちにとっては、これが『スタートのパラリンピック』。彼らの成長を見られて『つなぐパラリンピック』になった。そういう意味で平昌とは違う大きな意味を持つ大会になった」

photo by REUTERS/AFLO
今大会で勇退する日本代表の中北浩仁監督は、こう総括する。
「パラアイスホッケーだけの選手村という特殊な環境下で、パラリンピック最終予選(2025年11月/ノルウェー)のときのようなのびのびとしたプレーができなかった。ただ、若い選手たちが肌で感じた経験は言葉で語るより大きい。これまでパラリンピックでベテランが築いてきた経験を、初出場した12人の選手たちがどう自分たちのものにし、継続していくかが今後のチーム作りの鍵となる」

photo by REUTERS/AFLO
今回の敗戦を無駄にはしない。エースの伊藤は、4年後の飛躍を心に期した。
「最後の観客の景色とか、このパラリンピックの景色、この悔しさを、4年間忘れずに、それをガソリンにして頑張っていきたい」
これから大きく化ける可能性を秘めたパラアイスホッケーの“ハイブリッドJAPAN”。メダルを狙う次の4年が始まった。
text by Asuka Senaga
key visual by SportsPressJP/AFLO






