日本初のオールスターカーリングで車いすカーリングを全力アピール!

日本初のオールスターカーリングで車いすカーリングを全力アピール!
2025.07.11.FRI 公開

精度の高いショットを決める、世界一の車いすカーラーの偉大さが光った。7月5日~6日に北海道札幌市のどうぎんカーリングスタジアムで開催された「スポーツナビ オールスターカーリング2025」。オリンピックを目指すトップ選手やレジェンドが集結した初の“球宴”に、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会のミックスダブルス日本代表内定選手である小川亜希中島洋治が登場し、車いすカーリングをアピールした。

オリジナルのユニフォームでオールスターが集結!

車いすエキシビジョンマッチ、体験会、トークショー……。2日間のイベントの中で車いすカーリングにフィーチャーした企画は多く、1万円のチケットを購入して来場したカーリングのコアなファンに、選手名と競技の魅力をしっかりとアピールできたことだろう。

エキシビジョンマッチにチーム中島として出場した小川亜希(左)と中島洋治

「お客さんの反応がうれしかったし、車いすでもこんなことができるんだと知ってもらえたかな。いい機会だったと思います」(小川)

「ぜひこれを機会に車いすカーリングが広まってほしい。そういう思いで今日はここに来ました」(中島)

スモークの演出もあり、盛り上がった入場シーン

トークショーでは、2人が3月に「世界車いすミックスダブルスカーリング選手権大会 2025」(スコットランド)で獲得した、車いすカーリング史上初の金メダルを披露。5月に4人制の日本選手権に出場した2人は、世界選手権以降初めてミックスダブルスを行い、「両サイドで4人制が行われていたので、ミックスダブルスはやっぱり展開が早いと感じた。スピーディーに、テンポよくできたのはよかったかな」と中島。これから来年のミラノ・コルティナを見据えてミックスダブルスの練習を本格化させていくといい、「車いすカーリングをもっと知ってもらいたい。そのためにも、いい色のメダルを獲れるようにがんばっていきたい」と小川は誓った。

「ファーストストーンセレモニー」で見事な投球を披露したのは、パリ2024パラリンピック・車いすラグビー金メダリストで北海道出身の池崎大輔
多くのカーリングファンがエキシビジョンマッチを観戦した

カーリングはスウィープが命!?

1日目の車いすエキシビジョンマッチは、男女1人ずつがペアを組み2対2で行われるミックスダブルス。ブラシで氷をこするスウィーピングを駆使する「小穴・青木」とスウィーピングのない車いすカーリングの「チーム中島」によるガチンコ対決は見どころ満載だった。

小穴桃里・青木豪は、2025年2月に中国で開催された冬季アジア大会の金メダルペアだ

第1エンドで中島が、第2エンドの1投目では小川が、ハウス中央付近にドローを決め、観客のどよめきを誘う。しかし、「小穴・青木」は速さのあるショットでチーム中島のストーンを散らし、得点を重ねた。

チーム中島は曲がるアイスに苦戦しつつも、世界一の適応力でカバー。だが、車いすカーリングでは普段、両チームともスウィープしないため、スウィーピングによって変化するアイスを読む難しさがあった。

観客に拍手をもらっていた小川

3エンド終えて「小穴・青木」が大量リード。後半は、選手を入れ替え、小川・青木豪のペア対中島・小穴のペアで試合が続行されることに。中島と小川がそれぞれスウィーピングを必要としないドローを決める場面もあれば、スウィーピングでハウス中央に運んでもらう場面もあった。「ルールを工夫すれば一緒にできるし、それぞれの得意を活かして多様性を表すことができた試合だったのでは」と小穴桃里は振り返る。

互いの健闘を称え合った

試合中は、小穴のスウィーピングに中島が「イエス」とコールしたり、小川が青木とともにスウィープしてみたりするなど、普段車いすカーリングでは見られないパフォーマンスもあり、小川と中島は「楽しかった」と口をそろえた。

この日は笑顔が多かった中島

「試合中も小穴さんや青木さんと話をしながら楽しくできた」と小川。以前、チーム中島の2人は試合中に声を出さないことが課題と話していたことがあり、今後のコミュニケーションの参考になるかもしれない。

プレー中にレポーターから感想を求められるなど普段の試合では経験できないことも多かった

オールスターならではの企画で、観客席に向かってショットの指示を仰ぐシーンもあった。
「普段はまずないと思いますけど(笑)考えていた作戦とほぼ同じだったのでホッとしました」

観客席から指示を送るKiT CURLING CLUB車いすチームの柏原一大

声のスウィーピングが轟いた!

2日目の車いすエキシビジョンマッチは、「KiT CURLING CLUB」が2025年の日本選手権の女子優勝チームである「フォルティウス」と対戦。車いすカーラーの高橋宏美が見事なショットを披露するなど、イベントを盛り上げた。

デリバリースティックを手にする近江谷杏菜は、車いすカーリングの難しさを感じつつ、新たな楽しさも発見できたという

フォルティウスは前半、車いすのルールで行い大苦戦。初めて車いすカーリングを行ったというスキップの吉村紗也香は「スウィープを行わないと(軌道修正ができず)個々の力が試される。(健常者の)4人制より、もっともっと難しい競技だと感じました」とコメント。

普段はスウィーピングなしで行う車いすの選手たちは、スウィーピングでハウスに運んでもらう安心感を知ったという

フォルティウスの選手たちは、スウィーピングができない歯がゆさからか、声で念を送る「声スウィープ」や手で風を送るようなしぐさをする「ジェスチャースウィープ」をしながら、ストーンの行方を見守っていた。

車いすカーリングの世界でも、ストーンをデリバリーした後、声を出す強豪がいる。声やジェスチャーが、車いすカーリング界のトレンドになる日がくるかもしれない。

日本のカーリング界で唯一、ミラノ・コルティナ大会の日本代表に内定している中島と小川

text by Asuka Senaga
photo by X-1

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『日本初のオールスターカーリングで車いすカーリングを全力アピール!』

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