学校・企業のチームビルディングに森のアドベンチャーが注目! 森林再生の一助にも

学校・企業のチームビルディングに森のアドベンチャーが注目! 森林再生の一助にも
2025.07.28.MON 公開

森の木々をつなぐ吊り橋を恐る恐る歩いたり、紐やロープを掴みながら移動したり、ハーネスを装着して一気にジップラインで滑り降りたり……。森を舞台に縦横無尽に移動するアドベンチャーが楽しめる施設が“フォレストアドベンチャー”。このフランス発祥のアウトドア・レジャー施設は日本各地に作られ、人々を楽しませるのはもちろん、森林の再生や学校や企業における“チームビルディング”にも役立てられているという。いったいどういうことなのか、運営会社であるフォレストアドベンチャー志村辰也氏に伺った。

豊かな自然の中で気持ちが解放され、心から笑うことができる

小さな子どもでも、ハーネスを付ければ安全に遊ぶことができるキッズコースが用意されている

フォレストアドベンチャーは、ケーブルなどで繋がれた森の木々の間を、さまざまな方法で移動するアクティビティで、現在日本全国45カ所にある(2025年7月現在)。コースによって難易度は異なるものの、下は身長90cm以上の子どもから、上は60代程度まで、男女ともに幅広い年齢層のユーザーが楽しんでいる。どんな人も夢中にさせてしまう魅力は、一体どこにあるのだろうか。

「誰でも安全に遊べるように、安全基準をクリアした安全確保器具を樹木に設置し、普段は登る事のできない高い位置まで安全に樹木を登ることができます。都会にある公園などでは実現できない自然を感じられる気持ちの良い空間で、訪れたお客様は、みなさん“こんな高いところまで来たことがない”と言いながら、これでもかってぐらい歓声を上げ、笑っていますね。
最初は初めての体験に緊張や不安も垣間見えるんですが、遊んでいるうちに大人も子どもも自分をさらけ出していくというか、“素”の部分が出てきて満面の笑みで帰っていかれます」

そう語るのは運営する株式会社フォレストアドベンチャー・経営企画部取締役の志村辰也氏だ。自然溢れる森林環境に身を置き、高いところに上ったり、木から木へと移動したり、非日常体験をすることにより気持ちが解放されるのだろう。この誰もが夢中になるアクティビティの発祥はフランスだそうだが、どのようにして日本に持ち込まれることになったのだろうか。

「弊社の代表がフランスに行った際に、急成長している事業があると聞いたそうです。それがこのフォレストアドベンチャーでした。現地では、もともと企業向けのリスクマネジメント施設として作られたものが一般のお客様に解放されるようになり、多くの方にご利用いただくようになっていると聞いて、是非日本でもこのような事業を始めたいと思い、取り組みを始めました」(志村氏、以下同)

荒廃した森林がフォレストアドベンチャーによって再生する

フォレストアドベンチャーが開設され、日々の整備・管理などが行われれば森は再生していく

日本は国土の7割近くを森林が占める“森林大国”であることをご存じだろうか。1950年代半ばの高度経済成長の時代に、木材の需要が高まりスギをはじめとする針葉樹の植林が盛んになった。しかし、輸入木材の増加やエネルギー事情の変化によって、日本の木材自給率はどんどん下がっていった。しかも、人間が植林した人工林は、自然にできた天然林とは違って、きちんと人の手で管理をしないと荒廃していってしまう。その結果、日本の林業の衰退、従事者の高齢化が進み、荒廃した森林が増加しているのが今の日本の現状だ。フォレストアドベンチャーの取り組みは、そんな日本の森林再生の一助となる可能性がある。

「日本でフォレストアドベンチャーの事業を始めるにあたって、森林の現状を調べてみると、林業の衰退や、人の手が入らなくなっている放置林の増加が深刻であることがわかりました。フォレストアドベンチャーの施設を作る際には、安全にアクティビティが行えるよう、木が密集している場所はある程度伐採して間引きます。樹木医が木々の健康を診断して回るのも安全のためですが、森林が生き返っていくというメリットもある。さらに、フォレストアドベンチャーを作ることで雇用が生まれ、にぎわいが広がり、生み出されたお金で森林整備をするという、持続可能な森林維持のサイクルを回すことができるのです」

フォレストアドベンチャーがもたらすものは、森林自体への影響のみではない。居住者の多くない地域に位置する森林の周辺に、新たな雇用やにぎわいを生み出すことができるのだ。

「フォレストアドベンチャーで遊ぶ時間は1~2時間程度と、それほど長くありません。そこまで行ったら、帰りにどこかで食事をしようとか、ついでに何かしていこうとか、その前後の観光の需要があるので、周辺にも好循環をもたらすことができるという意味でも、地域のみなさんに喜んでいただいています」

企業や学校のさまざまな研修にも好評の理由は?

自然の中で自らを解放し“素”で周囲と接することができるフォレストアドベンチャーは、チームビルディングの研修にも適している

フォレストアドベンチャーは、発祥の地・フランスでは企業の研修にも使われており、それは日本でも踏襲され、森の中で出されるさまざまな課題を解決しながらチーム力を高める体験型のアウトドア研修が行われている。

「フォレストアドベンチャーに来た方は楽しさ故に素をさらけ出せるようになります。積極的に隣の人とコミュニケーションを取るようになったり、チームビルディングを学ぶことができる点がフォレストアドベンチャーでの研修の大きなメリットです。コロナ禍でリモートワークが増えたときなどは、社員同士が密に連携をとって生産性を上げるためにプログラムに取り組みたいという需要も多かったです。
また、学校での不登校の増加という課題に関しても、入学早々に訪れていただくと、コミュニケーションがスムーズになって友達を作りやすくなるとか、自然や森に関する学びを深めることにも繋がると、みなさんに喜ばれています」

チームビルディングなど、企業の人事的な研修は座学で行われることが多いが、このような自然の中での研修こそ、チームビルディングの向上につながるというのは、納得できる話だ。

森林と言えば、近頃は山火事や台風など、災害による被害も大きい。その点でもフォレストアドベンチャーは良い影響が期待できるという。

「木は放っておくと、人間と同じで高齢化が進み、二酸化炭素の吸収量も減っていきます。自然林ならいろいろな樹齢の木がありますが、人工林はほぼ全ての木が同じように年を取っていくので、高齢化が進んだ人工林が増えるのは地球環境にとってもよくないと言えます。その点も、フォレストアドベンチャーができることによって、森の新陳代謝を進められるようになります。
また、安全にアクティビティができるように、木を間引いたり、整備したりすることによって地面に光が届き、下草が生えるようになります。すると、地盤が整い木の根もしっかりと生え、土砂災害も防げるようになるんです。それが私たちができる持続可能な森林維持活動だと自負しています」

フォレストアドベンチャーが荒れた森林にもたらすものは、単なる遊戯場所に止まらず、人間関係や地球環境にも大きく影響するようだ。フォレストアドベンチャーを地元に呼びたいという声は少なくないが、さまざまな地勢的な条件によって作れないことも多いという。とはいえ、フォレストアドベンチャーの活動により日本の森林が再生していくことへの期待は高い。


日常生活で“森”を感じる機会はなかなかないが、最近の気候変動の問題などを考えてみれば、森とともに生きている、森に生かされているということを意識せざるを得ない。そんな中、フォレストアドベンチャーは、単なるエンターテインメント施設の枠に収まらず、そんな森の再生に今後も大きな役割を果たしていくのだろう。

text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
写真提供:フォレストアドベンチャー

『学校・企業のチームビルディングに森のアドベンチャーが注目! 森林再生の一助にも』

学校・企業のチームビルディングに森のアドベンチャーが注目! 森林再生の一助にも