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あなたも誰かのヒーローに!アプリで始めるサステナブルな暮らし

あなたも誰かのヒーローに!アプリで始めるサステナブルな暮らし
2020.12.11.FRI 公開

様々な企業やブランドから、サステナブル(持続可能)というメッセージがしきりに発信されている昨今。環境保護はわかりやすいけれど、個人でももっとなにかアクションを起こせないか?という人も多いのではないだろうか。そこで改めて注目してほしいのが、SDGs(※)の大原則とされる「地球上の誰一人取り残さない」という誓い。この壮大とも言える誓いに個人で貢献できるのが、手助けを求める人と手助けしたい人をつなぐマッチングアプリ「May ii(メイアイ)」だ。自粛が求められているコロナ禍においても、「離れていても助けあおうキャンペーン」(2020年5月18日~6月30日)などが開催され、参加者250名以上、累計2000回のミッションを達成。今回は2020年度のGOOD DESIGN賞も受賞したというこの画期的なマッチングアプリ「May ii」についてご紹介しよう。

※SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。SDGsでは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを大前提として掲げている(外務省HPより)

不名誉?日本は140ヶ国中138位、これって何の順位?

アプリを開発した大日本印刷株式会社のスマートアクセスサービス開発グループ・松尾佳菜子さん(左)と 米山剛史さん(右)。

「May ii」は、スマホの位置情報を使い、街の中で困っている人と、お手伝いしたい人をマッチングしてくれる仕組みなのだが、単なる助け合いアプリではなく、自分のアクションを可視化するさまざまな機能が搭載されているのも特徴。どれだけサステナブルな暮らしづくりに貢献できているか自分でチェックできるのも魅力だ。
アプリを開発した、大日本印刷の松尾さんと米山さんに詳しいお話を伺った。

――なぜこうしたアプリを作ろうと考えたんですか?

松尾さん(以下、松尾):開発の背景には、日本は『見知らぬ人への手助け』の世界ランキングで138位/140カ国中という不名誉な順位が関係しています。これは、イギリスのチャリティー機関が2010年から行っている「世界寄付指数ランキング」という調査結果のひとつで、「この1ヶ月の間に、見知らぬ人、あるいは、助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」という項目で、2016年に日本はビリから3番目だったんです。この年だけでなく、調査が始まってからずっと日本の順位は低いままなんですよ。

米山さん(以下、米山):オリンピック・パラリンピックの招致のときに「おもてなしの国」とアピールしていましたが、現状はこういう残念な数字でした。困っている人と出会った際にはサポートしたい、という気持ちはあるはずなのに、なぜだろうと思いました。以前、僕の妻が妊娠中に、電車の中で座ることができなくて、貧血で3回ほど倒れたことがあるんです。でも、それは座っている人が意地悪なんじゃなくて、妊婦さんやお年寄りがいることに気づかなかったり、「結構です」とか「すぐに降りるので」などと言って断わられたらどうしようという、不安があったりするからだと思うんです。ですから、本当はサポートしたいと思っているのに、その“行動”ができないという現状をどうにかしたかったんです。

松尾:また、別の調査によると、身体障がいのある方たちの多くが、移動時に遭遇する段差や路上の放置自転車、幅が狭い通路や入口といったバリアが原因で、映画鑑賞やカラオケ、旅行やスポーツ観戦などという余暇活動を諦めているというんです。周囲の人にサポートして欲しい時がある、という人も8割ほどいるという自社調査結果も出ています。こうした現状を、ICT(情報通信技術)の力を使って、より良い方向に変化できないか、と。
東京オリンピック・パラリンピックが開催されることもあり、今日本ではD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)社会(*)が推進されています。「May I help you?(何かお困りですか?)」がスムーズに言える日本人を増やして、本当の意味でのD&I社会を実現できないかというところから、このアプリの開発が始まりました。

*D&I社会=ダイバーシティとは多様性、インクルージョンとは包括・包含の意。あらゆる人が排除、孤立せずに安心して暮らせる社会のこと。

――このアプリにはどんな特徴がありますか?

松尾:アプリをダウンロードして、ハンドルネームなど簡単な登録をすれば、サポーター(助けたい人)、リクエスター(助けてほしい人)、どちらにもなることができます。たとえば、車いすの人が段差を乗り越えられずに困っている場合、何に困っているのか、助けてもらうのにどれくらい時間がかかるかを、あらかじめ用意された選択肢のボタンから選んで押します。

米山:そうすると、リクエスターの周辺にいるサポーターのアプリに通知が届きます。サポーターは、位置情報でリクエスターのいる位置がわかるので、困りごとの内容と位置を見て、サポートできそうだったら立候補ボタンを押します。サポーターが、立候補者の中から自分が頼みたい人を選ぶとマッチングが成立します。その後は、お互いだけが閲覧できるアプリ内のチャットで待っている場所や見た目の情報などの詳細をやり取りすることができます。

また10月からバージョンアップし、対面以外にチャットでのサポートも追加され、リクエスターはどちらかを選ぶことができるようになりました。直接対面でのサポートを必要としない、または対面でのサポートがどうしても不安な方は、ぜひチャットを活用していただければと。

松尾:サポーターは、あらかじめ距離や年代、性別、ユニバーサルマナー検定などの介助・介護系の資格を持っているなどのプロフィール情報を登録できるので、もしも複数のサポーターが立候補してくれた場合、リクエスターはその情報をもとにサポーターを選ぶこともできます。

米山:このアプリの大きな特徴のひとつが、サポーターのアクションを可視化したということです。アプリを起動してサポート待機したり、実際にアプリを使って手助けしたり、駅のエレベーターの場所を確認するなどのミッションをクリアしたり…、貢献度に応じてポイントが付与されます。あとは、アプリ内にキャラクターがいるんですが、最初はみんな「ホヤホヤ」という称号です。でも、先ほどのポイントが貯まると、キャラクターが成長して称号も変わっていきます。

松尾:助けてもらった人は、「とても親切にしてもらった」などと、後で評価をすることができて、サポーターはその評価をSNSなどにアップすることもできるのでモチベーションアップにもつながります。

使い方・楽しみ方が広がる、活用事例教えます!

――アプリを使ったユーザーの反応はどうでしたか?

①週末の趣味になった夫婦も登場!

松尾:福岡の天神で実証実験したときは、アンバサダー的な存在のご夫婦がいたんです。土日はご夫婦で天神に出かけてサポートの待機をしてくださっていました。

米山:2ヶ月に20回以上もアプリでマッチングして、実際に手助けしてくれたそうです。びっくりですよね。

松尾:たまたま福岡でその方にお目にかかる機会があったので、どのように使っているんですか?と聞いたら、「ふたりの知識を合わせれば、天神でわからないことはないから!」と、自分たちの知識やスキルを使ってサポートをしてくれていました。「手助けしながら、逆に知らないことも出てきて、街の新たな発見にもなった」と。そういう風に楽しんで人助けができるようになったらいいですよね。

②出張時の出会いで、地元のおすすめ情報も入手

米山:僕は札幌出張のときに、仕事ができるカフェを探しているとリクエストしたんです。その時にマッチングした男性は、カフェまで案内してくれただけじゃなくて、「夕食はこういうお店にいったほうがいい」とか、おすすめのお店を教えてくれて、名刺交換までしてしまいました。その後も、札幌出張に行くと連絡をしたりして、思わぬコミュニケーションが生まれました。

松尾:地元愛の強いサポーターが、スマホで検索しただけでは見つけられないような通なお店やスポットを教えてくれることもあって、これは実際に会って話せるアプリならではのメリットですよね。

©️大日本印刷株式会社 実証実験の様子

③車いすユーザーが妊婦さんをサポート

米山:あとは、エレベーターの場所を教えてほしいというベビーカーを押したお母さんのリクエストを、車いすユーザーがサポートしてくれたことがありました。車いすの方は、必ずエレベーターを使われるので、その駅のバリアフリールートのエキスパートだったんですね。それで誰よりも詳しかった。そうやって、誰もが助けたり、助けられたりする社会になったらいいですよね。

松尾:その他にも手助けをきっかけに、地元の人との交流が増えたとか、今までは手助けが必要なのかどうかわからなくて声をかけるのがためらわれたけれど、アプリを使ったことで声かけのハードルが下がったといった嬉しい声も聴くことができました。
こんな風に、多くの人に気軽に人助けをしてもらいたいので、このアプリは個人情報を入力しなくても利用できるようにしています。その代わり、悪用対策として、未成年の利用や、夜間の利用を制限したり、緊急連絡先にワンタップで連絡できるといったリスク回避の機能も搭載したりしています。

米山:その他にも実証実験の結果やユーザーの声を反映したいろいろな機能がありますが、これで完成ではなくて、今後も少しずつバージョンアップしていく予定です。

東京2020オリパラで、「本物のおもてなし」を

――「May ii」が今後どのように使われるといいと思いますか?

米山:東京オリンピックやパラリンピックで競技を実際に観戦できなくても、日本に集まってきた世界中の人たちをおもてなしすることで、誰もがオリパラに関わることができると思うんです。「May ii」は日本語版の他に英語と韓国語に対応しています。リクエスターがアプリを英語で使っていても、サポーターは日本語で読んだり答えたりできます。ボランティアスタッフだけではなく、言葉がわからない一般の人も、困っている人を手助けできたらいいですよね。

松尾:助けたいという気持ちがあれば、誰だってサポーターになれると思うんです。東京オリパラはひとつのいい機会ですが、それで終わりではなくて、これを機会に「May I help you?」と言える社会が当たり前になっていくといいですね。そうなることで、誰もが安心して暮らしていけるサステナブルな社会が作っていけるのかな、と思います。

米山:「May ii」が使えるエリアは今、札幌と東京23区、川崎、徳島、福岡の一部と、まだまだ限られています。でも、使用エリアを増やすだけでなく、今後は自治体や企業と連携してさまざまな試みをしていきたいと思っています。これまでに、「Universal MaaS ~誰もが移動をあきらめない世界へ~」を推進する産学官連携4 者(全日本空輸株式会社,京浜急行電鉄株式会社,横須賀市,横浜国立大学)が提供するプロトタイプアプリとの連携や、徳島県の徳島商業高校が行っている地域活動との連携も実現しました。多くの自治体や企業が「SDGsへの取組」、「共生社会実現」という目標を掲げていますが、それをどうやって実現していくのかという具体的な「How」が見つからなくて困っています。持続的社会、共生社会の実現のための「How」にはいろいろな手段があると思いますが、「May ii」を使った活動を通して、市民と企業が直接、社会課題解決に関与できて、ひとりひとりの意識が変わっていく一助になればいいなと思っています。東京オリンピックとパラリンピックを機に、日本人が本来持っている優しさが引き出され、もっともっと活動的な社会になったらいいですよね。


私たちひとりひとりが「May ii」を使って、多様な人々とコミュニケーションを図り、困っている時は互いにサポートし合うことが当たり前になるとどうなるだろう? きっと、サステナブルな暮らしへ貢献できるだけでなく、今よりももっと自分の国に誇りを持てるようになるはずだ。
今日から始められるサステナビリティアクションとして、「May ii」をダウンロードしてみてはどうだろうか。

スマホがつなぐ、助け合いアプリ「May ii」
https://mayii.jp/
日本全国で利用可能な【手助けチャット機能】は、お出かけ前に「目的地の混雑状況どうだろう?」「〇〇の在庫あるかな?」など確認したいことがある時に、その周辺にいるサポーターへサポート依頼できるのでぜひお試しを!


text by Kairi Hamanaka(Parasapo Lab)
photo by Kazuhisa Yoshinaga

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