群雄割拠の世界で戦うために。車いすバスケ男子日本代表、世界選手権で得た手応えと課題

群雄割拠の世界で戦うために。車いすバスケ男子日本代表、世界選手権で得た手応えと課題
2026.10.08.THU 公開

2026年9月、カナダ・オタワで開催された「IWBF車いすバスケットボール世界選手権」。車いすバスケットボールではパラリンピックに次ぐ重要な大会で、男子日本代表は収穫と課題それぞれを持ち帰り、世界での立ち位置を改めて意識することとなった。大会を振り返る。

こぼれ落ちた2つの勝利

パリ2024パラリンピックの出場権を逃し、長らく世界の舞台から遠ざかっていた男子日本代表。世界選手権は2大会ぶりの出場だった。

予選グループリーグ最終戦のスペイン戦に60-54で勝利

予選のグループリーグ初戦のポーランド戦では、前半に大きくリードを許しながらも逆転勝ち。波に乗ると、続くコロンビア、スペインとの試合も制し、グループCを首位で通過。
決勝トーナメント初戦の相手となったイランはヘッドコーチらのビザが下りず大会を辞退しており、日本の20-0での不戦勝扱いに。準々決勝でイギリスと対戦した。

前半はディフェンスが機能し、鳥海連志(2.5)、香西宏昭(3.5)らの得点で、40-24と大きくリード。しかし後半、イギリスにアジャストされていき、第4クォーター中盤でついに逆転を許す。最後はファウルゲームを仕掛けるも実らず。66-68とワンゴール差での敗戦に、鳥海は「もっと上を目指せたし、自分たちの実力はしっかりとベスト4に入る力があった」と悔しさを口にした。

接戦を繰り広げるも敗れたイギリス戦

その後、「もともと自分たちが掲げていた目標はトップ5に入ること。そこに向けて自分たちがやってきたことをもう1回出そうとチームで話した」(香西)と、切り替えて順位決定戦のポーランド戦に勝利。

迎えた5位決定戦は、東京2020パラリンピック決勝以来の顔合わせとなる強豪アメリカとの試合。前半はリードするも、後半開始から流れを持っていかれ、相手の厳しいマークに苦しんだ。「得点が伸びなくなりついていけなくなったところと、向こうがメンバーチェンジをしてきた時に、うまくアジャストできなかったところ。あとは僕自身のベンチワークにも課題があったと思う。選手に申し訳なかった」と京谷和幸ヘッドコーチは振り返る。逆転を許し、追いすがるも、強かな相手の背中には届かなかった。

アメリカ戦では香西も厳しくマークされた

「もっと上を目指せた」さらなる高みに行くために

目標の5位には及ばずも、過去最高順位となる6位で大会を終えた男子日本代表。大会を総括して、「ディフェンスは世界のトップレベルにあると、確実に今回の大会で証明できた」と京谷ヘッドコーチが話したように、敗れた試合があったとはいえ、ディフェンスは日本の大きな武器となったと言えるだろう。

そして、近年海外で武者修行を重ねてきた選手たちのパフォーマンスも光った。鳥海は今大会平均19.2得点・11.2アシスト・10.5リバウンドと平均トリプルダブルを記録。赤石竜我(2.5)も、トップでボールをさばきつつ、アウトサイドからの得点力も要所で見せ、ほぼフル出場。髙柗義伸(4.0)もインサイドで存在感を発揮した。

髙柗は大会5位の平均9.0リバウンドを記録した

ベテラン勢も、香西はチーム2位の平均16.0得点と高い得点能力を発揮しつつ、シックスマンとしてフロアを落ち着かせるなど重要なピースに。藤本怜央(4.5)もここぞという場面でのシュートを決め、チームを支えた。

スペインのチームでプレーし、コートの中でのゲームコントロールにフォーカスして練習してきたという鳥海は、こう振り返る。

「今回の大会で(取り組んできたことが)形になったし、世界の中でもそういう認識を持ってもらえたのではないか。周りの選手たちも、シューティングは特にフォーカス当てて取り組んできたと思うし、それぞれのリーグ・チームでひとつずつスキルを上げていっている」

ドイツのチームでプレーする赤石

しかし、イギリス戦、アメリカ戦は試合中に対策してきた相手を跳ね返せず、敗北を喫した。上位に食い込むためには、そうした相手をさらに上回れるような、チームとしてのさらなる成熟が必要だ。

鳥海は次のように語る。

「相手のチームの特徴に合わせたディフェンスの守り方、誰が試合の中でホットになっているかも含めて、チームとしていろんなことを変化させアジャストしていくことなど、深い解像度をもって取り組んでいくことが、これから課題になってくる。
個人個人のスキルアップも、足し算として換算していくのではなく、掛け算としてどう作っていくかというところが、チームの底力みたいなところにつながってくる」

赤石も課題を口にする。

「海外でプレーしている選手が多い中で、チームとして成熟度を高めていくことは簡単なことではないが、それをやらなければならない。日本は個のスキルが上がってきていて世界に通用するレベルまできているかもしれないが、まだまだ弱い部分がある」

手応えと共に感じた、立ちはだかる各国の手強さ。先を見据える選手たちのまなざしは厳しい。

「決して簡単な道じゃない」

今大会、パラリンピック3連覇のアメリカが準々決勝でイタリアに敗れるなど、勢力図の変化を感じさせた。男子は大会MVPに輝いた21歳のジェイレン・ブラウンを擁するオーストラリアが優勝した。

ロサンゼルス2028パラリンピックの出場枠は8つ。今回の世界選手権では、上位4ヵ国が所属するゾーンにパラリンピック出場枠が割り当てられ、男子はヨーロッパゾーンに3枠、アジア・オセアニアゾーンに1枠が配分された。今後、それぞれのゾーン内での大会により出場国が決定する。残る4枠は、2028年に開催される予定の世界最終予選で争われる。

男子日本代表は、2027年開催予定のアジア・オセアニア選手権で優勝すれば出場権を獲得できる。それが叶わなかった場合は、2028年の世界最終予選へ出場し、そこで出場権獲得を目指す。

パラリンピック出場を果たすには、強豪国とのプレッシャーのかかる試合を一つひとつ勝ち切っていかなければならない。鳥海も気を引き締める。

チームとしてのさらなる成長が求められる

「決して簡単な道じゃないなということは、今大会を振り返る上でも、世界の強豪と対峙した時に肌で感じた」

赤石はこのように語る。

「正直このまま行ったら、ロスの切符すら危ないんじゃないかという危機感も個人的にはある。この結果で満足してはいけない。自分たちだけじゃなく、世界も進化していることを考えると、やはりその進化においていかれないように、ここから2年間でチームとしても個人としてもどう進化できるというのが試されると思う」

「日本は強豪国の仲間入りをしつつあるのは間違いない」とも語る赤石

群雄割拠の様相を呈している車いすバスケットボール界。他国を上回り、高みを目指すために、日本代表のさらなる進化に期待したい。

text by Parasapo
photo by JWBF/X-1

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『群雄割拠の世界で戦うために。車いすバスケ男子日本代表、世界選手権で得た手応えと課題』

群雄割拠の世界で戦うために。車いすバスケ男子日本代表、世界選手権で得た手応えと課題