日本財団パラリンピックサポートセンター

人気のチョコブランド、大成功のヒントはSDGsな発想だった!<後編>

人気のチョコブランド、大成功のヒントはSDGsな発想だった!<後編>
2020.03.11.WED 公開

久遠(くおん)チョコレートはフランチャイズも含め、現在、国内に38拠点を持つ(2020年2月時点)。百貨店からも続々と催事のオファーがあり、年間売り上げ8億円を超える人気ブランドに成長した。これからの時代、ビジネスで成功するためのキーワードとなってくるのが、代表の夏目浩次さんも注目する国際目標、SDGs(エス・ディー・ジーズ)(※)。現在進行中の、SDGsの達成を目標とした地方創成に繋がるプロジェクトの内容、そして一流のブランドをめざす理由について、夏目さんに尋ねた。
※SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標で、17のゴール・169のターゲットから構成されている(外務省HPより)。

「障がい者を一流のショコラティエに!」をミッションに

SDGsの大前提となっている「誰ひとり取り残さない」は、夏目さんが経営において軸と考えていることでもある。そして、障がい者の就労促進に取り組むうえで、工賃を10倍にすることを目指し、それはSDGsの17の目標にもある「人や国の不平等をなくす」の実現に結びついている。そんなSDGsな発想から躍進する久遠チョコレートが創業時から取り組んでいるプロジェクトがある。前編でも触れた日本財団の「ゆめちょ総選挙」の当選事業だ。そのプロジェクトのミッションの1つに「障がい者を一流のショコラティエに!」がある。

―――「障がい者を一流のショコラティエに!」は、具体的にはどのような活動ですか?

夏目さん(以下、夏目):「ゆめちょ総選挙」の寄付金で始動したプロジェクトのテーマは、チョコレートを通して障がい者の新しい就労モデルを提案し、全国に広めていくこと。それによって障がい者の工賃が向上することが目標です。チョコレートは障がい者の特性にぴったりの食材ですから、正しい材料を正しく使うことをマスターすれば、福祉事業所で商品企画や販売も可能になります。そこで、プロジェクトに参加する福祉事業所を回り、チョコレート作りの研修を行っています。

また、私がチョコレートと出会うきっかけとなったショコラティエの野口さんには、当ブランドのシェフショコラティエを務めてもらっています。彼は、ハイクラスホテルや名だたるブランドのチョコレート商品を手がけているトップショコラティエ。その野口さんが研修を担当しているのも強みですね

―――一流のショコラティエから学べるというのは徹底していますね! また、チョコレートブランドとしても一流を目指している、とのことですが、ここまで躍進できた理由はなんでしょう?

夏目:社会貢献的な意味で障がい者が作るから買う、ではなく、シンプルにおいしいから買いたい、誰かにあげたいと思ってもらうことが大前提にあるので、チョコレート本来の味を純粋に楽しめるように、余計な油を加えないピュアチョコレートにこだわっています。

また、久遠チョコレートは海外ブランドなどのOEM(製造のみの依頼)の商品づくりの仕事も受注しているので、地方にラボ(工房)を設立し、希望する福祉事業所にフランチャイズの支店として入ってもらい、雇用に繋げているのですが、この全国各地に拠点をもつ、というブランドの特徴をうまく出せたこともよかったのだと思います。ご当地味を積極的に展開し、日本のさまざまな食材の魅力を発信しています。それもあって、主力商品の久遠テリーヌは約150種類まで増え、いろいろな味の発見がお客様の購買意欲につながっていると思います。

働く人たちに誇りをもってもらいたい。だから、一流を目指すのです

―――店舗も増え、売り上げも順調に伸びているようですが、今後目指していくこととは?

夏目:障がい者の雇用促進に長く取り組んでいますが、働く場所を作るだけに終わらず、彼らが働くうえでモチベーションや誇りをもつこと、社会の一員としての意識をもつことに繋げたい。一流を目指す理由はそこにあります。一流のブランドになれば、そこでやる仕事は一流の仕事になりますから。

―――なるほど。もう一段階進んだ雇用のあり方を見据えていらっしゃるのですね。SDGsにも、誰もが等しく経済的に前進することが掲げられています。その観点からも、障がいのある人がやりがいを感じながら働くことは、大きな意味のある達成目標ですね。

会社が人に合わせる時代! チョコレートで地方の雇用を促進し、地方創成に繋げる

―――また、現在「SDGsラボ」というプロジェクトも進んでいるそうですが、こちらはどんな内容のプロジェクトですか?

夏目:地方の抱える問題と都心の企業が抱える問題、双方のギャップを組み合わせることで、それらを解消できないか?という発想が、SDGsラボの原点です。というのも、地方には働きたい人は多くいるが、産業のパイに限界がある。逆に、都心には企業数はたくさんあるが、なかなか人手がない。

そこで、SDGsの目標に取り組むことを共通認識として、当ブランド、都心の上場企業、ときには自治体も含めての協業で、地方にラボ(工房)を作り、運営。双方の凸凹な問題を補い合うSDGsラボが生まれました。既に1つ目のラボが豊橋市で稼働しています。現在、計画中のラボもあり、今後もっと広げていきたいと考えています。

都心の企業を地方に呼び込み雇用の場を作れば、地方の産業・雇用の創出になり、地方創成につながります。そこに当社がかかわることで、障がい者の雇用も進む。企業にとっては、新しい事業を展開でき、都心に比べて設備費が抑えられるなどのメリットがあります。これからは、人が会社に合わせる時代ではなく、会社が人に合わせて事業内容や就労の場を生み出す動きが増えていくかもしれません。

―――関わるみなさんにメリットがあり、まさにWin-Winですね。日本中にSDGsラボが増えて、地方が元気になる未来に期待がふくらみます。

変化の激しいこれからの時代、企業人にとって必要なことは?

―――めまぐるしいスピードで変わりゆく時代の中で、成功するためのコツはなんだと思いますか?

夏目:とにかく変化のスピードが速いので、ブレない軸が必要だと思います。私は「センスある社会をつくる!」ということを、自分が関わる事業のすべての根底にあるミッションと位置づけています。それぞれの人が持つ属性や環境と関係なく、暮し方や生き方に多様な選択肢があり、誰もが輝ける社会。それがセンスある社会だと思っていて、その実現のために、事業においてもどうすればいいかを考える。難しい課題でもあきらめない。できない理由を述べるのは簡単です。どうしたらできるかを考え、失敗してもいいから行動に移し、そこから改善していく。思考と挑戦なしに、得られるものはありません。あとは柔軟性ですね。頭がやわらかければ、新しい発想や価値観が生まれやすく、いろいろな変化を起こすためのチャレンジにつながっていくと思います。

障がい者雇用も地方創成の課題も、諦めていた「仕方ない」に真剣に向き合うことで夏目さんは打開策を見出し、ビジネスチャンスに変えてきた。世の中の「仕方ない」がもっとなくなれば、誰もが暮らしやすい社会、そして経済的な発展も期待できるのではないだろうか。そのためにも、みんながあきらめずに考え、行動することが必要なのだと思う。

この記事の<前編>はこちら↓
チョコレートとの運命的な出会い。常識を覆したサスティナブル経営<前編>
https://www.parasapo.tokyo/topics/24981

PROFILE 夏目浩次
ラ・バルカグループ代表。2003年、愛知県豊橋市において、障がい者雇用の促進と低工賃からの脱却を目指すパン工房を開業。その後社会福祉法人を経て一般社団法人化し、障がい者雇用に関わる事業を幅広く展開。2014年に久遠チョコレートを立ち上げる。現在は、豊橋本店をはじめ、フランチャイズを含めると全国に38カ所の拠点をもつ。全国の福祉作業所にノウハウを指導したり、上場企業との協業で地方に工場を設立するなど、常に一歩先を行く就労促進を図っている。
・久遠チョコレート:https://quon-choco.com
・ラ・バルカグループ:https://labarca-group.jp

参考サイト:日本財団「夢の貯金箱」https://yumecho.com/about/

text by Makiko Yasui(Parasapo Lab)
photo by Megumi Yoshitake

人気のチョコブランド、大成功のヒントはSDGsな発想だった!<後編>

『人気のチョコブランド、大成功のヒントはSDGsな発想だった!<後編>』