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Sports /競技を知る
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日本初のオールスターカーリングで車いすカーリングを全力アピール!

精度の高いショットを決める、世界一の車いすカーラーの偉大さが光った。7月5日~6日に北海道札幌市のどうぎんカーリングスタジアムで開催された「スポーツナビ オールスターカーリング2025」。オリンピックを目指すトップ選手やレジェンドが集結した初の“球宴”に、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会のミックスダブルス日本代表内定選手である小川亜希、中島洋治が登場し、車いすカーリングをアピールした。

車いすエキシビジョンマッチ、体験会、トークショー……。2日間のイベントの中で車いすカーリングにフィーチャーした企画は多く、1万円のチケットを購入して来場したカーリングのコアなファンに、選手名と競技の魅力をしっかりとアピールできたことだろう。

「お客さんの反応がうれしかったし、車いすでもこんなことができるんだと知ってもらえたかな。いい機会だったと思います」(小川)
「ぜひこれを機会に車いすカーリングが広まってほしい。そういう思いで今日はここに来ました」(中島)

トークショーでは、2人が3月に「世界車いすミックスダブルスカーリング選手権大会 2025」(スコットランド)で獲得した、車いすカーリング史上初の金メダルを披露。5月に4人制の日本選手権に出場した2人は、世界選手権以降初めてミックスダブルスを行い、「両サイドで4人制が行われていたので、ミックスダブルスはやっぱり展開が早いと感じた。スピーディーに、テンポよくできたのはよかったかな」と中島。これから来年のミラノ・コルティナを見据えてミックスダブルスの練習を本格化させていくといい、「車いすカーリングをもっと知ってもらいたい。そのためにも、いい色のメダルを獲れるようにがんばっていきたい」と小川は誓った。


カーリングはスウィープが命!?
1日目の車いすエキシビジョンマッチは、男女1人ずつがペアを組み2対2で行われるミックスダブルス。ブラシで氷をこするスウィーピングを駆使する「小穴・青木」とスウィーピングのない車いすカーリングの「チーム中島」によるガチンコ対決は見どころ満載だった。

第1エンドで中島が、第2エンドの1投目では小川が、ハウス中央付近にドローを決め、観客のどよめきを誘う。しかし、「小穴・青木」は速さのあるショットでチーム中島のストーンを散らし、得点を重ねた。
チーム中島は曲がるアイスに苦戦しつつも、世界一の適応力でカバー。だが、車いすカーリングでは普段、両チームともスウィープしないため、スウィーピングによって変化するアイスを読む難しさがあった。

3エンド終えて「小穴・青木」が大量リード。後半は、選手を入れ替え、小川・青木豪のペア対中島・小穴のペアで試合が続行されることに。中島と小川がそれぞれスウィーピングを必要としないドローを決める場面もあれば、スウィーピングでハウス中央に運んでもらう場面もあった。「ルールを工夫すれば一緒にできるし、それぞれの得意を活かして多様性を表すことができた試合だったのでは」と小穴桃里は振り返る。

試合中は、小穴のスウィーピングに中島が「イエス」とコールしたり、小川が青木とともにスウィープしてみたりするなど、普段車いすカーリングでは見られないパフォーマンスもあり、小川と中島は「楽しかった」と口をそろえた。

「試合中も小穴さんや青木さんと話をしながら楽しくできた」と小川。以前、チーム中島の2人は試合中に声を出さないことが課題と話していたことがあり、今後のコミュニケーションの参考になるかもしれない。

オールスターならではの企画で、観客席に向かってショットの指示を仰ぐシーンもあった。
「普段はまずないと思いますけど(笑)考えていた作戦とほぼ同じだったのでホッとしました」

声のスウィーピングが轟いた!
2日目の車いすエキシビジョンマッチは、「KiT CURLING CLUB」が2025年の日本選手権の女子優勝チームである「フォルティウス」と対戦。車いすカーラーの高橋宏美が見事なショットを披露するなど、イベントを盛り上げた。

フォルティウスは前半、車いすのルールで行い大苦戦。初めて車いすカーリングを行ったというスキップの吉村紗也香は「スウィープを行わないと(軌道修正ができず)個々の力が試される。(健常者の)4人制より、もっともっと難しい競技だと感じました」とコメント。

フォルティウスの選手たちは、スウィーピングができない歯がゆさからか、声で念を送る「声スウィープ」や手で風を送るようなしぐさをする「ジェスチャースウィープ」をしながら、ストーンの行方を見守っていた。
車いすカーリングの世界でも、ストーンをデリバリーした後、声を出す強豪がいる。声やジェスチャーが、車いすカーリング界のトレンドになる日がくるかもしれない。

text by Asuka Senaga
photo by X-1