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世界一で得た自信が波及! 日本車いすカーリング選手権大会でease埼玉が初優勝

5月23日から3日間にわたり、長野県の軽井沢アイスパークで車いすカーリングの第21回日本選手権が開催された。3月にミックスダブルスで世界一になった中島洋治、小川亜希を擁する「ease埼玉」が結成以来初となる日本一に輝いた。
勝負強さを発揮したease埼玉
“4人制”でもチャンスがある――来年、ミラノ・コルティナで開催されるパラリンピックに向けてミックスダブルスの強化に励む中島、小川はもちろんのこと、他のメンバーも奮い立った。
初戦は昨年優勝チームの「KiT CURLING CLUB」と白熱の攻防戦を8-5で制し、白星発進。

大会前は軽井沢で練習を積んだease埼玉。「3月にミックスダブルスで獲得した金メダルを見せたら盛り上がってくれて。チームの雰囲気はいい」とスキップの中島。メンバー全員がフルタイムで仕事をしながら、車いすカーリングに取り組む。大会規定で出場が叶わなかったメンバーも、試合中に体調不良になる選手もいた。そんな中でも、チーム一丸のプレーで得点を重ね、「勝負強さを持っていた」(中島)。

中島も小川も、4人制の感覚を取り戻すのにやや苦戦したというものの、出場5チームによる総当たりの予選でチームは連勝。1日3試合の2日目は最終戦で「チーム札幌」に敗れたものの、予選2位で決勝トーナメントに進出した。
準決勝の相手は、KiT CURLING CLUB。中盤、リードを許すも、第7エンドで中島の好ショットがプレッシャーをかけて3点スチール。KiT CURLING CLUBは最終エンドでフォースの高橋宏美が決めれば同点という局面を迎えたが、ラストストーンは無情にもハウスの手前で止まり、12-11でease埼玉が決勝進出を決めた。泣き崩れる高橋の姿を見てease埼玉の櫻井雄太は、「KiT CURLING CLUBの分まで一番を目指そう」と力をもらったという。

決勝は、前日と異なるアイスの状況に苦戦するチーム札幌に対し、ease埼玉は第3エンドで小川のカムアラウンドなどが効いて4点スチール。その後も得点を重ね、第6エンド終了時に相手がコンシードして10-3で勝利した。
飯野明子コーチは、安どの表情を浮かべてこう話す。
「第1回から出ていて初めての優勝はすごく嬉しいです。決して練習環境が整っているわけではないが、限られた時間を大切にし、次回大会に向けてチームで上昇していきたいです」

日本選手権の結果は、強化指定選手選考の参考になる。4人制としては2030年にフランスで開催される冬季パラリンピックに向けてスタートとなる大会だった。
「権利が獲れるように積み上げていきたい」と中島が言えば、「フランスに向けてまたやる気が出てきました」と小川。
4人制でも2010年バンクーバー大会以来のパラリンピック出場を目指す。

日本の位置は?
近年、4人制日本代表として世界の舞台で活躍したのはKiT CURLING CLUBの4人を中心とするチームだ。
2024年11月の世界車いすBカーリング選手権大会で史上最高(当時)の銀メダルを獲得し、2025年3月の世界車いすカーリング選手権で9位。3年間のポイントで上位10チームに与えられる、ミラノ・コルティナのパラリンピック出場権は獲得できなかったが、最終予選まで残ったことでパラリンピック出場は夢物語ではないことを証明した。
前回大会までバイススキップを務めていたが、現在はスキップとしてチームを引っ張る柏原一大は、日本選手権で3位だったことを受けて「世界選手権には出ていたが、今のラインナップは1年目。練習の成果が全部は出せなかった」と振り返る。

敗れたease埼玉のスキップ、中島については「いいミスと悪いミスがあると思うが、(相手の石を得点にしてしまうような)悪いミスは1本しかしていない。経験も長く、チームメートの信頼も厚いのだろうと思う」と敬意を示した。
選手人口は右肩下がり
日本のレベルの底上げが感じられる一方、選手数が減っている問題もある。さらに、男女混成の競技ゆえ、男女どちらかが欠けると大会に出場できない。
そんななか、今大会準優勝のチーム札幌でスキップを務める本間篤史は、車いすカーリングと他競技の二刀流に活路を見出している。

本間は、元モーグル日本代表で現在は車いすラグビーのクラブチームにも所属する。
「たとえば、パラ・パワーリフティングの選手でもあるサードの戸田雄也は、腕のパワーがある分、重い氷でも(相手のストーンを弾き出して)崩すショットが打てる。大会中も、選手間でフィジカルって大事だよねという話をずっとしていたんです」

KiT CURLING CLUBの柏原も、国内の選手層を厚くしたいと願う一人だ。
「とくに北海道の選手は少ない。いろんなスポーツをやるなかで、車いすカーリングにも取り組んでもらえたら……」
ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会の中島と小川の活躍で競技人口が増えることを願っている。

text by Asuka Senaga
photo by X-1